第34話 戦闘・3

「先輩!今のうちに反撃の手筈を……何かありませんか?」

 シュバルツは盾を構えたまま、レンの方に目を向ける。



 シュバルツはゾンビ状態のおかげで見た目は元気になっている。


 しかし、ゾンビパウダーの効果時間がどの位なのかは分からないが、効果時間が終わってしまえば、そのまま消滅ロストしてしまうのだ。


 せっかくシュバルツが稼いでくれた時間を無駄にする訳にはいかない。



 一方で、レンの体力HPはかなり回復に向かっている。

 レンは漸く、起き上がる事が出来るまでに回復していた。


 レンは、仮面の敵の攻撃から、一つ気になる事を発見していた。


「あいつの攻撃はひとつひとつが、強力だけど、さっきから闇魔法だけを使ってきている……」


「闇魔法?」

 聞き返すシュバルツ。


「ああ、このゲームの魔法には属性があるのは知っているよね」


「はい。火水土風、それと光と闇ですね」


「うん。魔法にはそれぞれ属性があって、属性毎の相性によって、威力が変わるんだ。水はに火に強く、火は風に強い。風は土に強くて、土は水に強い。そして……」


「光と闇は、互いに打ち消し合う……ね」

 コトが合いの手を入れる。


「その通り。あの敵は闇魔法を専門に使っている。と言う事は、光の魔法には弱い可能性が高いと思うんだ」


「光の魔法……なら、私の光の槍アークホーリーをお見舞いしてやるわ」


「コトさんはまず回復魔法ヒールを優先して下さい……その間持ち堪えてみせます」


 シュバルツは盾を降ろして電磁銃レールガンを両手に構える。


 電磁銃レールガンを連射モードに切り替え、仮面の敵を目掛けて撃ちまくる。


 電磁銃レールガンから放たれた砲撃は仮面の敵に命中する。

しかし、仮面の敵はビクともしない。


 電磁銃レールガンでは効果は無さそうだ。



 仮面の敵は再び手をかざす。

 左手から毒の液体を放ち、右手からは漆黒の光の粒子が放たれた。


 シュバルツは毒液と粒子を全身に浴びて倒れ込む。


「シュバルツっ!」

 思わず叫ぶレン。


「だ、大丈夫……です……」


 言いながら、ふらふらと立ち上がるシュバルツ。

「シュバルツ君、すぐに回復魔法ヒールを!」 慌てて回復魔法ヒールを唱えようとするコトを、シュバルツは手で制する。


「……無駄です。ゾンビ状態はそもそも体力HPも状態異常もありません。回復魔法ヒールは意味が無いのです」


「で……でも……」


「こちらには構わず、早くレン先輩を回復してあげて下さい——」

 

「ありがとう、もう大丈夫だよ」

 レンはよろよろと立ち上がる。


「回復も終わったし、じゃあ私が攻撃するわね。光の槍アークホーリー!」

 コトは早速、光属性の攻撃魔法を仮面の敵に放つ。


 光の槍アークホーリーは仮面の敵に直撃した。


 オオオォォォォォ


 仮面の敵が呻きの様な声を上げ、のけぞった。


「光属性が効いてるっ!」

 漸く一矢浴びせる事が出来て、喜ぶコト。


 しかし……それだけだった。


 仮面の敵は腕を激しく振り、漆黒の光の球ダークスフィアを次々に投げつけて来る。


 漆黒の光の球ダークスフィアは、シュバルツに当たる球は少ない。


 しかし、この球は、直進する球ばかりでは無く、カーブやシュート、スライダーなど様々なコースで飛んで来ていた。


 シュバルツを超えてレンとコトの方まで飛んで来る漆黒の光の球ダークスフィアを避ける為、、二人は忙しく動き回っていた。


「ちょっと!怒らせただけじゃない?」


 コトはレンに食ってかかる勢いだ。


「そうみたいですね……」


「何か方法は無いの?」


「さすがに今すぐには思い付かな……いや……待てよ……一つ、方法があります」


「何かしら」


光の槍アークホーリーを、僕の剣に向けて撃って下さい。それもなるべく多くの魔力を練って、特大の光の槍アークホーリーをお願いします」


「それは良いけど……そんな事して何になるのかしら?」


「僕の剣、ヴァイスブレードは魔法剣なので、光の槍アークホーリーを吸収出来るはずです。そうすれば、光属性の魔法剣を放つ事が出来るはずです」


「なるほど、それで行きましょう。早速行くわよ」 言い終わるや否や、コトは光の槍アークホーリーの呪文を唱え始める。


 問題は、最大まで魔力を練るには、かなりの時間を要する必要がある。


 仮面の敵は再び攻撃のモーションを始める。


 仮面の敵の前に立ち、盾を構えて攻撃を受け止めようとするシュバルツ。

 しかし、シュバルツの体は、時間と共に徐々に動きが鈍くなって来ていた。


 仮面の敵は、シュバルツが盾を構えきる前に漆黒の魔法の弾エフェクトを放つ。


「ぐは……」

 球に当たったシュバルツの右腕が、捥がれて吹き飛んだ。

 盾も右腕と共に後方に飛ばされてしまっていた。

 それでもまだ堪えて立ち続けるシュバルツ。


「先輩の……魔法剣を発動させるまで……持って……この身体……」


 仮面の敵は、シュバルツに狙いを定めて、漆黒の魔法の弾エフェクトを放とうとする。



「……ここまでか」

 シュバルツは唇を噛み締めて、目の前の敵を睨みつける。


 仮面の敵の手から漆黒の魔法の弾エフェクトが放たれた。



「させません!魔法障壁マナシールド!」



 その時、シュバルツの前に魔法の壁が現れ、漆黒の魔法の弾エフェクトを弾き返した。



「……ルフナさん」

 シュバルツが振り向くと、ルフナが走り寄って来ていた。

 

「シュバルツさん、間に合って良かった」

 ルフナは息を切らせながらも、シュバルツに微笑む。


「リゼさんの方は?」


「まだ気絶しているけど、体力HPの方は回復したわ。もう大丈夫よ」


「良かった……あとは……」

 シュバルツはそう言ってコトの方を見る。


「後は任せて……魔力を練るのに時間が掛かっだけど、その分特大の光の槍アークホーリーをお見舞いしてやるわ」


「お見舞いされるのは僕なのでは……でも、コト、いつでも撃って!」

 レンは言いながらも剣を抜いて、真上に掲げる。


「オーケー、じゃ、行くわよ極太の光の槍アークホーリーII!」


 コトが放った極太の光の槍アークホーリーIIは真っ直ぐレンに向かい、剣に吸い込まれる。


 レンは一気に仮面の敵の方に走り出す。


 そして、猛スピードで仮面の敵の懐にたどり着いた。


 そして光属性の魔法を十分に蓄え、白く輝く魔法剣を、力を込めて一気に振り下ろす。


「これで終わりだ!光の魔法剣ライトセーバー!」


オオオォォォォォ……


 仮面の敵は慌てて避けようとするも間に合わず、レンの魔法剣は、仮面の敵の肩口から胴体までを一気に切り裂き、仮面の敵の体は完全に両断された。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る