「ここは魔王のむらだよ」

@samayouyoroi

第1話 魔王の村

「ここは魔王のむらだよ」

なんだとお。


「…まだ、何も聞いてないんですよね」

僕は戸惑いながらとりあえずそう言った。


「何を?」

その村人は眉を上げて逆に訊いてきた。


「その、何て言うんですかね、王様からの依頼とか一切…」

僕は常識的なことを言ってみた。


「それは私と何か関係があるのかね?」

村人は不思議そうな顔でそう訊いてきた。


「私は君にこの村の概要を教えたが」

村人は両掌を上にしてそう言ってきた。


「私は君の都合には何も斟酌しない」

村人は肩をすくめてそう言った。


「君が恐れをなしてこの村から逃げようとも」

村人は辺りを見回しながらそう言った。


「或いは、君がこの村で何かを為そうとも」

村人は改めて僕の顔を見つめてそう言った。


「一切をだ」

村人は右手の人差し指を上げてそう言った。


「好きにすればいいさ」

村人はそう言って立ち去った。


なんだろう。どこかで聞いたことのある話し方の村人だった。

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