第2話 いくら付き合いの長い友人の話でもそう簡単に信じるべからず

「・・・・・・おい、斎藤本当にここがオーディション会場で間違えないんだよな?」


「あぁ!!ここが、オーディションのAAAGプロダクションだ!!」


「・・・・・・いやいや、AAAGプロダクションって言ったら大手の芸能事務所だろうが!?そんな所のオーディションを受けても受かる訳が無いだろうが!!」


「まぁまぁ。一旦落ち着こうぜ零時」


電車に揺られながら何度も斎藤にどこに行くのかと聞いたが、するすると躱され続け、結局言われるがままに斎藤に連れてこられた場所は三階建てのオフィスビルの様な建物の前だった。


この、建物の名前はAAAGプロダクション。

確かに、日本が誇る大手の芸能事務所の一つつだった気がする。

AAAGプロダクションと言えば、個人的な主観だが大手のお笑い事務所よしむらに匹敵するぐらいの規模を誇ると俺は勝手に思っている。

ってか、いくら大手の芸能事務所だと言っても流石にデカすぎるだろ・・・。ここまでデカいと事務所って言うよりはもう城だよなぁ・・・。


確か、AAAGプロダクションと言えばアイドルとかを主に扱っている事務所だったはずだよな。

まぁ、そんなこと言っても俺自身アイドルとかはほとんど知らないんだけどなぁ・・・。

クラスメイトのアイドルオタクに勧められて何回かテレビで見たことあるけど顔と名前が認識しているのはドラマとかに引っ張りだこな立花楓やバラエティタレントとして有名な梅崎小鳥ぐらいだなぁ。


「まぁ、今はこんな所で話してないで取り敢えず中に入ろうぜ!!」


「いや、勝手に中に入っていいのか?」


「大丈夫大丈夫!!俺に任せといてよ!!」


・・・いや、お前に任せるとロクな事が無いから、全く持って信用出来ないんだけど・・・。

俺は、斎藤に連れられるがままAAAGプロダクションの中に入ると、目の前にはただただ広いAAAGプロダクションの内装が目に写った。


「・・・・・・マジで、デカイな」


「零時。俺はちょっと受付けを済ませてくるな」


「えっ・・・あ・・・あぁ」


斎藤はそう言うと、何故か受付けの女性とどこか仲良さそうに話し始めた。

俺は、そんな斎藤を他所に事務所の内装に圧巻されている俺の横をギターケースを背負っている2人組の女性が通り過ぎって行った。


「なっつー!!今日空いてるかー?」


「おう!!今日の夜なら空いてるぞ!!」


「本当か!?じゃ、今日の夜俺にギターを教えてくれよ!!」


「ん?別にギターならいつでも教えてやるぜ」


「まじか!!」


「あぁ、まじだ」


何かあの2人、どこかで見たことあるんだよなぁ。

もしかして、あの金髪のポニーテールの子は大御所の芸人森山一郎が司会を務めてる音楽番組「MN音楽祭」によく出てる子だよなぁ・・・。

改めて思うけど、そんな子が所属してるAAAGプロダクションってやっぱり凄い所何だなぁと思うな。


俺は、これ以上ジロジロと女の子達を見ていると変態扱いされてしまうと思い、不本意ながら受付に居る斎藤に視線を移した。

すると、斎藤は受付けのお姉さんに何やら見たことの無い変な紙を見せていた。恐らく、オーディションの応募の紙かなんかだろう。

だが、オーディションに必要な履歴書は俺が今現在持ってるしオーディションの応募用紙なんか一度も書いた覚えは無いんだけどな・・・。


「おーい。受付けの人が迎えの人が来るまでそこら辺で待っててだってさ」


「了解了解」


しばらくすると、受付けを終えた斎藤が俺に駆け寄りそう言ってきた。

俺は、斎藤に対してそう答え、近くの自動販売機で缶コーヒーを買い受付けから少し離れた場所で缶コーヒーを飲みながら迎えの人が来るまで待つことにした。


「お待たせしました。海道君と・・・斎藤君ですよね」


「あっ、お久しぶりですね千秋さん!!」


「はい、そうですね光輝君!!」


「・・・・・・2人は知り合いなのか?」


「えっ・・・いや、違う違う。俺達は初対面初対面」


「そ・・・そうですよ。私達は初対面ですよ」


「・・・・・・ふーん、まぁいいけど」


しばらくすると、黄緑色の服に身を包んだ綺麗な女の人が俺達に声を掛けてきた。どうやら、この人が迎えの人らしい。

斎藤に千秋さんと呼ばれた女性は、笑顔を保ちながら斎藤を下の名前で呼んだのだった。


いや、斎藤もそうだけどこの小早川って言う人は何でお互いの下の名前を知ってるんだよ・・・。

しかも、少し俺がカマをかけてみると明らかに動揺してるし・・・。二人共隠す気はあるんだろうか・・・。


「で・・・では、案内しますね」


「・・・はい、お願いします小早川さん」


「じゃ、俺はここで待ってるから楽しんで来いよ」


「ああ」


買ったばかりのコーヒーを手に持ちながらそう言ってくる斎藤に対して俺は適当に短く返事を返した。

取り敢えずあれだな。これが、終わったら齋藤を物理的に問いただしてやらないとな。

俺は、そんな事を考えながら小早川さんの後に着いて行った。





小早川さんの後に続き、エレベーターに乗り、五階に止まるとエレベーターから降り、長い長い廊下を歩きながら、何度かテレビで見たことのある女の人達とすれ違いながら歩いて行くと小早川さんはある部屋の前で立ち止まった。


恐らく、ここが目的の部屋なんだろうな。


俺が、そんな事を考えていると小早川さんは部屋のドアをノックした。すると、部屋の中から少し高い声で「どうぞ」と聞こえてきた。


「はい、海道君。ここからは、貴方自身の頑張りですよ!!」


「えっ・・・あっ・・・はい」


「是非、頑張って下さいね!!」


「は・・・はい、頑張ります」


小早川さんからエールの様なものを受け、1度大きく深呼吸をしてから部屋の取っ手に手を掛けた。


「・・・失礼します」


高校の入試の面接の感じを思い出しながら俺は部屋に入った。部屋に入って一番最初に目がいったのは部屋の一番奥にある大きな机とそこに座っている黒髪の女性だった。


いや、それにしても結構勇気を出して入ったのに、何一つ話し掛けて来ないんだけど、どうなんってんだあの人は・・・?

ってか、そもそもこっちを向いてないんだけど。小早川さんがノックした時は「どうぞ」とか言ってたよな?


「ふむ。君が海道零時君か・・・」


「えっ・・・はい、そうですけど。貴方は?」


「私は、斎藤茂雄。孫から毎日君の事は聞いてるよ」


俺がそんな事を考えていると横から突然声を掛けられた。どうやら、この部屋にはまだ人が居たはしい。

俺に声を掛けてきた人はとっても見た目が優しそうな六十代から七十代ぐらいのおじさんだった。


とゆうか、何でこのおじさんは俺の名前を知ってるんだ・・・?


ってか、斎藤?孫から俺の話を聞いてる?

・・・・・・あっ、もしかして、この人はアイツの孫か?いや、絶対にそうだな同じ苗字で俺の事を知ってるのはアイツぐらいしかいないしな・・・。


「斎藤部長との挨拶も終わった事だしそろそろ話を始めようか」


「えっ・・・は・・・はい」


「斎藤部長の孫から聞いているとは思うが、君にはAAAGプロダクションのアイドル専門スタジオ・ミュージシャン件俳優としての活躍を期待しているぞ」


「えっ・・・俳優?」


いやいやいや。待て待て待て。

聞いていた話とは違う。何だよ俳優って・・・。

スタジオ・ミュージシャンじゃ無かったのかよ・・・。


「・・・・・・斎藤部長。この子は俳優について知らないようだが、どうゆう事だ?」


「・・・・・・うーん、私も歳ですし、もしかしたら伝え忘れていたかもしれませんね」


「え・・・えぇ・・・」


女性は俺が俳優について理解していない事に気付くと鋭い目付きで斎藤のおじいちゃんを見た。

どうやら、この女性も俺と同様嵌められていたらしい。

ってか、まじで俳優とかやるなら俺まじで断って帰りたいんだけど・・・。駄目かな・・・。


「ふむ。海道零時君。君は一体どこまで話を聞いてるんだ?」


「えーと、まぁ、正直に言うとスタジオ・ミュージシャンのオーディションまでですね」


「まぁ、本命はスタジオ・ミュージシャンですし間違ってはないですね社長!!」


「確かに、間違ってはいないな」


いやいや、間違っては居るだろう・・・!!

とゆうか、この人AAAGプロダクションの社長だったのかよ・・・。

ってか、一体いつ小早川さんはこの部屋に入って来たんだよ!!これまで、一切扉が開く音なんって聞こえなかったぞ!!


「ふむ。まぁ、少し手違いはあったが予定通りに採用だな」


「えっ・・・あ・・・あぁ、採用ですか・・・」


「おおおぉぉぉ!!良かったですね、採用ですよ採用!!」


「え・・・えぇ・・・まぁ、良かったです」


うん。全然話の糸が見えないけど、取り敢えず俺はAAAGプロダクションのスタジオ・ミュージシャンのオーディションは合格でいいんだな・・・。

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