かっぱのサブローと緑のたぬき

くらんく

第1話 ビギナーズラック

「なあ大平、お前釣りは面白いって言ってたよな」


 11月半ば、俺は受験勉強の息抜きにと部活仲間の大平に誘われて、川沿いに来ていた。冬も近く肌寒い季節にわざわざ屋外に出るのは乗り気ではなかったが、親友の勧めならばと糸を垂らし、二時間が経過したころだった。


「ああ、面白いよ」


 大平はこちらを向きもせず、ただただ自分の竿の先を眺めていた。こいつは昔からこうだ。小さいことは気にしない性格。よく言えば大らか、悪く言えば鈍感。


「まだ魚一匹も釣れてないけど面白いか?」


 釣りをするのは初めてなので、今の状態が普通のことなのか測りかねていた。


「よくあることだよ」


 俺の意図を察してか、納得のいかない子供をあやす様に穏やかな口調で答え、視線をこちらに向けた。


「カッパが釣れるのもよくあることか?」


 俺の目の前には、全身緑でびしょ濡れの成人男性が横たわっている。頭には皿のようなものもついている。本物を見たことは無いが特徴的にはカッパと言って差し支えないだろう。


「ビギナーズラックってやつだね」


 そう言うと大平は少し悔しそうな表情をして見せた。

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