六 花屋にて

お嬢様 お花はお好きですか

と 心の中で呟いて

あの方は酒の方が好きだし

花を送って 勘ぐられて

嫌われでもしたら と

私は執事 花を贈る身分ではなし


それでも 花言葉を検索する

愛とか 出会いとか そういった

思わせぶりな言葉を避けて

選んだ 紫の薔薇の花束 に

赤を 一輪だけ混ぜるか 迷い

手を引いて ため息をつく


貴女を待ち伏せするなんて

まるで殺すみたいだら

玄関に花束を置いて

メッセージカードには

「日頃の感謝の具象化につき

 お邪魔であればご連絡を

 取りに戻ります」

と 走り書きして

お嬢様のお部屋を

振り返り 振り返り 家路につく

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