惰性
また冬
第1話
何も考えたくない。
それが僕の口癖だった。
生乾きの洗濯物の香りが鼻に来るようなぼろくて狭い一人暮らしのアパート。
畳の上で寝転んでいる僕は天井の木の節を見ながら頭の中で顔を作って遊んでいた。
苦しそうな泣き顔、楽しそうな泣き顔、悲しそうな泣き顔・・・全部泣き顔に見えるのは果たして節目を見ているからなのか、自分の感情なのか。
確かに、こんな場所にはめ込まれなければ、彼らはまだ森林で生涯を謳歌していたかもしれない。それをもぎ取られ相手の思うままに加工される。このような生活はどのようなものだろうか。
「は~。」
意味のない、ため息を一つ。普通の人ならここで立ち上がるが、僕は立ち上がれない。今は残念ながらそんな気分ではない。
今は冬。しかし、換気は大事と誰かが言ってた。元カノだっけ?まあいい。とりあえず、寝たままで手が届く範囲に窓があることを確認すると、窓に手を伸ばす。
みると、4日前から乾かしっぱなしの靴が投げてある。まあ、いっかと口でつぶやくと窓に手を伸ばすのを辞めた。
「だって、開けたら外に行って靴も取りに行かなきゃいけない。それなら後で気力がある時にまとめてやっちゃえばいいじゃん。」
そう独り言を言ってるとまた眠くもないが体のだるさがやってくる。
ま、あと1時間したら自分はどうにかなってるだろ。
腹をくくってまた目を瞑った。
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