第四十六話 地獄のクッキー耐久戦
機械帝国第4層の攻略を終えた俺達チーム日本は、拠点内で次の戦いに備えるべく休息をとっていた。
俺は根拠地内の私室で今回のダンジョン攻略についての決算をまとめていた。
この間の騒動でボロボロになっていた俺の私室だが、『道具屋』で根拠地の模様替え機能が追加されていたので、それを利用して修復することができた。
費用もお手頃だったし、マウスとキーボード操作で根拠地の模様替えができる様は、長年愛されている村づくりゲームのカモン!アニマルの森みたいで面白かった!
今回のダンジョン攻略では、公女の特典である
戦果の配分では公女側にある程度配分してやる必要は出たが、その損失以上に戦費が大きく節約できた訳だ。
現状、ダンジョン戦争に費やした戦費としては、三大勢力の中でチーム日本が最も少ない。
このままのペースで攻略を進めていければ、戦後の第四次世界大戦でも日仏の国力減退も最小限に収めることができるだろう。
だが、そのためにも、もう少し攻略ペースを落とすべきか……
今のままのペースで攻略が進んでしまえば、他国の国力損耗前にダンジョン戦争が終結してしまいかねない。
早期攻略特典を捨てるのは惜しいが、ここは長期戦に向けて調整したほうが良いだろう。
コンコンコン
扉がノックされる。
高嶺嬢や白影なら俺を呼ぶ声が続くはずなので、ノックのみということは従者ロボか?
「どうぞ」
俺がそう呼びかけると、入室してきたのは丸みのあるギラギラ銀色ボディーを持った身長2mを超える2足型ロボット。
額に描かれた文字は美少女1号。
お前か、美少女1号。
最初の手持ちポ〇モンである美少女1号は、皿とコップを載せたお盆を手に持ちズカズカと部屋に入ってきた。
焼き立てのお菓子特有の良い匂いがする。
どうやら茶菓子を持ってきてくれたようだ。
珍しいな、いつもなら高嶺嬢か白影が自分で持ってくるのに。
美少女1号がいつも通り無言で配膳してくれた皿の上には、見慣れた白影お手製のクッキーと共に、見慣れない不格好なクッキーがさりげなく盛られていた。
これは……
美少女1号を見れば、用が済んだというのに部屋から出ていかず、俺の様子をじっと観察している。
多分、白影と一緒にクッキー作ったのか?
素人感が溢れているクッキーを一つだけつまんでみる。
同時に美少女1号からの圧が増した気がした。
食べてみると、焼き立てなので少し熱いが、まあ、おいしい部類だ。
少々粉っぽいところも、いつもプロ並みの料理を食べている身としては逆に新鮮で良い。
「おいしいよ、ありがとう」
端的に感想を伝えれば、美少女1号は満足したように頷いて部屋から出ていった。
そして間髪置かず美少年1号が入ってくる。
その手にはクッキーが盛られた皿が1枚。
「…… えっ?」
美少年1号は俺の前に置かれた皿をどかし、自分が持ってきた皿を置く。
恥ずかしそうにモジモジする美少年1号。
「…… えっ?」
困惑する俺に痺れを切らしたのか、美少年1号がクッキーをひと掴みして俺の口に詰め込んだ。
素人クッキーの粉っぽさが口の中の水分を根こそぎ奪い取る。
美少女1号が置いて行った紅茶で無理やり流し込めば、美少年1号は何かを期待するように顔を近づけてくる。
「…… 美味しいよ」
彼の圧に負けて褒めれば、先ほどの美少女1号と同じように頷いて部屋から立ち去って行った。
そして入れ替わりで入って来る美少女2号。
その手には相変わらず皿に盛られたクッキーがある。
「…… あっ」
地獄の耐久クッキー迎撃戦を察した俺は、戦略物資となった紅茶が入ったコップを握りしめながら覚悟を決めた。
階層攻略特典で新規に加入した従者ロボ2体を加えると、手持ちの従者ロボは24体になったわけか。
残り22体、被害を最小限に抑えれば1体1枚。
一つ一つは中々に巨大なクッキーだが、紅茶の投入タイミングさえ間違えなければ俺は負けない!
覚悟ガン決まりで波状攻撃の迎撃を決意した俺は、現実は脇に置いといて、頭の中で従者ロボに対する考察を始める。
そういえば前回の攻略特典で手に入れた新スキル『召喚』は、結局1度も使わなかったな。
ぶっつけ本番で使うのも怖いし、クッキー地獄が終わったら試しに試験でもしてみるか。
どんなものが召喚されるかは分からないけど、できれば無人機管制機能がある奴だったら良いなぁ……
従者ロボは合計24体になったけど、俺の護衛として4体必要だから、部隊指揮官として使えるのは20体になる。
彼らは1体につき1個連隊規模の無人機管制能力を持っているから、同時に20個連隊まで運用できるという訳だ。
おおよそ4個師団相当の大勢力だが、同盟と連合は現時点でこの倍は運用してるからなぁ……
今後も階層攻略毎に2体ずつしか増えないと考えれば、いずれ戦力的に日仏連合が三大勢力から脱落するのは目に見えている。
『召喚』で戦力不足問題が解決すれば良いんだけど……
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