閑話 フランス共和国テレビ番組『こちらはダッセー本社ビル前です!』

西暦2045年8月15日 フランス共和国 国営放送局フランステレビジョン放送

とあるニュース番組



リポーター男性

『—— こちらはダッセー本社ビル前です!

 皆さん、見えますかっ!?

 ビルの周囲をっ、埋め尽くすっ、人、人、人っっ!!

 大勢の群衆がっ、ダッセー本社をっ、取り囲んでいますっっ!!

 ここ以外にもっ、エリゼ宮殿やシュバリィー伯爵家本邸の周辺もっ、同じ状況ですっ!!』


スタジオ女性

『すごい人の数ですね。

 現時点でどのくらいの人数が集まっているのでしょうか?』


リポーター男性

『—— はいっ! つい数時間前にっ、発覚したっ、アルベルティーヌ女史への虐待疑惑はっ、僅かな時間でここまでの大規模な抗議活動をっ、引き起こしてしまいましたっっ!!

 国民がどれほど、今回の問題に憤りを感じているのか、この光景で分かります!』


スタジオ女性

『…… 幼少期から現在に至るまで、周囲から深刻なネグレクトを受けていた可能性は衝撃的でしたね。

 それで、そこにはどの程度の人数が集まっているのですか?』


リポーター男性

『—— はいっ!! 今からっ、参加者の声を聞いてみますっ!!』


スタジオ女性

『いえ、ですから人数を——』


リポーター男性

『すみませんっ、インタビューお願いできますか!?』


抗議中の男性

『えっ、いいよー』


リポーター男性

『ありがとうございます!

 では、アルベルティーヌ女史の誕生日を今に至るまで忘れていた両親に対してどのように感じますか!?』


抗議中の男性A

『酷いと思うけど、まあ、人生ってそんなものだよね』


リポーター男性

『ありがとうございます!

 大変な怒りの感情を抱いている様子でした!

 次に行きます!


 すみません! インタビュー良いですか?』


抗議中の男性B

『うおおおぉぉぉぉ!!!』


リポーター男性

『あの、インタビューを……』


抗議中の男性B

『なんだか分からねぇが、みんな暴れろぉぉぉぉ!!!』


リポーター男性

『……』


抗議中の男性B

『テメェ!!! さっき俺のあし踏んだろ!!!?

 うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!』


リポーター男性

『ありがとうございます!

 政府に対する疑念と不安がとても良く感じ取れます!

 次の方はどうでしょう!?


 インタビュー良いですか!?』


抗議中の女性A

『女性の権利が侵害されています!!

 皆さんもフェミニズムにもっと興味を持ちなさい!!

 

 フェミニズムを知りたい人は、フェミニストの意見だけを聞きなさい!

 反フェミ側の意見は絶対無視!

 フェミニズムは100%正義であり、反フェミは100%悪なのよ!!!』


リポーター男性

『なるほどです!

 つまり、政権の隠蔽体質について、早急に改善して真実を全て公表しろということですね!

 気持ちは痛いほど分かりますよ!!』


スタジオ女性

『あの、そこにいる人数を——』




西暦2045年8月16日 フランス共和国 民放最大手局TF1

とあるディスカッション番組



男性タレントA

『———— いや、あれは絶対何かあったでしょ!!』


男性タレントB

『えぇぇ! でも、あのトモメ氏が安易に手を出しますかねぇ?

 そんな度胸ないと思いますよぉ?』


男性タレントA

『いやいや! だって若い男女が一晩同じ部屋にいて! しかも二人揃ってバスローブですよ!?』


男性タレントB

『だからといってぇ、すぐ行為に直結させるのは安易じゃないですかねぇ?

 お互いが立場のある人物ですしぃ?

 そもそもコウズケ氏とシャルロット殿下はそこまで親しくないのではぁ?』


女性タレントA

『…… そうかも、ね。

 でも、男女の感情って、案外分からないもの、よ?

 殿下の目…… あれ、何かに執着する目、だもの』


男性タレントB

『そうですかぁ?

 どうせ、あの白い乳性飲料が気に入っただけだと思いますよぉ?』


女性タレントA

『フフ…… あなたもまだまだ、ね』


女性タレントB

『ベネルクスの宝石とか言われてた割に、あっさり堕ちちゃってウケるー!』


男性タレントA

『絶対何かあったって!!

 若い男女! 密室!! バスローブ!!! 口元の白い液体!!!!


 役満じゃねえか!!!』


女性タレントB

『澄ました顔してやってることはやってるとかヤバいー!』


男性タレントB

『そもそもあの時の二人にそんなことする余裕あったんですかねぇ?

 アルベルティーヌ女史の誕生日問題でそんな暇なかったんじゃあぁ?』


女性タレントA

『大人には、色々な手法があるの、よ』


女性タレントB

『ベネルクスの宝石テクニシャン過ぎー! ヒク―!』


男性タレントC

『薄い本が厚くなるな……』


男性タレントB

『なりますかねぇ?

 ………… なるでしょうねぇ』




西暦2045年8月17日 フランス共和国 有料民間テレビ局Canal+

とあるコメディー番組


男性MC

『—— はいっ! 本日はダンジョン戦争の結果をVTRで見ながらゲストの皆さんから反応やコメントを頂きたいと思います!』


男性コメディアンA

『—— って、まだ戦闘、続いてるじゃないですか!?』


男性MC

『どうやらいつの間にか第二段階作戦へ突入したみたいですね』


女優A

『白影ちゃん、相変わらず燃やしてますね』


男性タレントB

『これってぇ、もしかして独断専行じゃないんですかねぇ?』


女性タレントB

『ベネルクスの宝石の指示無視とかヤバー! マジウケるんですけどー!』


男性MC

『いえ、どうやらトモメ氏が直接指示を出していたそうですよ』


女性タレントB

『…… 非常に興味深い戦術的判断ですね』


男性コメディアンA

『態度露骨に変えますねー!?

 てか、いつもより燃やしてなくないですか!?』


AV男優A

『やはりアルベルティーヌ女史の弱点は耐熱性の高い敵か……

 魔界第2層の紅い大狼、高度魔法世界第2層のガンニョムなども倒しきれなかったが……

 折角SYURIKENを無限に射出できるのに、それを活かしきれてない……!』


女優A

『鉄だから燃えにくいのね。

 白影ちゃん負けないで……』


男性MC

『無線の内容を聞く限り、コウズケ氏はアルベルティーヌ女史に向けて2個機甲旅団と1個フワッフ軍団を援軍として急行させているようですね』


AV男優A

『そこまでの大兵力を差し向けて戦線を崩さないとは……

 やはりコウズケ氏の戦術眼は計り知れない……

 だが、地上兵力ではアルベルティーヌ女史の進軍速度には到底追いつけないぞ。

 さて、コウズケ氏は次の一手をどう打つんだ……?』


女性タレントB

『やっぱりベネルクスの宝石よりもグンマちゃんだしー! こんなのに対抗心燃やしてるベネルクスの宝石ウケるー!』


男性コメディアンA

『殿下に対する反応キツ過ぎません!?

 SNSの炎上女王が別格過ぎる!?』


男性タレントB

『どちらにせよぉ、トモメ氏がこの状況に手をこまねいているとは考えにくいですしぃ?』


男性MC

『おや、あの黒い機体は……?』


男性コメディアンA

『飛行機なのに直角に曲がってる!?』


女優A

『わっ、グンマちゃんだ!』


女性タレントB

『群馬ちゃんの卓越した操縦技能による的確な航空支援は別格ですね』


男性タレントB

『見るからに巨人機なのにぃ、何なんですかぁ、あの鋭角機動ぅ?』


女優A

『すごいすごい!

 垂直に回避してる!

 SFゲームみたい!』


男性コメディアンA

『いやいや!?

 物理法則に喧嘩売ってる!?』


AV男優A

『あの変態機動は正しく日仏連合指導者トモメ・コウズケで間違いない。

 そうか…… 総司令部を前線に持っていくことで、前線と司令部とのズレを無くしたのか……!

 絶対に撃墜されないエースオブエースだからこその判断だな……

 しかし、司令官としてはどうなんだ?

 やはり今の日仏連合には戦略予備が少な過ぎる……

 早急に戦略面の対策が必要だ……』


女優A

『あっ、アレ知ってる!

 コブラって言うんでしょ!』


男性タレントB

『なんであんな巨人機でコブラができるんですかねぇ?

 そういえばシャルロット殿下もあの中にいるんでしたよねぇ?』


女性タレントB

『ベネルクスの宝石がゲロまみれとかヤバすぎー! 高貴なゲロー! ヒクわー!』


男性コメディアンA

『なんで飛行機がドリフトみたいな180°ターン決めてんの!?』


女性タレントB

『飛行機の中が高貴なゲロまみれー! キショー! …… なにグンマちゃんの飛行機汚してんだよドリル?』


男性タレントC

『薄い本が厚くなるな……』


男性タレントB

『なりますかねぇ?

 ………… なるでしょうねぇ』

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