俺と君達のダンジョン戦争

第二十一話 ぐんまちゃんのユルユルな一日

「ぐんまちゃーん、朝ですよー」

　俺の爽やかな朝は、うら若き乙女の呼び声で幕を開ける。

　ダンジョン戦争が始まって今日でちょうど90日目。

　今日も寝覚めはスッキリだ！

「ぐーんーまーちゃーん、あーさーでーすーよー！」

「しろいのーうるさいでござるよー」

　目覚めた後は顔を洗って髭を剃る。

　うん、キレてなーい。

「ぐぅぅんぅぅまぁぁちゃぁぁぁぁん！　あぁぁさぁぁでぇぇすぅぅよぉぉぉぉ！！」

「しろいのー騒音でござるよー」

　乙女の騒音とクレームの声をBGMに、迷彩服にパパっと着替えて、姿見で身だしなみのチェック。

　防具屋で購入した『守護者の腕輪』3億5000万円がキラリと光る。

「ぐぅぅぅぅぅぅんぅぅぅぅぅぅぅまぁぁぁぁ―――――」

「おはよう、今日も素敵な朝だな、高嶺嬢」

　今日のダンジョン戦争はお休みだ！

　焼きたてのクロワッサン、バターをたっぷり塗ったタルティーヌを始めとした様々なパンが湯気をあげていた。

　ふわふわのスフレオムレツにはマッシュルーム入りパルメザンチーズのソースがたっぷりとかかっている。

　生ハムとスモークサーモンのサラダとオリーブオイルベースの風味豊かなドレッシング。

　蕩けてしまいそうな甘さのカフェオレもしっかり完備。

「いやあ、至れり尽くせりですな」

　果肉がゴロゴロ入った手作りイチゴジャムをサクサクフワフワのクロワッサンにたっぷり塗って齧（かぶ）り付く！

　うましっ！

　アスパラやサラミをチーズで包んだタルティーヌを具材が零れないように齧（かぶ）り付く！！

　うましっっ！！

　切り込みをいれるとドロリと溢れるスフレオムレツにチーズソースをこれでもかと絡めて齧り付く！！！

　うましっっっ！！！

「正に至福！」

「ふふふ…… 私も幸せだよ、トモメ」

　NINJA白影、いや、貴族令嬢アルベルティーヌは、俺が朝食に夢中な様子を微笑みながら眺めている。

　いやはや、やっぱりフランス料理は偉大だな！

　Vive la France！

「…………」

　おっと殺気！

　思わず背中をビクつかせた俺は、努めて冷静に振舞いながらサラダをもそもそ食べる。

　殺気の発生源、高嶺嬢の様子を窺うと、すんんんんごい無表情で俺を見ていた。

「っひぃ」

　喉がひくついて情けない音が口から漏れた。

　なんか瞳孔開いてるんですけどー！？

「うぅん？ 白いのぉ、どうしたのぉ？

　瞬（まばた）きしてないよぉ」

　止めろアルベルティーヌ！

　死にたいのかお前！？

　せめてござる口調忘れんなよ！！

「…… 別に、なんでもないですよ」

　高嶺嬢はオムレツをサクッと斬った。

　まだ温かい中身が湯気を立てながらドロリと流れ出す。

「ふぅん……

　ねえ、白いの…… おいしい？」

　おい、唐突に料理の感想を求めるな！

　火薬庫に手榴弾投げ込むんじゃない！！

　隣のテーブルを見れば、2体増えて22体となった従者ロボが朝食を食べながらこちらの様子を見物している。

　めっっっちゃ他人事（たにんごと）！！

「………… 生ハム、美味しいです、よ」

　ちなみに当たり前だが生ハムは既製品である。

「ふぅん、そう………… でござるか」

　おっ、ござるに戻った。

　食後はゆっくりお代わりしたカフェオレを飲みながら、従者ロボとカードゲームに興じる。

　俺の対戦相手は美少年3号、戦場では機甲連隊を指揮する頼れる古参兵だ。

　まあ、俺の【上野群馬】×【マイケル・ログフィート】デッキにとっては只の雑魚でしかない。

　【ホモゲイス】×【ガンニョム】デッキだぁ？

　日米同盟の前に平伏（ひれふ）しな！

　【マイケル】の膨大な物量と盤石の兵站！ 【上野群馬】の多彩な戦術！

　日米同盟は無敵なんじゃー！！

「はっ、雑魚め」

　俺は美少年3号をアッーという間に片付けた。

「今日は俺の優勝かな」

　今の所18連勝。

　残り4回で従者ロボ相手に全勝だな。

　そう思っていると次の相手が対面に座る。

「なっ、お前は……」

　美少女1号っ！！

「【エリトリアの傭兵】×【NINJA】デッキ…… だと……」

　隠密型超速攻デッキ！

　こいつ、俺のデッキにメタ張りやがったな！？

　シーラ…… ごめん、君の仇、とれなかったよ……

　今日の食事当番は白影だから昼食もフレンチだった。

　美味しかった！

　昼食後は久しぶりに食堂で昼寝してしまった。

　起きた時、タオルケットがかかっていたけど誰がかけてくれたんだろ？

　思い切り身体を反らせて凝（こ）りを取る。

　やっぱり座ったまま寝ると疲れがたまるな。

　俺は惰性で端末を手に取った。

　なんとなくステータス画面を開く。

　そこには俺達3人の現在のステータスが表示されていた。

『上野群馬　男　20歳

状態　肉体：普通　精神：普通

HP 9　MP 46　SP 15

筋力 12　知能 20

耐久 11　 精神 21

敏捷 11　魅力 11

幸運 24　

スキル

索敵 250

目星 79

聞き耳 87

捜索 85

精神分析70

鑑定 77

耐魔力 80

魔石付与 40』

　俺のステータスは相変わらずだ。

　戦闘能力的には下から数えた方が速いだろう。

　剣と魔法のファンタジー戦闘している第三世界諸国の探索者とは、もう大分差がついてしまっただろうな。

　無駄に高いMPと何故か成長を続けている耐魔力スキルの使い道は未だに見当がついていない。

　どうせ武器屋で売ってる魔法武器使う時にMP使うんでしょ？

　耐魔力は魔物や天使に魔法攻撃された時用だな。

　耐魔力80で防ぎきれる攻撃だったら良いのだが……

『アルベルティーヌ・イザベラ・メアリー・シュバリィー　女　20歳

状態　肉体：普通　精神：逼迫

HP 16　MP 14/30　SP 32

筋力 18　知能 15

耐久 18 精神 6

敏捷 75　魅力 23

幸運 4　

スキル

超感覚 160

隠密行動 110

投擲 135

耐炎熱 135

無音戦闘 85

空中戦闘 110

妄執 99

装備

闇夜の頭巾

深淵の装束

暗黒の手甲

新月の脚甲』

　敏捷特化、見たらわかんだね。

　超感覚は未来予知スキルだったな。

　今のスキルポイントが160ということは、彼女は1.6秒後の未来を常に見ているということか。

　俺だとじゃんけんでもう勝てないな。

　デザート争奪戦の時は勝ちを譲って貰ったってことか……

　あとで『精神分析』でセラピーしてあげよっ！

『高嶺華　女　20歳

状態　肉体：健康　精神：悲哀

HP 54　MP 1/2　SP54

筋力 54　知能 2

耐久 54　精神 28

敏捷 54　魅力 23

幸運 4　

スキル

直感 230

鬼人の肉体 70

鬼人の一撃 65

鬼人の戦意 55

我が剣を貴方に捧げる【捌】 29

装備

戦乙女の聖銀鎧

戦乙女の手甲

戦乙女の脚甲』

　いやあ、化物っすね。

　こりゃあ、今すぐ肩もみですわ。

　俺はMP1の高嶺嬢の元にダッシュした。

　夕食もフレンチ！

　精神分析が効いたのか、今日は気合が入っててコースだった！

　オマール海老のゼリー寄せ、うましっ！

　パパイヤの冷製スープ、うましっ！

　子牛のロースト、うましっ！

　珍しく高嶺嬢もニコニコしながら素直に褒めてたわ。

　いやあ、全て丸く収まりましたね！

　俺のフォロー力に従者ロボ達も感心したように眺めていた。

　美少女1号は何故か俺にデザートのヴァシュランくれた！

　感謝のうましっ！

　明日からは機械帝国第4層！

　ドリルのフォロー頑張るぞい！

『ミッション　【資源チップの納付】

　資源チップを納品しましょう

　鉄鉱石：300枚　食糧：50枚　エネルギー：200枚　希少鉱石：150枚

　非鉄鉱石：300枚　飼料：50枚　植物資源：50枚　貴金属鉱石：100枚

　汎用資源：100枚

報酬　LJ-203大型旅客機4機

依頼主：日本国副総理兼経済産業大臣 安倍晋五郎

コメント；8月15日は華ちゃんの誕生日だよ！ 絶対忘れちゃダメ！！』