第三十二話 名探偵ぐんまちゃん!

「いいか、君達はただ俺の後ろで突っ立てるだけで良いんだ。

 決して、変な真似はしないでくれよ?

 相手から手を出さない限り、絶対に攻撃行動をとるなよ?

 絶対だぞ!

 絶対に絶対だからな!!」


「もちろんです、ぐんまちゃん。

 私に任せてください!」


「拙者はトモメ殿の唯一の忍び。

 ならばこそ、主の利益を常に最優先して考えてるでござる」


 俺のお願いに、決して明確な肯定を示してくれない高峰嬢と白影。

 彼女達は不安でしかないが、流石に従者ロボだけで陰謀渦巻く中に飛び込む勇気はない。

 既に人が最低でも一人謀殺されている以上、戦闘能力の低い俺の防備を薄くすることは無謀と言える。


 国際連合への拠点爆破工作から一夜明けた早朝。

 俺達日本勢は、首謀者の解明、そして何となく気に食わない国家の国際的地位低下を目的として、ようやく動き出した。


 今回のような陰謀劇では、日本が保有するチート戦力の高峰嬢は役に立たない。

 いや、最後の手段として活用法はあるが、そんな状況は想像もしたくない。

 NINJAの白影は、情報取集能力や工作能力が優秀ではあるものの、フランス国民の目が常にある以上、あまりにもあからさまなことはさせられない。


 結局は、俺が主導して動き、何とかするしかないわけだ。

 やれやれだね!


「流石に昨日の今日で、拠点の警戒をなくすことはしないか」


 国際連合の拠点がある機械帝国第2層。

 早朝であるにもかかわらず、スタート地点に設置された国際連合の拠点跡には、数名の探索者が見て取れた。

 膨大な量の燃料弾薬を集積していた彼らの拠点は、それら全てが爆破されたためか、跡形もなく消し飛んでいる。


 事件解明の切っ掛けが掴めないかと思い、現場に来てはみたものの、爆破工作の痕跡となるものは遠目で見ても残っていないのが容易に分かった。

 考えてみれば、数百、数千の巨大ロボと陸戦をやり合えるだけの燃料弾薬が誘爆したのだし、痕跡なんて残っているはずがないのだ。


 しかし、それだと拠点跡地に人の焼死体が残されていたことがに落ちないな。

 普通、それだけの爆発が起きれば、人間の身体なんてミンチになり、死体など残るはずがない。

 つまり、焼死体の人物は、爆破が起きた後に運び込まれたか、爆破によってミンチにならない程度にはステータスかスキルに優れていたということか?

 うーん、下手に魔法やらスキルやらがあるせいで、理屈がちょっと分かりにくいなー。


 事件について考えながら、拠点跡地を警戒していた国際連合の探索者達を見れば、突然現れた俺達に対してバリッバリの警戒態勢をとっていた。

 俺達が通過した扉には、上部に日本の国旗が掲示されているので、俺達の身元は分かっているはず。

 それにもかかわらず警戒をしているということは、国際連合の中では俺達も犯人の候補として考えられているということか。


 まあ、仕方ない。

 俺だって、もし爆破工作を仕掛けられたら、周り全てを警戒するだろう。

 俺は努めてにこやかな表情を取り繕いながら、国際連合の元に歩み寄る。


 ぼく、ぐんまちゃん、なかよくしようよ!


 今の俺はゆるキャラグランプリ覇者になった気分だ。

 周囲を重武装の従者ロボで固め、背後には人類屈指の戦力が2体控えているものの、俺自身はゆるっゆるだぁ!


「と、とと、止まれ、止まってください!

 こ、ここの区域は、国際連合の管理区域です!!」


 ガタガタと体を震わせて、探索者の一人が俺達を制止させる。

 彼が着ている迷彩服についてる国旗マークは、上半分が青で下半分が黄色。

 東欧の食糧庫、ウクライナの人か。


 俺達に敵意がないのか、それとも銃を向ける度胸がないのかは分からないが、銃口は下を向けている。

 他の探索者達は、俺達への対応を彼に押し付けるつもりなのか、俺達を遠巻きに見つめているだけだ。

 薄情だねー。


 俺はニッコニッコしながら、彼との距離を詰めていく。

 銃を向ける度胸がないと分かったなら、怖いものなしだぜ!

 俺が歩を進めるたびに、彼の震えが大きくなるもお構いなしだ。

 もちろん、俺の後ろで膨れ上がっている殺気には、全力でスルーする。


「と、止まれぇぇぇぇぇぇぇ」


 ウクライナの彼が緊張に耐えれなくなったのか、遂に銃口をこちらに向けた。

 や、やべえ、調子乗り過ぎましたわ!!?

 今更ながらに自分の気が大きくなり過ぎていたことを自覚する俺。


「ヘイヘーイ」


「ひ、ひぃぃ」


 ピンチかと思いきや、ウクライナの彼は銃を取り落として腰を抜かしてしまった。


 いったいどうしたというのだろうか?

 ぐんまちゃん、わかんなーい。


 俺は十分、拠点跡地に近づけたので、最近存在を忘れかけていたスキルを発動する。


『目星』


 目星、それは何らかのキーアイテムを見つけるスキル。

 序盤のダンジョン探索では、とんでもないお宝を探し出してくれた困ったちゃんだ!


 目星による反応は、爆心地っぽい場所から少し外れた地点に1つだけあった。

 腰を抜かしたウクライナの彼や、遠巻きで完全にビビっている他の探索者を無視して、反応のあった場所に近づく。

 地面をよく見ると、何らかの物が地面に埋まっていることに気づいた。


「美少年7号、そこを掘れ」


 従者ロボに地面を掘らせると、外装の金属がドロドロに融け爛れていた装置らしき物体が見つかった。


『鑑定』


『壊れた装置:何の装置か分からない。Made in Korea』


「へー」


 だいたい察した。

 ちなみに国際連合に参加しているのは北朝鮮、North Koreaだ。

 次は焼死体だな!

 

 ぼく、ぐんまちゃん、今の気分は名探偵!

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