トドカナイ

@Gakusei_18

第1話 出会い

当時私には好きな人がいた。


中学3年生の春、私は

"クラス替えで一緒になれますように"

とずっと願っていた。

1度も一緒になった事がなかったから、中学校生活最後の1年くらいは一緒になれるだろうと淡い期待を抱いていた。

そして、ついにクラス発表。


「あ、自分の名前あった」


山本奏音(やまもとかのん) と、3組の名簿の中に自分の名前が書かれていて、今年は3組か〜なんて思いつつ好きな人の名前を探す。


だけど。


3組のクラスの名簿には、好きな人の文字は書かれていなかった。


「奏音何組だったー?」

「え?あ、3組だった!」

「!! 一緒だよーー!!!!」

「え!?ほんと?!」

「うん!! 今年も花音と一緒とか嬉しすぎるーーーーー!!」


この子は谷口花菜(たにぐちかな)。

私と同じ吹奏楽部に所属していて、2年の時にクラスが一緒になってそれからずっと一緒にいる。今年も一緒だと思うととても嬉しい気分になるはずなのに、ならなかった。


─今年も好きな人とクラス離れてしまった。


うんざりした気持ちと、泣きたい気持ちと、友達と一緒になれて嬉しい気分がぐちゃくちゃに混ざりあって、何とも言えない気分のまま新クラスへと移動した。


教室の中では、新クラスの人同士で話が飛び交う中、私は1人落ち込んでいた。


「なーんか、なんとも言えないクラスになっちゃったね〜。奏音と一緒になれたからいいけど!」

「うん〜…」


「やっほー」


後ろを振り向く。

そこには、田島志乃(たじましの) が立っていた。

この子も私と同じ吹奏楽部に所属していて、今までクラス一緒になったことがなく部活でも関わりがなかったため、あまり話してこなかった。おまけにオーラが怖く、塩対応であるから、私はこの子と接しずらかった。


花菜「え?!志乃も3組ー?!」

志乃「うんー」


(ま、まじか、、、接しずらい、、、)


志乃「奏音も3組だよね?」

私「う、うん!」

志乃「そっか、2人ともよろしく〜」

花菜「よろしくー!!」

私「よ、よろしくっ!」



はあ。

もうどうなるんだ?

私の中学校生活最後の1年間は。




でも思えば、

私の切ない恋は

この日から幕を開けていたのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る