紳士な猫と夢少女

ネッシー

第1話 103歳のおばあちゃんと紳士な猫

小さな頃、私の家の隣に103歳のおばあちゃんが居た。腰は90度に曲がり、肌は木のように乾燥している。しかしおばあちゃんは戦争、高度経済成長、超高齢化、様々な社会問題を掻い潜り、明治、大正、昭和、平成へと時代を跨ぎ歩いてきた強く立派な女性である。

おばあちゃんは周りから”わがままおばあちゃん”と蔑まれ、1人静かに暮らしていた。私はそんなおばあちゃんが優しく可哀想な人だと思った。幼いながらに賢い私は彼女の優しさが理解出来たのだ。そして幼い私はおばあちゃんが大好きで、アイおばあちゃんと呼び、よく隣を訪ねていた。

おばあちゃんは熟睡することがほとんどで、亡くなった時も、寝ているのかと思い、周りはかなり困惑していたという。起きている時は、食事か私が夜にこっそり会いに来た時のみだったらしい。みんなからは、そんな私もまた変わり者だとよく呼ばれた気がする。

そんなアイおばあちゃんは幼い私に最初で最後のプレゼントを送ってくれた。

”ノア”という猫の人形だ。ノアは小さいが、人間を模したデザインをしており、黒の燕尾服に、中のジャケットは赤色が着ていて、杖を片手に持っていた。瞳は言葉することの出来ないほど美しく、私は1目で恋に似た感情を抱いてしまった。

ノアと1目あったのは、齢5歳の頃であり、受け取ったのは12歳。私はそこからノアを何より大切にして、何より愛した。

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