27歳独身のマンション管理人、四人娘の父になる

一般決闘者

プロローグ

「すみません。お義父さん、ですよね?」


 27歳独身、マンション経営者の俺。

 夏を目前に、いつものように共有スペースの掃除をしていた俺の元へ、4人の美少(幼)女達が現れた。


 シュシュで髪をまとめた、長髪の少女。

 制服をきた、茶髪ギャルと黒髪眼鏡の双子のJK(仮)。

 最後に、シュシュの少女と手をつなぐ、ランドセルを背負ったロリっ子。


 双子はともかく、全員、どことなく顔立ちが似ているから、おそらくは姉妹なのだろう。

 で、そんな少女達を前に、俺が取れる反応はといえば、


「は?」


 これである。

 新手の美人局かとも思ったが、流石に小学生を同伴させてそんなことをするとは思えない。つーか、そんな鬼畜がいたら引くわ。

 まあ、ロリに見える大人の女性、という線も……ないな、明らかにロリだわ。


「はじめまして。私たちは、あなたの父親の祖母の妹の曾孫です」


 シュシュの少女が言った。


「ごめん、もっかい言ってもらっていい?」

「あなたの父親の祖母の妹の曾孫です」

「なるほど、わからん」


 こりゃあれだ、紙に書いてもらわないとわからないやつだ。

 いや、多分、紙に書いてもらっても理解まではいかないだろうけど。


「家庭裁判所から、通達が来ているという話でしたけど……」

「そんなの知らないんだけど」

「ですが、了解を得ている、と伺っています」


 ………………。

 ………………………うん。


「ごめん、やっぱり記憶にないわ。人違いじゃないかな?」

「西ヶ原宗助さん、ですよね? ほら、写真もここに」


 そう言うと、シュシュの少女は鞄から封筒を取り出して、俺に見るように促してくる。


「はあ」


 俺は渋々ながらも封筒を開けると、そこには大きく分けて書類が2種類入っていた。


 履歴書っぽい俺のプロフィールの書類と、つらつらと難しそうなことが書いてある書類である。


 ………あれ?


「なあ、この書類にサインと判子が押されてるんだけど、もしかして俺が押したことになってる?」

「そうですけど……」

「………まさか」


 俺は恐る恐るスマホの電源をつけて、いつもはろくに確認しないような、個人用のメールを確認する。

 下にスクロールすることおよそ20件ほど。一ヶ月前に届いたメールに、それは書かれていた。


『女の子四人、預かることになったからよろしくね♡ By超絶可愛い妹より』


 クソが。


 悪びれることもなく、能天気に笑う姿が目に浮かぶようだった。

 あのクソ妹、いい歳してなにが「超絶可愛い』だ。

 年を考えろ、26歳独身。


 つーか、そう言う話がきてたなら、まず俺に相談しろよ。報告しろよ。ほうれん草、大事だろ? あ?


 ……はぁ。


 この子ら、どうすんだよ。


 『犯人』は後で俺が絞っておくとして、まずは目の前の問題をどうにかしなければならない。


 ちなみに、おそらく俺に拒否権はない。


 裁判所……まあ、家庭裁判所か。

 そこが発行したと思われる書類が存在して、それにサインがしてあるということは、つまりそういうことだ。

 お国様が発行した正式な書類ってのは、そういうものである。


 サインがなくても、義務が発生する可能性はあるが……法律については詳しくないし、それに、この際、もはや意味をなさないIFの話だろう。


 なにせ、俺よりも頭の出来だけは優れた妹が手を回しているのだ。

 多分、逃げ道はない。


 クソ妹、後で殴る。


「ええと……とりあえず、管理人室まで来てくれる?」


 まさか、住人が見ているかもしれない共有スペースで、こんなプライベートな話を聞かれるわけにもいかない。

 ひとまず、俺は管理人室兼、俺の惰眠部屋へと4人を案内するのだった。

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