異世界で拾われた私は、人間を護る為に魔王になりました。
ひだまり
プロローグ
この世界で最古と言われている遺跡、そこに私と数名の有力者たる魔族がいた。
その目的とは……
「私が魔王で本当にいいのでしょうか……」
『なに、魔王の資格を持つものは、誰が見てもお前しか居まい』
真っ先にそう答えたのは
微塵の迷いもないという皆の瞳に、私は助けを求めるように育ての親へと視線を移した。
「…お父様は、どう思いますか?」
しかし、当のお父様は腕を組んだまま、さも当然と言った様子で答える。
「俺も同意だ。我ら魔族を統べることができるのは、今にも先にもお前しかいないだろう」
「でも…私は……」
私には皆の上に立つことができない、大きなな理由がある。
しかし、父は"それがどうした?"とでも言うように、私の言葉を制した。
「自分が魔族ではないことを気にしているのか?だが、俺たちにとってお前の出生など関係ない。お前には力と皆の信頼がある、それだけだ」
「お父様……」
…そうだ、きっとこの人たちならば、そう言うのだろう。
私を6年以上も育ててくれた彼らは、損得では動かないことを私は知っている。“自分がそうすると決めたから”、それだけが彼らの原動力なのだ。
“自分が目の前の少女を魔王と認めたから”…彼らにとって、それ以上の理由など必要なかった。
「おっと、これからは俺もお前を敬わなければならないな。申し訳ございません、先程までの無礼を何卒お許しください」
「も、もう…冗談はよしてください……!」
「ははは。すまんな」
出会った時から比べると、いくらか皺の増えた顔を緩ませてお父様は笑った。
しかし、すぐにその表情を引き締め、真っすぐに私の顔を覗き込む。
「だが、これからはお前が皆を率いていくのだ。その覚悟は出来ているか?」
私を優しくも厳しく育ててくれた父は、これが最後の教育だと言うようにそう問いかける。
その言葉に、私は少しの迷いもなく頷いた。
「はい。ずっと昔から」
その言葉に、父は満足そうに頷いた。
そして…私の生きる道はその時に決まったのだった。
“人間”を護るために、
私は"魔王"になった。
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