第3話 『怪盗コキア THE FIRST〜魚座の涙(仮称)』あらすじver.0.1

『怪盗コキア THE FIRST〜魚座の涙(仮称)』あらすじver.0.1


 本当は『怪盗コキア THE FIRST』は中編にして3つの事件を詰め合わせたものを想定していたのですが、あらすじを書き始めたら、どうやり長編になりますね、これ。


 こんな話にしようかな〜とは思っているのですが、今ひとつまとまりきらないですね。

 まずは第一話でしっかりと見せ場を作る。

 次に第二話から最終話まで伏線を張り巡らせて先が読みたくなるようにする。

 「私がこう書きたい」ではなく「皆がどういうものを読みたい」の視点を交えるように変えていきます。



コキア 義統よしむねしのぶ

父 義統よしむね|傑(すぐる》

母 和泉川いずみかわ悦子えつこ

画商 宇喜多うきた忠勝ただかつ


 忍にとって、画家である母・悦子が絵を描いている姿を見るのがいちばんの楽しみだった。真っ白なキャンバスを油絵の具で色付けし、現実味のある作品に仕上げるさまは、いつ見ても圧巻だ。

 その様子に気づいた悦子は、忍に絵の描き方を少しずつ教えていった。

 小学生絵画コンクールで総理大臣賞を獲得し、中学生では写真のような精密な絵を描けるまでになった。しかし、なにかを見ながらでなければ描けないのだ。

 そこで悦子は自らが描いた作品を手本にして忍へ徹底的に模写を教え込んだ。忍は写実主義の悦子の絵を、写真のような精度で習得していく。すでにデッサン力は抜きん出ており、手本を参考に四苦八苦しながらも筆遣いやタッチを寸分違わず丸写しできるレベルにまで達したのは、わずかな期間しか要しなかった。

 高校生時代ではすでに母に匹敵する絵が描けたのだが、美術の授業では爪を隠すようにピカソやシャガール、モネやダ・ヴィンチに至るまで、教科書に載っていた名画を片っ端から模写して楽しんでいた。おかげで美術の成績では最高ランクを逃しはしたものの、忍の画力の高さは学校内で知らぬ者はいなかった。

 画家とパトロンの息子が最高ランクを獲れなかったと知ったとき、父・傑は激昂したものの、忍の描いた模写の完成度を見て怒りを封じてしまった。

「この子は基礎のデッサン力が完成しているし、塗り色のカラーバランスも持ち合わせている。育てばきっと悦子以上に。いや世界を代表する画家になるはずだ」

 それからは模写を叱ることはなくなり、父のコレクションから真似るのが難しいと判断された絵の模写を日課にするよう指導された。父・傑は学業よりも画家としての将来をたいせつにしようと考えたのだ。


 画家であった母・悦子が死に、パトロンだった父・傑は、体育大学出身の高校体育教師である息子の忍に絵を描くよう要請する。

 高校時代、著名画家の作品を驚くほどの精度で模写した才能を見込んでのことだった。

 しかし、父が自らの収入のために、忍の夢だった体育教師を奪うのかと反発する。

 しばらくして父は新たな画家を見つけてパトロン活動を再開したが、なかなか芽の出ない画家だったため高値では売れず、父はコレクションを少しずつ切り崩して生活をしていた。

 思い通りのパトロン活動ができないため、次第に酒に溺れるようになり、急速に体調を悪化させていった。

 噂を聞きつけたパトロン仲間の水田が忍を連れて父に会いに行くと、弱々しく「だいじょうぶだ」との言葉から、もう先が長くないことを悟った。

 父からパトロンとして所有していたコレクションの整理を任されて、初めて父のコレクションを眺めたが、そこには忍の記憶にない母の名画が十八枚所蔵されていた。

 生活が苦しいならこれを売ればよかったものを、なぜ単なる画家である母の作品を手放さなかったのか、理解に苦しんだ。

 父のパトロン活動を取り仕切っていた水田という神父は「これでもすでに十二枚は散逸しているんだ」と明かした。以前保管庫に盗賊団が入り、母の作品のうち十二星座を模した連作が盗まれたのだという。

 水田は盗まれた絵の写真は残っているが、現物を奪われている以上、あまり意味はないと述べていた。

 盗まれた絵の写真を憶えた忍は、絵画展や美術蒐集家のコレクションなどへ足繁く通うようになる。そうしてたまたま盗まれた絵の一枚『魚座の涙』が、とある蒐集家の手に渡っていることを聞きつけた。さっそく接触して遠回しに入手経路を尋ねると、ある画商から買ったのだと明かされた。

 その画商の情報を水田に探らせると、どうやらその画商もしくは依頼した人物が保管庫から絵を盗んでいったらしいと判明した。

 水田に絵の返還を求められないか尋ねると、一度買ったものを潔く譲ってくれる客はまずいないとのことだった。そして、もし本物がもう一枚あれば。それにすり替えれば気づかれないのではないか。だが、元の絵が奪還されたのだとわからなければ、窃盗団の転売を阻止できない。

 そこで何者かが「十二星座の連作」を奪い取っていることを、あえてマスコミや警察に流して窃盗団を牽制しようと話がまとまった。

 忍は持ち主にすべての事情を説明した。その絵は忍の母が描いた十二枚の連作のひとつであり、窃盗団はそれをまるごと盗んでいったこと。息子である忍自身が、盗まれたオリジナルを取り戻すのに手を貸して欲しいこと。

 話を聞いた現在の所有者は、まず忍が持ってきた贋作を見せてもらった。

 それは本物と寸分違わぬ出来栄えであり、所有者も「これであれば問題ない。君に協力しよう」と話がついた。

 まず本物を返してもらい、贋作を代わりに渡す。そしてその贋作を盗むとマスコミや警察にリークする。そして夜にマスコミや警察の目の前で贋作を奪い取り、朝に適当な場所に返却した。

 たとえ贋作を奪い損ねても、すでに本物は手元にあるのだから、忍にとって不都合はない。また所有者も自らが見初めた作品と同等のものを手に入れたので満足する。

 結局この窃盗劇は警察と窃盗団だけが損をする図式なのだ。


 二枚、三枚と盗み返されれば、件の窃盗団と画商が慌てるはずである。

 そこを見越して、神父の水田は「新たな時代の怪盗像」を構築するよう提案した。

 父のパトロン名であり、母のサインにも使われた「コキア」にちなみ、「怪盗コキア」と称することに決めた。そして「コキア」は「深緋色」にもなり、古語では「深緋」を「こきあけ」と呼ぶため、「こきあけのコキア」として、身に着ける装束も「深緋色」に統一することにした。そして犯行現場に「深緋のコキア」のひと枝を残す。これで窃盗団にこちらの真意を突きつけ、迂闊な行動をとれないよう牽制するのだ。



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