第107話 今の小説界隈。どこにでもいる主人公ではダメだ
私はこれまで「特殊能力や特別な境遇を持たない、どこにでもいる普通の主人公」だけで小説を書いてきました。
で、これがまったく振るわない。
そして『カクヨム』のランキングや★の多い作品のあらすじやキャッチコピーを調べると、「生まれながらにして特殊な能力やスキルがあって、常人ではない主人公」であることが多いのです。
ああ、確かに私の書いていた「どこにでもいる主人公」では太刀打ちできない理由がわかった、と。
今頃ですが。
でもどうにも「生まれながらにして特別な主人公」というものにのめりこめない自分がいます。
世の流行りなのだから、それに乗れば自然と読み手が増えていくのはわかっているんですけどね。
どうにも「生まれながらにして特別な主人公」に自分の境遇を重ねてしまうわけですよ。
以前からお話ししていますが、私は「養護施設育ち」かつ「四人兄弟の母子家庭育ち」なので、どうにも「生まれながらして特別な主人公」の思考がわからない。というより養護施設で『アーサー王伝説』の書籍を読んで「もしかしたら自分もアーサーのように王族の子孫なのでは」つまり「生まれながらにして特別な主人公」なのでは、と期待していたわけですよ。
それが実は「四人兄弟の母子家庭育ち」であることがわかった。
もう社会的には底辺を突き進んでいたわけです。
だから「底辺から成り上がる物語」はその点、私の憧れを投影できるので書きやすいんですよね。
でも少子化時代の子どもは親に甘やかされて育ち、「ナンバーワンにならなくてもいい、元々特別なオンリーワン」教育をされているので、自分は「生まれながらにして特別な主人公」だと思っているわけですよ。幻想が砕けるまでは。
だから小説を読むにしても「生まれながらにして特別な主人公」であることを望んでいる。
底辺からコツコツなんて、よほどの底辺育ちだな。
そう思われてしまうわけですよ。
「異世界転生で世界最強」というのも、「底辺からコツコツ」よりも「最初から無双」が好まれるわけです。
前作の『異世界孫子』が失敗した理由は、私の描写力不足もありますが、「孫子の知識を持っているけど、歩兵隊からコツコツと成り上がる」から「面白くない」と思われてしまいます。
変えるなら「雷に打たれて『孫子』の記憶を呼び起こしたら、なにか理由をつけて最初から軍師として活躍しなければならなかった」わけです。
ここを「底辺からコツコツ」思考で書いたから失敗した。描写力抜きで考えた場合です。
もちろん描写力があればもっと人気が出たかもしれませんが、根本的な理由にならないんですよね。
「そもそも論」で「生まれながらにして特別な主人公」ではないからすぐに切られるわけですからね。
文が下手とかそういう問題じゃないんですよ。
で、そのあたりを考えたうえで、次作の構想を練らなければならないわけです。
今までの「どこにでもいる平凡な主人公」を封印しないとウケない。
まあすでに書きあげた新作は「平凡な主婦」が主人公なので、こちらも当然ウケないと思います。
そのあたりを見ながら、新作では「生まれながらにして特別な主人公」を立てないといけないわけです。
「どこにでもいる普通の主人公」で書き始めた場合、すぐに「特別な主人公」になるのが現在の最適解のようです。
ジャンプマンガでは『僕のヒーローアカデミア』も『呪術廻戦』も、最初は「どこにでもいる普通の主人公」でしたが、すぐに「特別な主人公」に化けました。苦労した過程も少しは見せますが、それは「特別なもの」を扱いきれなかったことによるトラブルであって、「底辺からコツコツ」ではないのです。
これから小説賞・コンテストのシーズンを迎えますが、皆様も「どこにでもいる普通の主人公」ではなく、「生まれながらにして特別な主人公」で挑んでみてください。
きっと、なにかが変わります。
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