ははは、滑稽だなぁ!
第38.5話 ここまでしても意味はない
ふふふ、君は詐欺師がどうやって人を騙すか知ってるかい?
一流の詐欺師は噓は付かないんだ。
じゃあどうやって人を騙すか?
本当に大事なことを気付かせないんだ。
聞こえのいいダイエット食品の効果に個人差があることをバレないように小さく書いたり、契約書の注釈を曖昧に書いて捉え方によってはどう転んでも詐欺師に利が出来るようにする。
ふふふ、あはは!
君、知っておきたまえよ。今回は君にも知っておいて欲しくてね。
これを知っておけば見え方が変わるんじゃないか?
まぁ、見たくないというなら君の自由だがね。
全く恋煩いも困ったものだ。
どんなに真似ても彼女は彼女だ。あの人になれない。それに気づかないなんて。
___________________________
「ふふふ」
今は夜、白痴の姫は柳が寝た後、ベランダから宙を舞い、飛び立つ。両手を後ろに組み、黒いワンピースをなびかせる。その足取りは重そうだ。
行き先は今日柳と出ていった館、真理の館。館の噴水の傍に降り立つ。
「姫サマ」
「さ、行くよ」
入口で待っていた月の瞳と共に館に入る。暗く月明かりだけが差す館の中を、まるでここに何度も出入りしてるよう迷うこともなく先に進む。館の中奥、夏川家の書斎に何の迷いもなく入る。
「やっぱり、ここは気付いてないね」
姫は寝室方面の壁側、本棚の一つにを触る。
その中の本を一つを抜き取る。
それがスイッチというわけでもなく、一つ残らず月の瞳と協力して本を全て取り出す。
空の本棚を月の瞳が持ち上げ動かす。
本棚があった所の裏の壁に、地下へ続く梯子だけの小さな空間が置かれていた。
梯子の先のロウソクだけが壁にかけられた狭い廊下、その先の壊れた扉の空間。
砕かれた不気味な石像の前に描かれた魔法陣。その中にはポツンと、砕けた骨が散らばっている。
「久しぶり、パパ」
姫が指を鳴らすと同時に部屋のロウソクが一斉に輝き、世界が変わる。
暗黒の星空がだけが空間を支配しする。普通の人間なら自分がどこに立っているかすら解らなくなるだろう。姫の目にあった石像だったものは壊れた肉塊としてその場に漂う。それと魔法陣があった場所に横たわる黒髪の白いワンピースの少女、その顔は白痴の姫と似ているが、腹から血を流し息絶えている。
「久しぶり、おねえちゃん」
不敵な笑みを浮かべその亡骸に言う。
姫は写真立てを取り出し中を開ける。そこから出て来たのは二枚の写真。
姫の目の前の少女と瓜二つの彼女と柳の写真に隠れるように出て来た写真には、姫と少女の写真が出て来た。同じ黒いサイドテールで同じ顔、同じ制服。その違いは当人たちの僅かな違いでしかわからない。だが片方だけが制服の裾から見える傷痕が僅かに見えていた。
「フウトはボクに任せて。ふふふ、だから化けて出なくてもいいんだよ?」
「フウトはもう、ボクのモノなんだから!」
写真を投げ捨て、持ちうる限りの力を振り絞りと言わんばかりに腕を白く輝かせその亡骸を消し去る。怒りに任せ、行動する姫を月の瞳はただ見守る。
「フウトはボクを見てくれるんだ!最後にはボクを……!」
「……」
消したはずの少女が姫の前に立つ。傷一つない白い肌の白いワンピースの少女が姫の前に立つ。力任せに少女に殴りかかる姫。いつもの純粋無垢さは何処へやら。
死んだ者は殺せない。姫のこぶしは少女をすり抜け姫は体制を崩す。
転び、倒れる姫を見る少女の目はとても悲しそうだった。
「ボクが今!姫なんだ!」
起き上がり叫ぶ姫が彼女に対して抱いているのは敵意ではなく嫉妬だった。
月の瞳が拾った写真に写る二人の荷物に、名前が書かれていた。
傷のない少女には夏川姫。
傷だらけの少女に夏川
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます