02_隠し事
僕たちは、学校が終わると早速、死体が見つかった
アルバートが、一歩前を歩き、彼の後ろを僕がついていく。お
(俺を半獣にしてくれないか......)
あの日、アルバートが放った言葉が頭に流れ込む。彼を分かっていると思っていたけれど、僕の知らないところで親友は苦しんでいた。
だとして、僕は何ができるのだろうか......。
きっと、アルバートは、僕よりずっとずっと強い。一人でも困難を乗り越えていけるだろう。
僕は、アルバートの背中を見た。ずっと、彼の背中を見て、歩いてきた。彼は、僕の憧れだった。
ーーだけど、これからは。
アルバートの隣を歩いた。
彼と対等に、一人の親友として歩いていく。もう守られる自分は嫌だ。これから、向かう先に何が待ち受けているのか分からないけど、半獣と出くわすかもしれない。
もしもの時は、半獣になった僕をさらしてでも、彼を守らなくては。それで、僕たちの友情に亀裂が入ったとしても......。
「ここが、変死体が見つかった河川敷か。確か、変死体は橋の近くで見つかったってニュースでは言ってたな。鬼山、橋がどこにかかってるか知ってるか?」
河川敷は、二人ともそもそもあまり来たことがなかった。変死体が見つかったという話を聞いて橋の存在を知った。
「いや、僕も知らない。どっちにいけば、橋があるんだろう」
僕たちは立ち止まり、河川で鳥が優雅に水浴びをして、水面の水を弾き飛ばして飛び去っていく様子を見ながら、話をしていた。
「そうか。鬼山も知らないのか。とりあえず、河川に沿って歩いてみてもいいな」
「そうだね。右か左かどっちから行く?」
「どうしようか。鬼山、お前ならどっちに行く」
「えっと、じゃあ、右で。特に理由はないけれど、直感で」
とりあえず、僕たちは、右側のルートを川に沿って、歩きながら、橋がないか探した。
清らかに流れる川のせせらぎが、聞こえてきて、歩くだけでもなんだか癒された。透き通った河川を小魚が泳ぎ、水面を鳥が浮かんで、
「なかなか見つからないな、もう少し奥の方にあるのかもな」
「うん、そうだね」
僕たちは、さらに川に沿って、奥の方に進んでいった。その間、僕は、アルバートに、気になっていたことがあったので、聞いてみた。
「アルバート、何か悩んでることない?」
「いきなり、どうしたんだ。鬼山。別に悩んでいることなんてないぜ」
アルバートは、悩みがないと言ったけれど、僕は知っている。彼は、母親を失い、父親の暴力を受けていることを。そして、力を求めて、半獣になりたがっていることも。あの日、タイムベルで何度も彼の胸の内を知ってしまった。
「アルバートは何でも一人で抱え込んでしまうところがあるから、一人で悩んでいることがあれば、相談してくれていいんだよ」
「鬼山......お前、いい奴だな。お前が親友でよかったよ。でも、悩みなんて本当にないんだ。気にかけてくれて、ありがとな」
「うん、ならいいんだけれど......」
嘘だ。アルバートは、相変わらず、一人で抱えこもうとしている。
結局、アルバートは、家庭の話はしてくれなかった。気な様子を見せているが、内面は、かなり苦しんでいる。その苦しみを、親友として何かできたらいいのだけれど。
半獣たちには、話していたのに、どうして僕には、正直に話してくれないのだろうか。僕は彼の言葉を聞いて、寂しさが心に染みた。
「そういう鬼山は、何か悩んでいることないのかよ。最近、様子がおかしい気がするんだよな」
アルバートは、僕の方を見て言った。
「僕は......」
半獣になりつつあることを伝えるべきか迷った。伝えれば、どうなってしまうのだろう。全く想像が、できない。友に自分の悩みを相談できないでいるのは、彼だけでなかった。僕もまた、同じだった。
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