THE DARK ― 大手法律事務所のエースは妖しいバーテンダーの手中に堕ち、自我を覚醒していく

たろまろ

appetizer - 前菜  

第1話  夢

 ひんやりとした空気の森の中。

 白い朝もや。

 木々の間を光の柱がキラキラと照らす。


 そこはいつも遊んでいる馴染みの場所だった。

 見渡す景色は、全て大きく高く、俺は自分が小さな子供の姿なのに気づく。

 多分……小学三年生の頃だろうか。


 ああ。また同じ夢だ。

 そう思うのに覚めない夢。

 俺はこの夢を何度も見てる。


 軽やかな足取りで森の中へ進むと、人に出くわした。

 その人は大人で。

 大人なのに倒木に座り、まるで迷子みたいな顔をしてる。

 俺はその人の正面に立った。


 その人はとてもキレイな顔をしていた。そしてとても寂しそうだった。


「どうしたの? 道に迷ったの?」


 彼は小さく首を振り微笑んだ。笑っているのに、白い頬をスーッと涙が流れてく。

 潤んだ瞳は、森の光を反射してキラキラきれいで……。


 俺は子供心に思った。なぐさめてあげたいと。


 でも、もう一度見たその人は、血の涙を流していた。

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