第9話 悪魔の人喰い円盤
それは月曜日の夜のことであった。桜市N地区にある神社「春日野神社」デートスポットで有名な場所であるこの神社で1組のカップルが月をとっていた。
「月がきれいだね」「だね」
彼らがそんな会話をしている最中に影が映りこんだ。
「ん」
彼らが認識する間に影はどんどん大きくなった。そして影の正体は直径250mほどの空飛ぶ円盤だったのだ。2人は逃げ出そうとしたが、円盤は機体下部からの光を放った。光を浴びた2人は一瞬のうちに消えてしまった。偶然にもそこを通りかかったサラリーマン男性はその光景を見て呆然としていた。
「はっ」
我に返った男性は急いで警察に連絡したが、軽くあしらわれてしまった。その後、男性はこの事をSNSに投稿「人喰い円盤」としてネットニュースで話題となった。
翌日、学校では「人喰い円盤」の話で盛り上がっていた。
その傍ら、遠藤愛奈、大迫直美、育田らいらの3人は筆箱をラグビーボールのように投げたり、キャッチしていた。彼女たち3人が使っている筆箱は彼女たち3人のものではない。足立茉奈というクラスメイトの筆箱であった。
彼女たち4人は、一美の小学校からの同級生である。真奈は気が弱く、自分の筆箱がボール代わりにされても「やめて」の一言も言えず、ただおろおろとして見ているだけだった。
ホームルームのチャイムが鳴ると、遠藤達は筆箱を真奈に返し、自分の席へ戻っていった。
バスのトラブルで大幅に遅れた一美はホームルームチャイムと同時に教室に入り自分の席に座った。
桜市はS県にある海に面していない内陸の都市である。妖怪伝承がある街で約5万人が住んでいる。一美の家は市街地から南にある町はずれにある田舎で近くに騎士団の宇宙船ことローズ騎士団地球支部がある。
下校中、真奈は偶然にも遠藤達3人と出会った。真奈は3人に「自分の筆箱をボールにしないで」と言おうと決心したが、なかなか言い出せない。
「何?言いたいことがあるなら早く言って」
と遠藤が言った。
「行こう」
遠藤達3人は真奈の離れようとしたときだった。巨大な影が彼女たちを覆った。彼女たちが顔を上げると、頭上にあの「人喰い円盤」が出現した。
「なにあれ!」
混乱する4人は円盤機体下部が発する光を浴びて消えてしまった。
一美が家に帰ると、玄関にヴィヴィアンが待っていた。
「今すぐ来てくださいまし」
一美は騎士団の宇宙船に急行した。
司令室のモニターには円盤が映し出されていた。
「これは」
「世間を騒がせている『人喰い円盤』だよ」
ゲインズは答えた。
「この円盤の正体はベアード星人呪獣の宇宙船さ。円盤下部に搭載された量子転送装置で人々を拉致していたんだよ」
ゲインズは円盤を指差した。
「すべての物質は原子と呼ばれる物質で構成されている。原子とはそれ以上分けることができない最小の物質のこと。量子転送装置は対象の物質を原子レベルに分解し、指定した場所まで光に迫るほどの超スピードで飛ばし、そこで再構築するという装置だよ。目撃者は円盤から光を浴びると人が消えると勘違いしていたんだよ」
「円盤の出現データから出現する場所は桜市に限定されている」とビリー。
「AIの計算によると次に現れる場所は桜市S地区だよ」
「では、わたくしと一美さんとザディームさんは現場へ、ビリーさんとゲインズさんは円盤のハッキングをお願いしますわ」
「了解」
一美とザディーム、ヴィヴィアンは桜市S地区に急行した。
ザディームとヴィヴィアンは地球人に擬態した。
AIの計算通りに円盤が飛来し、機体下部から光を放った。
「来た」
光を浴びた3人は円盤内に転送された。3人は円盤内に潜入することに成功した。
「こちらヴィヴィアン。潜入に成功しましたわ」
「OK」
ゲインズとビリーは円盤内のメインコンピュータにアクセスし、コンピュータヴァイラスを送り込んだ。そして円盤のメインコンピューターは機能を停止し、空中で停止した。
「ハッキングに成功した」とビリー。
「拉致された人々は中央司令室の隣にある部屋にいるよ」とゲインズ。
「わかりましたわ。行きましょう」「はい」
3人は戦闘形態となった。3人は拉致された人々がいる中央司令室の隣の部屋に向かった。
ビーッビーッ
「侵入者発見」
と円盤内にサイレンが鳴った。
人々がいる部屋へ向かう3人の前に10体のペイジ級またはエクスワイア級のベアード星人呪獣、10体のクマ型怪獣「ベアードン」、10羽のスズメ型怪獣「スパローン」、10機のドローンとそれに乗ったアマリリス型植物怪獣「アマリリスン」10輪が、が立ちふさがった。
「侵入者は排除する。かかれ」
ベアード星人呪獣達が襲い掛かる。
3人も呪獣達に向かって走り出す。
3人は襲い掛かってくるベアード星人呪獣たちの胸部、腹部、茎に1発ずつファイアバレットを浴びせる。ヒットした呪獣達は絶命、爆発した。
ベアード星人呪獣達がファイアバレットを、ベアードン、スパローン、アマリリスン達がそれぞれ火炎を放つ。3人はそれぞれ高速で真上、左へ、右へ飛んで回避した。
3人はそれぞれファイアバレット、ウォーターバレット、サウンドアローを放ち、敵を次々に撃破していった。
だが、敵は次々と現れる。
「このままだとらちがあかねぇ」
「ここはわたくし達が何とかしますわ。一美さんは拉致された人々がいる場所へ」
ザディームとヴィヴィアンは道を開けた。
「わかりました。」
一美は人々のいる部屋へ向かった。
一美は拉致された人々がいるにたどり着いた。
そこには、首にチョーカーを付けられ、檻に入れられた人々がいた。その中には、真奈達4人もいた。全員気を失っていた。一人を除いて。
「よくぞたどり着いた。褒めてやろう」
一美が振り向くと、1体のベアード星人呪獣が立っていた。その呪獣は騎士を思わせる白銀のパワードスーツを着ていた。
「我の名はボガーク・グマ。この
ボガークは指から冷気を出した。
一美は右に動いて何とかかわした。
「このアームズは氷雪系!?」
「そうだ。次は外さん」
ボガークは一美に向けて指を構え、フリーズバレットを連射する。
一美は高速で真上に回避、ボガークの頭上を通り越し、中央司令室へ向かった。
ボガークは標的を一美に集中して、中央司令室へ向かった。
「かかった」
一美は人々からボガークを引き離すことに成功した。
ボガークが中央司令室に入ると、一美はファイアバレットを連射しながら接近する。
ボガークはフリーズバレットを連射してそれを相殺する。
その勢いで手首から1メートルほどの長さの氷の剣「アイスソード」を作り出した。
「アイスソードは刀身に触れた物質の熱を奪うのだ」
ボガークはアイスソードを水平に振る。
一美はそれを上体をそらしてかわす。
「よくかわしたな。これならどうだ」
ボガークはアイスソードを振り回す。縦、横、斜めと襲い来る氷の斬撃に一美はかわすしかなかった。
ボガークは一美の間合いに入った。
「ひゃっ」
ついにアイスソードが一美の体をとらえた。
がアイスソードは一美の体を素通りした。
「何!?、立体映像だと!?」
ボガークに言う通り、斬ったのはホログラムヴィジョンで映し出された立体映像だった。
一美は一瞬の隙をついて右足でキック。
蹴られたボガークは体勢を崩した。
一美はボガークに向かってファイアライフルを放つ。
ボガークも負けじと右手から「ブリザード」を放つ。
2500℃の炎と猛吹雪がぶつかり合う。
「はぁぁっ」
一美は炎の勢いを上げた。
炎が猛吹雪を上回った。
ボガークは炎を浴び、
「ぐまぁ!!」と叫び、絶命し爆発した。
ボガークとの戦闘後、一美は中央司令室でベアード星人呪獣達を1体残らず倒し終えたザディームとヴィヴィアンと合流した。
「一美さん、大丈夫ですの?」
「はい、大丈夫です」
そんな会話の最中、一美は厳重に保管されている指輪のようなものを見つけた。
「それはグランドカラミティリングですわ」
「グランドカラミティリングってあの!?」
「えぇ。グランドカラミティリングとは、カラミティリングの上位の兵器で生態系を破壊するほどの有害な兵器ですわ。わたくし達ローズ騎士団はこのグランドカラミティリングを破壊するために地球に来ましたの」
「そうなんだ」
「地球にあるグランドカラミティリングの数はまだわかっていねぇんだ」
「さあ、リングを破壊しましょう」
「はい」
一美はグランドカラミティリングにファイアライフルを浴びせた。2500℃の炎を浴びたグランドカラミティリングは機能停止し、破壊された。
「あとは人々の救出ですわ」
ヴィヴィアンは円盤のコントロールパネルを操作し、人々が付けさせられたチョーカーを外した。
「うぅん」
「ここは?」
真奈達4人は目を覚ました。
「えっ、ここどこ?」
気が付くと見知らぬ場所にいたことに困惑した。
真奈はあまり驚かなかった。
人々が気を失っている時、彼女は奇跡的にわずかながら意識を保っていた。
そこで白熊の獣人と戦う赤い少女ヒーロー、即ち一美を目撃したのだった。
真奈は赤い少女ヒーローのように自分を奮い立たせて言った。
「私の筆箱をボールにしないで。」
「ごめん。足立がそれで傷ついたこと知らなくて。今までごめん」
「私もごめん」
「私もごめん」
遠藤達3人は反省し素直に謝罪した。
人喰い円盤事件で拉致された人々はローズ騎士団によって救出された。人喰い円盤の記憶は記憶から消去、改ざんされた。
もちろん、SNSに投稿された人喰い円盤の記事も削除された。
翌日のホームルーム前、一美が教室に入ると、真奈は遠藤達3人と楽しく談笑していた。
4人は人喰い円盤の記憶を消去されたが、真奈の訴えと3人の謝罪と約束は消されなかったのである。
そのため、あの事件以来3人が真奈の筆箱をボールにすることは1度もなかった。
一美はフッと微笑んだ。
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