ディナーショーと赤いきつね

春川晴人

前編 ご褒美

 ご贔屓さんのディナーショーのチケットが当選した!!


 今年初めて開催されるディナーショーは、倍率が高いと噂されていたから、半分あきらめていたのだけれど、願っていた分夢が叶った!!


 私のご贔屓さんは、ミュージカル俳優。このミュージカルのチケットもなかなか取れないのよね。


 そしてこつこつ仕事をこなして、ついにディナーショーの開催に至るまで人気が加速してきた。


 正直、私ひとりが応援したところで、どうにもならないんじゃないと思うこともあるけれど、それはちがう。


 私ひとり、そしてほかのだれかの応援が重なれば、たくさんの応援になる。


 私は、このチケットを勝ち取るために、生まれて初めてファンクラブにも入った。


 こんな自分の変化に戸惑ってもいるけれど、全然平気。


 明日はいよいよディナーショー。電車に揺られて格安ホテルにチェックインした。


 明日着るためのドレスとアクセサリーを確認。アクセサリーは、ジャラジャラ音がするようなものはいけないから、シンプルなものに。


 夕飯は、赤いきつね。


 明日の今頃はおいしい料理とご贔屓さんに会えると思うと、その落差に少し戸惑うけれど、それもひとつのスパイスになって、いつもよりずっとおあげがおいしく感じた。


 ディナーショーも赤いきつねも、私にとっては大切なご褒美なのだ。


 つづく

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