一般城兵の勇者観察日記~
岡島冬馬
第1話
俺の名前はゼス。
今日から日記を書くことにした。
なぜかと言われると書きやすそうな話題があったから。
そして俺が死ぬまで紡ぐ物語の始まりだ。
俺はクノソス王国の王城の城兵を任されている。
城兵というのはその名の通り、城を守る兵士のことだ。もちろん王様たちも守ることに含まれている。
王国の兵士なだけあってとても名誉ある仕事なだけに採用は50人にひとりほど。
つまり何が言いたいかというと俺は優秀だ。
毎日朝早く起き、城で朝の鍛錬、鍛錬が終われば城の見回り、もしくは護衛、午後の鍛錬、こんな生活を半年続けようやく慣れてきた。
そして今日、いつものように城に出勤すると兵士たちが慌ただしかった。聞くと、これから国王が俺たちに話があるらしい。
それだけなら半月に一回くらいあるから何も慌てる必要はないはずだが。
「ただちに王の間に集合だ」
詳しく聞こうとしたが兵士に召集がかかる。
よくわからないまま俺は王の間に急いだ。
王の間につくといつもより静まり、場から緊張が伝わる。
そんな中、部屋の奥で大きな椅子に頬杖ついている王だけは雰囲気が違った。
隣に佇んでいる王女様は緊張が目で見える。
国王は本当に何話すんだ?
「聞け、お前たち」
その一声で場に静寂が訪れる。
「魔王がこの世を去ってから100年、もう魔王のことを覚えている人はもういないだろう。暴虐の限りを尽くし、人々に絶望を刻み込んだ魔王。勇者が倒してくれていなければ人類の9割は殺されていたかもしれない。なぜこんな話を今になってしているのか、それは新たな魔王が誕生したからだ。聖女が魔王の魔力を感知したから間違いない」
マジか?それは結構やばいのでは?
周りの兵士たちが混乱で喧騒に陥っている。
魔王についての本を読んだことがある。
確か魔王がしたのは人類の4分の1を殺した、殺さずとも一生魔王の奴隷として働かさせた、国を一日で平地に変えたとかそんな恐ろしい話だった。
「そこで我々は魔王に対抗できる勇者を召喚を異世界から呼ぶことにした。そして勇者召喚に必要な魔力はここにいる者たち全員で集める。よって今日はゆっくり休んで明日、魔力を貯めておいてくれ」
魔力というのは人の中に眠る力のこと。魔力の量はは人によって異なる。
魔力は万能、魔力は火を生み出すこともできれば、怪我の治療、そして異世界から物を呼び出すこともできる。
魔力はどんなに使っても一日しっかり飯を食べ、睡眠を取れば全開になる。
だから今日はゆっくり休んで魔力を最大にして明日に備えろと言ったわけだ。
でも俺の魔力なんてないようなものだからあんまり役に立つとは思えないが、休みがもらえるのはありがたい。
国王はそれだけ話すと俺たちに解散を告げた。
俺はとりあえず家に帰って昼間から酒でも飲むか。
「ゼス、ちょっと酒でも飲まないか」
俺を呼ぶ声に振り向くと副隊長が手招きしている。
テミスさんは長い銀髪の美女で、俺が所属する兵隊の副隊長でもある。
「もちろんいいですよ」
テミスさんと食事にいくことは結構ある。
そのままテミスさんに連れられて、俺の家の近所にある酒場に向かった。
「ゼス。お前、勇者召喚についてどう思う?」
お酒も廻り始めたときテミスさんが口を開く。
「魔王が復活したなら俺たちの生活を守るためにも必要なことだと思いますよ」
「私もそう思う。しかし私たちの都合で勇者を召喚して魔王を倒せなんて、勇者にはひどい話ではないか?」
この人は本当に優しいな。
自分の命が関わっているのに他人を思いやれる。口先だけでなく行動に移す人だから俺はこの人を尊敬している。
「勇者だけに負担をかけないためにもテミスさんたちが協力すればいいんですよ」
「もちろんお前の協力も含まれているんだろうな」
「俺みたいな城兵は魔王に一瞬で殺されるんで大人しく城だけ守りますよ」
「お前は自分を卑下するきらいがある。やればできるやつだろ」
実際俺は強くない。
城の全ての兵士で下から20番目くらいじゃないか?
兵士になって結構頑張っているが実力はまだまだだ。
「まぁこの話はもういいか。今日は夜まで飲むがお前も付き合ってくれよ」
「飲んだ後もお付き合いしますよ」
「お前は変わらないな」
「シータさんは前より可愛くなりましたよ」
「う・うるさい、ほら次の店行くぞ」
俺に顔を見られないように顔を背ける。
やっぱりこの人かわいいな。
シータさんに手を引かれ次の店へと向かった。
その後、5軒はしごして俺の家にシータさんと帰った。
ベッドでシータさんがぐっすり寝ている横でこの日記を書いている。
三日坊主にならないように毎日日記頑張るぞ!
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