転生天使は誰が為に

なかうちゃん

天使の記憶

1 忘れえぬ光

 全てをやり終えた日。

 芹沢せりざわ 理恵りえという少女が、天使セリエルとして天へと還る日。

 一人の天使がセリエルの魂を胸に抱き、天へと運んでいく。


 セリエルの魂は煌々と輝いていて、その光を何人かの人間が目にした。ある者は涙を流し、ある者は奮起し、またある者たちはその輝きに友情を誓った。


「セリー……頑張りましたね……」


 セリエルの魂に意識はなく、天使の呼びかけに返事はない。

 それでも、その天使は独り言のように語り続けた。


「とても立派でした。あなたの親友として、誇りに思います」


「あなたの行いによって救われた人々が、見えますか? あの方々には、これからたくさんの試練が待っているでしょう。辛いことも、苦しいこともたくさんあるでしょう。人が生きるとは、そういうことですから」


「皆、あなたのことは忘れてしまいました……。ですが、あなたの行いは皆の魂に刻まれました。きっとこれから何があっても、その魂に刻まれた記憶を頼りにして、強く生きていくことができるでしょう」


「セリー、あなたは素晴らしい天使だった」


 その日、天へと昇っていく光を見た人々は、皆一様の想いを胸に抱いたという。






 ――――この光のことは、一生忘れない。

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