第474話 13 *ビシャ*

 やっぱり駆除員となる人は凄いんだな~。

 

 ラダリオンねーちゃんは巨人ってのを取っても力はあって剣も銃も凄い。あのグロゴールにも恐れず突っ込んでいった。


 ミリエルねーちゃんはなんでもこなせるし、眠りの魔法はタカトが禁止するくらいデタラメだ。回復魔法だってなくした脚を復活させるほどだ。


 ミサロもミサロでとんでもない。一日三時間しか眠らないからホームの補充から料理まですべてをこなしている。タカトが安心して戦えるのはミサロがサポートしてくれるから可能になっているって言っていた。


 あたしらもだけど、三人はタカトが助けた者たちで、駆除員になった。


 だったらあたしらもと思うけど、駆除員は短命だ。もし、タカトが死んじゃったら残ったねーちゃんたちが受け継いでいくしかない。すべてがいなくなるまでって。


 カインゼルのじーちゃんはその縛りにあたしらを入れないためだって言っていた。


 タカトはいつも寿命で死んでやると言っているけど、ちゃんと自分が死んだときも考えている。


 あたしらが住む家には金貨や銀貨を地面に埋めてあり、いざってときに使えと言われている。ゴブリンの報酬もなるべく使うなとも言われている。


 いざというときには、自分が死んだときのことを言っているんだろう。タカトはそう言う性格だから……。


「どうしたの?」


 なんか自分の無力さに落ち込んでいると、ラダリオンねーちゃんがひょいとあたしをつかんで持ち上げた。それ、怖いから止めて欲しい……。


 肩に乗せられ、周辺の警戒に出た。いや、揺れるよ!


 肩に乗ると言うよりラダリオンねーちゃんの頭にしがみついている感じで森の奥に入っていった。


「で、どうしたの?」


 またひょいとつかんで地面に降ろし、ラダリオンねーちゃんが小さくなった。


 小さくなるとあたしより小さくなるけど、ラダリオンねーちゃんの戦闘力は誰よりも強い。スピードで翻弄しても体術がバカ抜けて高い。近づいたらすぐに捕まえられてしまうのだ。


「ラダリオンねーちゃんが凄いな~と思って」


「ビシャも凄い。剣はビシャが強い」


「それでもラダリオンねーちゃんが勝つじゃん」


 なんだかんだと最後はラダリオンねーちゃんが勝つのだ。


「当たり前。あたしはそれしか強みがないんだから。誰にも負けられない」


 それで充分じゃない。巨人であの戦闘力とか反則でしかない。山黒だってラダリオンねーちゃん一人でどうにかできるほどだ。


「タカトはできることしかさせないし、できないことは練習させる。ビシャはリーダーを任せられると思ったから任せたし、練習させるためにやらせている。別に落ち込む必要はない。それどころかタカトに期待されてる」


 期待されてるの、あたし?


「セフティーブレットはまだ小さな組織。でも、タカトの仕事はたくさんある。一人じゃあれもこれもはできない。誰かが別動隊を率いなくちゃならない。ビシャはその一人に選ばれたの」


「……あたしが……?」


「そう。だからって重く考えなくていい。失敗していい。あたしたちがフォローするから。無茶しないていどに思い切りやればいい。ダメなら速やかに逃げる。タカトはそれを望んでいる」


「…………」


「タカトと一緒にいたいのならいつまでも後ろにいちゃダメ。前に出なさい。それができないようではタカトとは一緒にいられない」


 いつも口数少ないラダリオンねーちゃんがたくさんしゃべってくれた。


「わかった。あたし、がんばるよ」


 あたしはタカトと一緒にいたい。皆といたい。ずっとこうしていたい。ラダリオンねーちゃんの言うようにしないといけないならやるまでだ。


「うん。がんばって」


 優しく頭を撫でるラダリオンねーちゃん。なんだかんだで優しくて頼りになるんだよな。


 うん。やる気出た。さっさと終わらせてやる。勝利って形でね。


 ベースキャンプに戻ったら山黒を速やかに片付け、ラダリオンねーちゃんやミサロが帰ったら皆でミーティングをする。


 まあ、ワイニーズの山に仕掛けられるのはマンダリン三台。つまり、あたし、ルーク、マニサでやるしかない。他は落ちたワイニーズから魔石の回収をしてもらう。


 行き当たりばったりな作戦だけど、相手は計画通りに動いてくれるわけじゃない。臨機応変に動かなくちゃならない。なら、状況に合わせて動くまでだ。


 その日は早めに休み、太陽が昇ると同時に起き出して準備を進めた。


 時刻は七時になり、最終ミーティングを行う。


「アリサ。地上班は任せる」


「ええ。任されたわ」


「他の皆もアリサの指示に従って動いてね。メビ。頼むよ」


「了ー解。ねーちゃんもな」


 生意気言うメビを小突いてやったらマンダリンに跨がった。


「ルーク。マニサ。やるよ」


「ああ、今日で決めてやるさ」


「やってやるわ」


 二人もやる気に満ちている。


 マンダリンを起動させ、マナ・セーラを暖める。


「よし。いくよ!」


 ルークとマニサを見て頷く。


「「おう!」」


 二人も強く頷き返した。


「マンダリン、離陸!」


 さあ、ワイニーズ討伐、開始だ!

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