第472話 11 *ミリエル&ラダリオン*

 ◇◇ミリエル◇◇


 ホームに入ったらすぐに窓から外を覗いた。


 タカトさんからビシャたちを見張るよう言われているのだ。


 ワイニーズ討伐は失敗しても構わない依頼だ。けど、誰かが死ぬことは許されない。無理と思えば逃げてもいいのだ。


 タカトさん的には無理だと判断できて、逃げる決断を取れることができることを望んでいるのだ。


 ただ、まだ子供なビシャにそれができるかは難しいところ。意地になって討伐を進めるのが普通でしょう。タカトさんみたいに無理なら退くなんてことできる人は少ないわ。


 わたしだってリーダーを任されたら成功しようと躍起になる。追い詰められたら無理をして進んでしまうでしょうね。


 そのときはわたしが出て、ビシャたちを守るよう言いつけられているのよ。


 ビシャたちはすぐにベースキャンプの設営を始めた。


 長丁場になるので椅子とコーヒーを持ってきてビシャたちを見守った。


 とは言え、見守っているだけってのも辛いものよね。まあ、イチゴを出しているからよほどのことが起きても対処はできるから離れても構わないのだけどね。


「──お疲れさん。ビシャのほうはどうだ?」


 タカトさんが入ってきてビシャたちのことを訊いてきた。


「今のところは順調ですね」


「そうか。飽きたら外に出て様子を見てもいいぞ。山黒を解体した頃が一番出やすいだろうよ」


 タカトさんは二人の嗅覚がどれほどのものかも把握しているか。どうやったのかしらね? そんなことしているの見たことないのに。


「あ、ラダリオンを出させてもいいかもな。ラダリオンなら山歩きも慣れている。ビシャたちにバレないようあとをつけられると思うぞ」


 なるほど。ラダリオンに任せるか。それはいいかも。いざとなれば交換すればいいんだしね。


 ラダリオンが入ってきたら相談すると、構わないとのことだった。


「山黒を倒したら肉を入れる」


「そうね。放置するのももったいないしね」


 山黒の肉は味はいまいちだけど、滋養強壮にいいようで結構高値で取引されている。肝臓や心臓も薬の材料になるとかで、冒険者ギルドが高く買ってくれると言っていたわ。


 今は出ると、わたしたちが見張っていると知られてしまうので待つしかない──と思ったけど、その機会はすぐにやってきた。ビシャがワイニーズの肉をバラ撒いて山黒を呼び寄せて倒してしまったのだ。


 解体に苦労しているようで、夜中、皆が寝静まったときを見計らってラダリオンをダストシュート移動させた。


 ◇◇ラダリオン◇◇


 ──ダストシュート移動して外に出た。


 山黒の臭いで鼻が曲がりそう。マスクしてくるんだった。


 鼻を押さえてベースキャンプから離れて、ビシャとメビの鼻が利かない距離でホームに入った。


「凄い臭い。マスクする」


 そう言って中央ホームにいき、タンスから防臭マスクを出した。


「どうしたの?」


「臭いが酷いからマスク取りにきた」


「山黒出たの?」


「うん。ビシャたちがいなくなったらホームに入れる」


「山黒か。少し冷凍しておくかな?」


 あまり山黒は美味しくないけど、ミサロなら山黒でも美味しくしてくれるでしょう。ヒレみたいなところを選んでミサロに渡そう。


 外に出てビシャたちの様子を眺め、移動したら埋めた山黒を掘り出してホームに運んだ。


「ちょっと時間が経ったけど、まだ大丈夫ね。ミリエル。切った肉を氷水に入れて。加工するわ」


 料理は管轄外なので二人にお任せして外に出た。


 ビシャたちは山に向かっており、どうやら山黒の巣を潰すようだ。


 先回りして山黒の巣を一望できる山に登り、バレットのスコープで見守った。


 山黒は約十匹か。アリサたちが牽制し、ビシャが半数を行動不能に。アリサたちが土の中に潜ったと思ったらビシャが爆弾を放った。


 女神製な爆弾だけに威力がエゲつない。さすがの山黒も瀕死になっている。ビシャ、なかなか頭いいことするじゃない。


 巣穴に催涙弾を放ち、中にいる山黒も倒してしまった。


「これは、また解体に手間取りそうだ」


 構えを解いてホームに入る。


 ミリエルは出ているようでホームにいない。なので、ミサロに山黒をたくさん殺したことを伝えた。


「さすがにこれ以上は入れるところはないわね。ちょっと考えてみるわ」


 解体でまた数日は動けない。考える時間はいっぱいある。がんばって考えてくださいな。


「ラダリオン。なにかあった?」


 ミリエルにも山黒をたくさん殺したことを伝えた。


「それならわたしが様子見と称してマンダリンで向かうわ。それならホームに運び入れられるしね。フォークリフトを使えば時間を短縮できるしね」


「わかった。ビシャたちにバレないところまで移動する」


 また外に出て、山の反対側に移動してホームに入った。


 ミリエルをダストシュート移動。すぐに戻ってきたらマンダリンを台車に載せて外に出した。


「あたしは一望できる場所で見張っている」


「ええ。ワイニーズが襲ってきたらよろしくね」


「任せて。バレないように排除する」


 巨人になりHスナイパーを使えば音はビシャたちに聞こえないはず。バレずに排除はできるはずだ。


 ミリエルがマンダリンで飛び立ったらさっきの場所に戻り、Hスナイパーにサプレッサーを取りつけて空を警戒した。

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