第449話 千里の道も一歩から
外に出たら砦の中を探索した。
「ん? 山になってないか?」
平らな場所に砦を築いたと思うのだが、なんか山の上に造った感じになっていることに気がついた。
「土魔法が使えるとこんなことまでできるんだな」
そういうのはドワーフの管轄だと思うのだが、この世界のエルフは泥臭い感じの種族のようだ。
「タカト、きていたのか」
砦の頂上にきたらミシニーがいた。
「なにしてんだ?」
「黄昏ているだけさ。この地にはいろいろ思い出があるんでな」
こいつも長いこと生きている感じだ。思うことはたくさんあるんだろうよ。
「三日後くらいにコラウスに帰る。オレたちと帰るならアシッカにこいよ」
「ああ、わかった」
邪魔しちゃ悪いと、その場から立ち去った。
「砦にも風呂屋があるんだ。完全にマサキさんの影響だな」
今から入る気もないので立ち去ろうとしたらビシャが出てきた。
「タカト!」
タックルしてくるビシャ。距離があったからなんとか受け止めることができた。ほんと、殺す勢いでタックルしてくるの止めてくれよな……。
「ご苦労様な。メビにも言ったが、三日後くらいにコラウスに帰るからアシッカに集合な」
「了解。タカトはすぐ戻るの?」
「いや、これから巨人の村にいって今後のことを話し合ってくる。物資も運び出すから暗くなるまでいると思う。そうなったら巨人の村からホームに入るよ」
「じゃあ、あたしらは先にアシッカに向かうよ」
「ああ。ゆっくり休んでろ。帰りはちょっと土木作業するかもしれないからな」
「了解」
頭を擦りつけてくるビシャと別れ、KLX230を戻してブラックリンを出した。
巨人の村の位置、完全に忘れてしまったんですよ。だから空に上がって気配を探りたいと思いまーす。テイクオフ!
結構な数を請負員にしたせいで集中しないとわからない。少ない数があっちにある。おそらくそれだろう。ってことでそちらに向かった。
「巨人の建設力、凄まじいよな」
二家族が移住してきたはずなのに、母屋と物置、炊事場、作業小屋ができており、魔物避けの堀に畑まで作られていた。もう村として成り立ってんな。
巨人の奥様が二人、畑を耕していたので、その近くにブラックリンを降ろした。
「こんにちは! ご主人はいますか!」
「こっちだよ!」
と、声がして振り返ったら作業小屋に頭が禿げたじいさんがいた。請負員じゃないなら気がつかなかったよ。
「どうも。様子を見にと、コラウスに帰るので挨拶しにきました」
「それはご苦労さん。皆を呼んでくるよ」
請負員とした者は母屋にいるようで、じいさんが呼びにいき、この村に移住してきた者たちが集まってきた。
老夫婦、中年夫婦、若夫婦が二組の三世代。子供はいないみたいだな。
「ちょっと待ってくださいね」
ホームに入り、ラダリオンをダストシュート移動させた。
オレも出て、ラダリオンに抱えてもらう。大人の巨人は八から十メートルある。ちなみにラダリオンは七・三メートル。一年で二メートル近く成長したよ。
赤ん坊のように抱えられるが、もう恥はない。気にせず村の連中と話した。
小麦や米、塩や味噌などの保存できるものはここに移住したときにラダリオンに出してもらい、まだ七割以上残っているそうで、食料にじゃなく酒を補充しておくことにした。
「ショットガンの弾はどうです?」
「確か、まだ二十箱はあったはずだ」
十五発入りのが二十箱か。三百発もあるなら当分は大丈夫か? 一応、グロック17を二丁渡しておこう。
「伯爵より開墾の許可は得てます。しばらくは人間が入ってくることもないでしょうが、もし入ってきたらセフティーブレットのギルド員であること、冒険者ギルドも知っていることを伝えてください。もし、村に害なすようなヤツなら排除してくれて構いません。その責任はオレが負うので」
ここはアシッカ伯爵領。法はマレアット様にある。盗賊扱いして闇から闇に葬ってやればいいさ。法は我に、だ。
「たまにゴブリンは駆除してください。もし、大量にいたらエルフに連絡して駆除してもらってください。この周辺にも百匹近くいますから」
暖かくなり、どこからか流れてきたのだろう。まったく、切りがないよ。
「万が一のときは迷わずアシッカに逃げてくださいね。生きていればやり直しはできるんですから」
何事も生きてこそ。アシッカさえ残っていれば何度だってやり直しは効くさ。
「ああ、わかった。タカトに従うよ」
話が終われば村を見せてもらう。
カメラに収めて移住したい者に見せれば不安も少しは減るだろう。巨人も種族繁栄を求めている。この度の移住もコラウスにいては限界を感じたからだ。
巨人がコラウス、アシッカ、海と住んでもらえたらオレも助かる。この一本道ができたら迅速に移動できるし、行動範囲が広がる。ゴブリンがいない地を築けばオレの老後も安泰なはずだ。
計画はまだ始まったばかりだが、着実に、確実に、築いていけば多少の問題が起きてもリカバリーはできる。千里の道も一歩からだ。
その日は村に泊めてもらい、ミサロの料理を振る舞い、酒を飲んでコミュニケーションを図った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます