第423話 決戦4
外に出ると、グロゴールがふらつきながらも立っていた。
「しぶとい野郎だ!」
右手に持つRPG−7を構え、グロゴールに照準。横っ腹に向けて発射してやった。
百メートルも離れていないので余裕で命中。爆発を起こした。
「カインゼルさん!」
「サイルス様が向かっておる! わしらもだ!」
三次元マップを開き、動体反応を見ると、凄まじい速さで移動しているのがあった。これ、五十キロは出てんじゃね?
元の世界ならオリンピックで金メダルどころか人間かと疑われるレベルだな。
右手の発射器を捨てて左手に持つRPG−7を構え、まだ倒れないグロゴールのケツに放ってやった。ファックなユー!
左股に当たってしまったが、ケツ辺りの鱗は弱いようで肉を抉っていた。
痛みで倒れたところにサイルスさん登場。凄まじい速度でジャンプ。なんかとんでもない一撃を右の膝裏に打ち込んだ。
うん。ゴブリンの王に勝った理由がよくわかる。グロゴールでなければ一刀両断にしていたことだろう。あなた、どんだけよ?
そこに鱗はなく、皮膚も厚くはない。アルズライズやラダリオンの攻撃で弱っていたのだろう。切断、とまでいかなかったが、半分まで斬ってしまった。
と、そこに大火球が襲いかかった。
「……ミ、ミシニーか……?」
こんなことできるのはミシニーしかいない。てか、あいつの魔法もチート級だな。山黒なら黒焦げにできんじゃねーか?
だが、グロゴールを黒焦げにすることはできず、転がって体を覆う火を消してしまった。本当にしぶといな!
「タカト! 伏せろ!」
咄嗟に地面に伏せると、弾頭が飛んでいく音がいくつもして連続で爆発する。
何発当たったかわからんが、もう十発以上は食らわせ、ラダリオンによるショットガン攻撃。これでなんの効果もなければ逃げるしかないだろうな。
「ダメだ! 効果がない! グロゴールが逃げるぞ!」
アルズライズの叫びに飛び起き上がる。
爆煙の向こうでグロゴールが逃げていくのが見えた。
「傷口を狙え! 少しでも体力を削るんだ!」
片方の羽もなくし、右脚もなくなっている。それでも死なないとかほんと命のパラメーターが狂ってるよな。人間が勝てるレベルじゃねーだろうがよ!
「ミシニー! 生きているか!」
全魔力を使って大火球を放ったのか、両手を地面につけて息を切らしていた。鼻血も出ているじゃないか!
急いで駆けつけ、回復薬中を飲ませた。
「……た、助かった。さすがに無茶しすぎたよ……」
「早速で悪いが、また無茶してもらいたい。やれるか?」
もう打つ手は限られている。グロゴールを足止めするにはミシニーの力が必要なのだ。
「やれるさ。当たり前だろう」
ふらつきながら立とうとするミシニーを背負った。
「土魔法は使えるか?」
アポートポーチからバッフの魔石を出してミシニーに渡した。
「……なるほど。お前の発想には驚くよ」
「すぐに理解できたミシニーにも驚くよ」
アハハと二人で笑い出す。
「アルズライズ。RPG−7は持っているか?」
どこかにいるアルズライズに通信する。
「持ってない。すべて撃ち尽くした」
「最後の一つがホームにある。取り寄せろ。そしたらグロゴールを転ばせろ」
「任せろ」
軽いミシニーを背負っているとはいえ、グロゴールに荒らされた地を走るのは辛い。なにもしなければ逃げられてしまうよ。
カインゼルさんたちが足止めをしようと奮闘してはいるが、段々と離されていく。ラダリオンを呼ぶべきだったか?
いや、ラダリオンは万が一の保険だ。なにかあったときのために残しておきたい。今ならオレたちで倒せるんだから踏ん張れ、だ。
RPG−7が発射され、爆発。グロゴールが転んだ。
「ナイスだ、アルズライズ! ミシニー、やれるな?」
「当たり前だ。任せろ!」
オレの肩を踏み台にしてジャンプ。風を操ってグロゴールとの距離を縮め、両手から魔力を放ち、土を操り十五メートルくらいのゴーレムを創り出した。
元の世界でやったワ○ダと巨像を思い出す。
のっそりと動きながらも立ち上がろうとするグロゴールに覆い被さり、その重みで倒した。
「タカト! 足止めしたぞ!」
「ナイスだ、ミシニー!」
ミシニーの腰から抜いていた四本のラットスタットを左のマルチシールドにセット。アポートポーチからラットスタットを四本取り寄せて右のマルチシールドにセットした。
「チートタイム、スタート!」
ダッシュしてグロゴールに迫り、顔面の前に回り込んだら両腕を前に突き出してマルチシールドを伸ばした。
マルチシールドに取りつけた八本のラットスタットがグロゴールの左右の目に突き刺さる。
「人間ナメんじゃねーぞ畜生がっ!」
全開の魔力をラットスタットに送る。
「ラットスタットコレダー!」
カッ! と視界を覆うほどの光が爆発。衝撃と生暖かいものが襲ってきた。
しばらく耐えていると、チートタイムが終了。全身から力が抜けて膝から崩れ落ちてしまった。
激しい動きをしなかったからさほどダメージはなく、天を見上げていたらミシニーの顔が入ってきた。
「勝ったぞ」
ミシニーの満面の笑みに、長いため息を吐いた。
「……そっか。それはなによりだ……」
そう言って意識が遠退いた。
────────────
ラットスタットコレダー。ただ、これをやりたかった物語。悔いはない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます