第419話 決戦だ!

 タワマンと言う《ジャングル》を逃げる小鳥オレたち。そして、追いかける猛禽グロゴール。命懸けの鬼ごっこを繰り広げ、虹色のキラキラを流しながらなんとか抜け出せた。


 乗り物系は得意だし、ジェットコースターは強いと自負していたが、アクロバット飛行は弱かったみたいです。イチゴとロープで括ってなければ虹色のキラキラと一緒に流されていたことだろうよ。


「イチノセ。しっかりつかまってください」


 無理です。もう意識が飛びそうですわ~。


 イチゴはそのままブラックリンを飛ばし、カインゼルさんたちがいるところへ向かった。


 虹色のキラキラもでなくなり、意識も失いかけたとき、銃声が近くで鳴り響いた。


 ……なにが起こっているんだ……?


「イチノセ。ブラックリンを廃棄します」


 イチゴの声がしたと思ったら突然の浮遊感。次に衝撃。また銃声。ほんと、なにが起こってんの?


「イチノセ。ホームに入ってください」


 言われるままにホームに入る。


「ミリエル。イチノセの回復をお願いします」


「タカトさん!」


 ミリエルの声がして温かい力が体に染み込んできた。


 耳鳴りも気持ち悪さもなくなり、温かいものが顔を覆った。


「……な、なにが、起こったんだ……?」


「目標の地点までいき、グロゴールに嫌がらせを行いましたが、グロゴールが暴走したように暴れて危険だったのでホームに避難しました」


 つまり、危うく死にかけたってことね。オレが操縦してたら確実に殺されていたな……。


「……そうか。まあ、嫌がらせ作戦は成功したんだから一日は休むとしよう……」


 体は回復したが、気持ちはまったく回復してくれてない。起き上がるのも億劫だよ。


 装備を外してもらい、中央ルームに運んでもらったら休ませてもらった。


 いつの間にか眠ってしまい、起きたら二十時を過ぎ。がっつり眠っちゃったな。


「タカトさん。大丈夫ですか?」


「あ、ああ。体も気分も回復したよ。ミサロ。胃に優しいものを頼む。落ち着いたら外に出る」


 用意できるまでシャワーを浴び、水を飲んで胃を目覚めさせた。


 ユニットバスから出たらテーブルには中華粥と白菜の浅漬けが用意され、ありがたくいただいた。あー美味しい。


 すべて完食したら蜂蜜入りの紅茶をもらい、飲み干したら完全無欠に落ち着けた。


 一緒に戦ってくれる者がいるのもありがたいが、こうして裏で支えてくれる者がいるのもありがたい。まったく、オレは幸せ者すぎるぜ。


 ダメ女神のためにがんばれないが、家族のためならがんばれる。さっさとグロゴールを倒して地上に戻るぞ。


 イチゴを綺麗にしてやりマナックを補給。バレット(落としたと思ったらイチゴが回収してくれてました)を持たせる。


 オレはマルチシールドを両腕に装着。アポートポーチ。そして、ヒートソードを腰に差した。銃は持たない。グロゴールには無意味だからな。


「いってくる。交代でしっかり休んでおけよ」


 倒れてばかりのオレが言うなって話だけどな。


「はい。気をつけて」


 ミリエルとミサロに見送られて外に出た。ちなみにラダリオンは外に出ています。今、地上はゴブリンが出てきて忙しいみたいなので。


 外は瓦礫の山となっており、グロゴールが暴れっぷりが凄かったとわかる。


「タカトです。外に出ました。起きてますか?」


「起きとる。今、南にある森の手前、五階建てのビルにいる。グロゴールは森の中に隠れてしまった」


 南? あ、マイセンズの空気清浄のために植えられた区画か。森林公園の役割もあるが、これと言ったものはないから意識の外にあったよ。


「全員そこにいるんですか?」


「わしや銃が使える者はビルにおる。直接攻撃が得意な者はサイルス様が率いている。アルズライズとビシャは湖方面から忍び寄っている」


 三次元マップを展開。南の森を拡大して動体反応を調べる。


「確認しました。グロゴールは壁際にいますね。微かに動いています。なにかありました?」


 なんか悶えてない?


「熊よけスプレーを爆発させて食らわせてやったよ」


「……それはまた、上手くやりましたね……」


 そんなチャンスよくあったこと。


「建物に頭を突っ込んだときを見計らって、熊よけスプレーを括りつけたガスボンベを爆発させてやったよ」


「無茶しましたね」


 ホームに入れるオレがやるならまだしも逃げるしかないカインゼルさんたちがよくやったものだ。


「お前よりは無茶しとらんよ。お前が出てきたのならアルズライズは仕掛けるそうだ。負傷させれたらリンクスを使うぞ」


「判断は任せます。RPG−7は持ってますか?」


「四基持っている。弾頭も十二発用意した」


「了解。臨機応変になると思いますが、そちらの指揮はカインゼルさんに任せます。チャンスがあればオレらも突っ込むと思うので」


「不味いと判断したらすぐに逃げろよ。わしらもすぐ逃げるんでな」


「安全第一、命大事にいきますよ」


「お前が一番守ってないことを理解しろ」


 そ、そうでしたっけ?


「鋭意努力します」


「役人みたいなこと言うな。言い出しっぺなんだから守れ、バカ者が」


 怒られているのになぜか嬉しく感じてしまう。やはり頼りになる人がいるってのは心強いよ……。


「生きて勝ちます」 


「それでよい。殺れ!」


「了解」


 ホームからブラックリンを出してきて南の森に向かった。


 さあ、決戦だ!

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