第410話 援軍

 致命傷を与えたかはわからないが、倒すのが目的じゃない。カインゼルさんを生かすための作戦。ローダーなど二の次だ。


 屋上を反対側に駆けて空にジャンプ。ブラックリンを呼んでシートに跨がったらチートタイム停止。カインゼルさんを追った。


「イチゴ! もういいぞ! 合流しろ!」


 最大フルスロットルで飛ばし、すぐにカインゼルさんに追いついた。


「ランダーズに!」


 追い越し様に指示を出し、ランダーズに向かった。


 三次元マップを開いてランダーズの発着場になにもいないのを確認。時速を徐々に落としながら発着場に入った。


 すぐに着陸させて飛び降り、カインゼルさんがちゃんと入ってこれるからを見届ける。


「オレが受け止めます。恐れず突っ込んできてください」


 返事をする余裕がないのだろう。オレの指示を受けてそのままに突っ込んできた。ほんと、度胸がある五十代だ。


 発着場に入ったらチートタイムスタート。マンダリンをつかんだらマナ・セーラを緊急停止。発着場に降ろした。


 チートタイムを停止させて安堵の息を吐く。成功してなによりだ。


「カインゼルさん、無事ですか?」


「……あ、ああ。さすがに心臓はバクバクだ……」


 そのまま死なないでくださいよ。長生きしてオレを助けて欲しいんですから。


「休んでてください」


 EARを取り寄せてカインゼルさんに渡した。


「すまない。バレットやG3を置いてきてしまったよ」


「カインゼルさんが無事なら構いませんよ」


 どちらが大切かなど語るまでもない。カインゼルさんが生きている。それがすべてだ。


「イチノセ。ロスキートの群れとローダーが追ってきてます」


 やはりきたか。クソ虫どもが。


「こちらに引きつけてこい」


 そのためにここを選んだんだからな。


 ブラックリンに乗り込み、銃口を外に向けた。


「カインゼルさんは破れたシャッターまで下がってください。ロスキートを引き込みます」


 群れでやってくるならちょうどいい。狭いところに誘い込んでいっきに殲滅させてやる。ここなら魔石も取りやすいし、ローダーは入ってこれない。これまでの様子からローダーは口から液体を吹きかけることもない。その巨体と鎌だけが武器だ。


 奥のシャッターまで後退し、イチゴがくるのを浮かびながら待った。


「イチノセ。入ります」


 通信が入ると同時にブラックリンが外に現れ、小さく旋回したと思ったらバックで入ってきた。どんな神業だよ?


 そのままバックでオレの横につく。


「引きつけてから撃つぞ」


「ラー」


 時間にしたら数秒だろうが、ローダーが通りすぎたと思ったらロスキートの群れが飛び込んできた。


 一人だったら大洪水を起こしていただろうが、イチゴがいてカインゼルさんがいる。さらに攻撃型のブラックリンが二台。ローダーは入ってこれない。ビビる必要はどこにもないんだよ!


 ロスキートが発着場に入り、オレたちの距離が二十メートルを切った。


「撃て!」


 左グリップにある大口径EARの発射ボタンを押した。


 バトルライフル以上の威力があるので、次々とロスキートをひき肉にしてやった。


 ブラックリンを動かしながらロスキートが周り込まないよう撃ち、その隙をカバーするようにカインゼルさんがEARを唸らせた。


 五分くらいで飛び込んできたロスキートを殲滅。だが、ローダーが穴を塞ぐように集まっていた。まだそんなにいたのかよ! お前ら群れすぎだ!


 まあ、どんなに群れようがその巨体が邪魔をして入ってこれない。ランダーズも堅牢にできているので破られることもない。檻の中のライオンを見るくらいに精神は落ち着いていられるよ。


「タカト、RPG−7で撃つか?」


「いえ、サイルスさんたちが逃げるまで引きつけます」


 グロックを抜き、届く距離まで近づいて適当に撃ってやる。ほら、怒れ怒れ。クソ虫どもが。


 マガジンを交換してさらに撃つ。ダメージは与えてないみたいだが、怒りは買えたようで鎌を突っ込んできて口の牙をガチガチ鳴らしていた。


 と、ローダーが爆発した。


「はぁ?」


 茫然としてたらさらに別のローダーが爆発した。


「──タカト!」


 プランデットからアルズライズの声が発せられ、開いた隙間からマンダリンが一台飛び込んできた。


 操縦しているのはアルズライズ。後部座席にはRPG−7の発射器を構えたメビ。意外と言うかなんと言うか。なにやってんのよ君らは!?


 オレの横を通りすぎて、ひき肉になったロスキートを牽きながら発着場に着陸した。


「タカト、無事か!?」


「タカト!」


 メビが突進してきて危うく開いた穴に落ちそうになるが、アルズライズに腕をつかまれ助かった。サンキューです。


「まったく、無茶しやがって」


 いや、無茶したのは完全に君らだよね? ローダーの群れに突っ込むとか常軌を逸しているよ。


「ありがとな。二人がきてくれたら百人力だよ」


 危険を冒してまできてくれたんだ、文句を言うより感謝を述べろだ。


「イチノセ。新たなロスキートの群れが近づいてきます」


 まだいんのかよ。世界中のロスキートがここに集まろうとしてんのか?


「マンダリンを奥に移動させろ。奥に誘い込んで殲滅するぞ!」


 まったく、落ち着く暇がないぜ!

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