第401話 情報収集
サイルスさんたちが汗を流している間にホームに戻り、写したものを印刷してきた。
「……ローダーだな……」
印刷したものを見たサイルスさんが断言した。
「黒焦げなのによくわかりますね」
「倒したら解体する。そのときと同じ体の構造をしている。魔石も同じ色だしな」
なるほど。そういう見立てもあるんだな。覚えておこうっと。
「ただ、サイズが二十メートルなのは驚きだな」
オレはサイズとかメートルとか自然に出ていることだよ。オレ、そんなに影響与えているか? 必要だからメートルは徹底させたけどさ。
「カインゼルさんも言ってましたが、十五メートルが最大だったんですか?」
「通常は巨人より小さい。十メートルを越えたら歴史に残るほどだ」
嬉しくない歴史的遭遇だな。まあ、この世界にきてから歴史的遭遇ばかりだけど!
「それを一人で倒すか」
「産卵中に襲ったから一人で倒せたんですよ。そうじゃなかったら尻尾巻いて逃げ出してました」
「産卵か。その卵はどうした?」
「茹でてやりました。あと、念のために手榴弾を放り込んでやりました」
「お前の用心深さは徹底してるよ」
一匹だけ取り残して将来の危機になったら洒落にならない。叩くなら徹底的に、だ。
「これからどうしたらいいと思います? オレとしては中止して地上に戻るのがいいと思うんですが」
あんなのがいるところでゴブリン駆除なんてやってられない。もう充分稼いだんだからもういいはずだ。
「そうだな。おれも賛成だ。だが、その前にローダーがいた場所を見てみたい。ローダーのことを知れれば現れたときの参考となるからな」
サイルスさんの考えにカインゼルさんを見た。どうなの? と。
「確かに見ておいて損はないかと。この国の下にローダーの巣があるのですから」
言われてみれば確かにこの国の下にマイセンズはある。しかもアシッカに近いとなれば真っ先に狙われるのはアシッカだ。
まあ、狙われた様子はないが、ゴブリンが溢れたこともある。なにか関係があるかもしれないんだから情報は一つでも多いほうがいいだろうよ。
「では、全員で向かいましょう」
バラバラで動くのは危険だ。万が一、ローダーが現れたとしても全員が揃っていれば倒せるはずだ。
「ああ、そうだな。距離はどのくらいだ?」
「約八キロと言ったところですかね。ただ、湖の側は木々が生い茂っていてゴブリンの気配が結構ありました」
おそらく、ローダーのお零れを狙ってあえて近くで過ごしているのだろう。巣の周りは意外と綺麗だったからな。
「まあ、八キロなら問題あるまい。そう長い草も生えているわけではないしな」
土があるところには植物が生っているが、道には生えていない。パイオニアを出しても問題なく走れるだろうよ。今回は歩いて向かうけどさ。
「では、今日はゆっくり休んで、明日の十時くらいに出発しますか」
「そうだな。今日はゆっくり休んだほうがいいだろう。マイズたちも酒が飲みたいだろうからな」
「はい。しばらく飲んでませんので」
「飲んでも構わないが、明日に残らない飲み方をしてくれよ」
こいつら飲むと際限がないからな。
「もちろんです。生きてまた酒を飲みたいですからな。ほどほどにしますよ」
まったく、自重できるんだかできないんだかわからん種族だよ。
とりあえず、キャンプ用品や余分な食料はホームに戻して、RPG−7やルンを出さなくちゃいかんな。
「タカト。わしは、マンダリンを練習してきてよいか?」
乗り物狂はめげんな~。
「遠くにはいかないでくださいよ」
「わかっとるさ。着陸を練習するだけだからな」
着陸できなかったのが相当悔しそうだ。怪我しないでくださいよ。
「イチゴ。オレが戻ってくるまで周囲の警戒を頼む。なにかあればサイルスさんに報告して指示を仰げ」
「ラー」
とりあえず全員を請負員として登録。保護対象に記録した。
「サイルスさん。オレが戻るまでイチゴの指揮権を預けます。なにかあればイチゴに指示を出してください」
「この、人形? ゴーレムか? どこまでの力があるんだ?」
「金印には匹敵しますね」
実際、どこまで動けるかは試してみないとわからない。スペックデータだけじゃわからんし。
「金印か。昔のエルフは凄かったんだな」
「そのせいで昔のエルフは滅んでしまいましたけどね」
発展した結果がこれだ。繁栄するって難しいってことがよくわかるよ。
「では、お願いします」
そう言ってホームに入った。
玄関やガレージには誰もおらず、パレットの上に麻袋が積まれたものが並んでいた。小麦か?
食料問題もなんとかしないといかんな~。ロンガルを狩れば足しになるかな?
ローダーが飼っているのかは謎だが、空から見た限り、結構いた感じだった。一匹狩れば百人前にはなるだろうよ。
中央ルームに向かい、軽く食事をしてシャワーを浴びる。
さっぱりしたらタブレットをつかみ、ビールを飲みながらRPG−7の弾頭を三十発買った。
「残り千二百万円か」
まあ、そこそこ稼いだと言っていいだろう。これなら春まで休んでも支障はないはず。長期休暇といこうじゃないか。
あれこれ考えていたら皆がやってきた。軽くそれぞれの状況を確認し合い、終わったらテーブルを囲んで夕飯とした。
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