第365話 ドラ○もん
ロースランが密集していることで温度が上がったのだろう。白い霧が立ってきた。
知らなかったのだが、あの白い霧って二酸化炭素じゃなく周囲の水蒸気が冷えたものだったのな。目に見えない二酸化炭素、おっかねー。
手榴弾を一つ取り寄せ、ピンを抜いて下に思いっきり投げてやった。
ロースランの間に消えて爆発。何匹か倒れたが、致命傷にはなってない。が、倒れた瞬間に二酸化炭素を吸ったのだろう。コテンと倒れて動かなくなった。
手榴弾の爆発で二酸化炭素が舞ったようで、少し離れたところのロースランが倒れていった。
仲間が死んだことにパニックになったのか、穴へ走り出す者もいたが、そこで大混雑。元々二メートルもない穴。力士体型のロースランが我先にとなったら詰まって当然。自ら栓となったようなものだ。
「タカト、いったいなにをしたんだ?」
「大体の生き物に効果がある毒を使ったんだよ」
竜とかいる世界。二酸化炭素にも強い生き物がいるかもしれないしな。
「風が吹けば消えるかもしれないが、ここではしばらく消えたりしない。絶対に下りるなよ」
魔石はそのうちでいいだろう。いや、魔石って残るのか? 風化したりしないのか? どうなんだ?
なんて心配はあとでいい。まだ肝心要の特異体が残っている。それを片付けてから考えろ、だ。
「アルズライズ!」
カモーンと手を振り、こちらに呼んだ。
弾薬を補給し、空マガジンや発射器をホームに片付けた。
水分補給したら外に続く通路を探しに出た。
「ここ、いったいなんなんだ? 金属の建物と言い、複雑な造りといい、意味がわからん」
「たぶん、工場だな」
完全に人が住むところではない。構造やなにかの機械類からして集合工場体、ってところだろうよ。
「こうじょう?」
「工房の大きいものだよ。何百人何千人と働いて、いろんなものを大量に造る。オレが持っている銃も服もこういった場所で造ってるんだよ。オレも昔はこういったところで働いていた」
そう思うと懐かしくなる。毎日通うのダルいな~とか思ってたのにな。あの頃のつまらない毎日がとても素晴らしいものだったと痛感させられるよ……。
「いろんな場所を渡り歩いたが、世界にはこんなものまであるんだな」
いや、これは前文明のものだ。少なくとも五千年前のものだ。よく風化しなかったと思うが、造りからして二十三、四世紀までは文明が発展してそうだ。ナノテクノロジーとかで風化しないようにしているのかもな。
……探したらドラ○もんとかいるかな……?
なんて誘惑に駆り立てられるが、渡り廊下みたいなところを走っていたらなにか衝撃が起こって転んでしまった。な、なによ!?
「特異体だ!」
割れた窓から外を見たアルズライズが叫んだ。
「走れ! 崩れるぞ!」
五千年以上守っていたものが壊れたのか、渡り廊下が端のほうから砂塵のように崩れていった。
なんとか立ち上がって走り出した。
なんとか渡り廊下を走り切り、滑り込むように倒れた。
「しぶといな!」
いいコントロールしやがって。下を覗いていたら確実に潰されていたぞ。
先を進み、壁が厚そうな場所で一旦休憩する。五百メートルも移動してないのに息切れが激しすぎて肺が痛いぜ。
スポーツ飲料を取り寄せて二人に配り、オレも震えながらキャップを外していっきに飲み干した。
「飲んだらもう少し奥にいくぞ。特異体に場所を知られた」
ペットボトルを投げ捨て、先をいくアルズライズのあとを追った。
まるでここを知っているかのように走るアルズライズが、突然、急停止。SCAR−Hを構えた。
「撃つな!」
オレもアルズライズの横に立ってタボール7を構えたら銃口を下げられた。
「バッフだ」
バッフ? なんだ?
「蜘蛛だ。ミロイド砦の近くにいたヤツ」
あ、ああ、熊のようにデカい蜘蛛な。すっかり忘れてたよ。
「女王だ。子を宿している」
「こんなところにもいるのかよ。なに食ってんだ?」
集合工場体のかなり上のほうだぞ? ゴブリンはここまでやってくるのか?
「ノズだ。下に骨が落ちている」
SCAR−Hにつけたライトのスイッチを入れて床を照らした。
「ノズって?」
「ネズミの魔物だ。人間の子供くらいあり、よく洞窟や鉱山などにいて、虫なんかを食っている。わたしは苦手だ」
死滅の魔女がネズミ嫌いかよ。ミシえもんと呼んだろか。
「どうする?」
女王の腹? にはなんかブツブツしたものが大量についている。集合体恐怖症が見たら卒倒しそうだ。
「倒す。子は集団で獲物を狩る。卵にいる間に殺したほうがいい。タカト、ガソリンだ」
ポリタンクを一つ、取り寄せた。
「アルズライズ。投げてくれ」
「わかった」
床を滑らすように投げ、バッフの近くまで寄せた。
「バッフ、動かないな」
「子を宿しているからな、動くに動けないのさ。アルズライズ、撃て」
SCAR−Hを構えたらガソリンタンクに向けて一発撃った。
穴からガソリンが流れ出し、床に広がった。
「やるぞ。タカト。合図したら盾で通路を塞げ」
了解とマルチシールドを構えた。
手のひらに紅蓮の炎を作り出し、バッフのほうに投げた。
「タカト!」
ミシニーの叫びにマルチシールドを全開。通路を塞いだ。
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一年、お付き合いいただきありがとうございます。これからも読んでいただければ幸いです。
約816000文字。
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