第353話 なんてヽ(;゚;Д;゚;; )ギャァァァとるズ

「もうきてるのか。働き者な人たちだ」


 朝、七時くらいに外の様子を見たら、アルズライズやロンダリオさんたちが集まっていた。オレ、まだスウェットのままだよ。


 ミサロに頼んでバスケットに朝食セットを入れてもらい、ダストシュートで外に出した。ちょっとそれを食って待っててください。


 すぐに朝飯を食って用意を始め、昨日と同じ装備を着込んで外に出た。


「──おはようございます。早いですね」


 出した朝食セットは食べたようで、ウルトラマリンを珍しそうに眺めていた。


「昨日、穴からなにかを燃やす臭いが流れてきたからな。あぁ、またタカトが戦っているんだろうと思ってな、朝早く出たんだよ」


 寝てる間に臭いが流れたか。この洞窟、意外と空気の流れが激しいみたいだな。


「あはは。向こう岸を拠点にするにはゴブリンが邪魔でしたのでね、調べにいったらわらわら出てきたので排除したんですよ」


「この船でいったのか?」


「はい。水上を走るバイクです。向こうまで一キロはあるので」


 オートマップを出して、地底湖と向こう岸の情報を皆に教えた。


「ウルトラマリンは、あ、これの名前です。これは三人乗りですが、さすがに体格がいい皆では無理なので一人ずつ向こう岸に運びます。荷物は一旦ホームに運びます」


 ゴムボートを引っ張って運ぼうと思ったが、転覆する恐れがあるので、一人ずつ運ぶほうが安全だろうよ。


「まだゴブリンがいるので拠点防衛に優れた人を最初に連れていきます」


「じゃあ、ミセングを先にいかせる。ミセング、頼むぞ」


 槍を使うミセングさんか。今はタクティカルショベルを握っているけど。


「ああ、任せろ」


 と言うことでミセングを乗せて向こう岸に向かった。


「おー! スゲー!」


 大はしゃぎなミセングさん。普段はクールでスタイリッシュにしている人なのに。


 時速三十キロで走り、ミセングの大はしゃぎも岸に着いたら消え去り、戦士の顔つきになった。


「奥にゴブリンがいますが、皆を運んでくるまで自衛だけに止めておいてくださいね」


「ああ、一人占めしたら皆にどやされるからな。静かに待っているよ」


 九千ルーメンのライトを渡し、ロンダリオさんたちのところに戻った。


 次はゾラさんを運び、ロンダリオさん、ラインサーさん、マリットさん、そして、最後にアルズライズを運んだ。


「まずは拠点を作りましょう」


「マリットとミセングは見張りだ。追い返すだけにしろよ」


 指揮はロンダリオさんに任せ、ホームから荷物と単管パイプなどを持ち出し、組み立ててベースキャンプを作り出した。


「タカト。そろそろ探索に出る。構わないか?」


 二時間くらいして大体ベースキャンプができた頃、ロンダリオさんがそんなことを言ってきた。


「はい、大丈夫です。お願いします」


「ああ、いってくる」


 奥に続く穴へ入っていった。


「アルズライズはいいのか?」


 いくものだと思ってたらウルトラマリンを見ていた。


「ああ。タカト、これに乗っていいか?」


「興味があるのか?」


 なに、お前も乗り物大好きマンだったの? パイオニアやバイクには興味持たなかったのに。


「ああ、ある。構わないか?」


「まあ、乗りたいって言うなら構わないが、装備は外せよ。と言うか、アルズライズって泳げるのか?」


「泳げる。小さな島で生まれ、十五まで海とともに育ったからな」


 へー。そうなんだ。コラウスには流れてきたとは聞いてだが、まさか島生まれだとはな。人に歴史ありとはよく言ったものだ。


 パイオニアやバイクを見ているからか、ウルトラマリンの運転もそう難しく受け取らず、十分くらいで乗れるようになった。


「まずはゆっくりだぞ! 地底湖が広いからって飛ばすんじゃないからな!」


 なんて言葉が届かないくらい先までいってしまった。まったく、度胸があるのも良し悪しだな。


 まあ、アルズライズなら落ちても大丈夫だろうと、ベースキャンプ作りに戻った。


 昼になり、ロンダリオさんたちが戻ってきた。どうでした?


「……どう、伝えていいかわからない……」


 ん? どう言うこと?


 他の人も見ると、戸惑いが顔に出ており、どう言葉を出していいかわからずにいた。


「大きな街があった。とてつもなく大きな街が。そこに大量のゴブリンとロンガルがいた」


 と、ゾラさんが端的に話してくれた。


 街? 地下に街? ゴブリンが築いた都市ってことか? ゴブリン王国?


「確かに受け入れ難いことですが、ロンダリオさんたちが見たと言うなら事実でしょう。まずは落ち着くためにロンガルってのを教えてください」


 オレもちょっとずつ受け入れないとパニックになるんでな。


「ロンガルとは、北方平原地方に住む巨大な草食獣だ。鼻が長いのが特徴で、全身を毛で覆われている。毛や皮は有用で、この国にもたくさん流れてきている」


 鼻が長くて毛で覆われている? それって、マンモス? なんてヽ(;゚;Д;゚;; )ギャァァァとるズ?


「その、マ──いや、ロンガルはこの国で生息しているんですか?」


 地上から迷い込んで繁殖した、とか?


「いや、生息してないから驚いている。ロンガルは巨体だ。産まれたばかりの子でも馬より大きい。とても連れてくるのは無理だ。途中に大河もある。移り住むなど不可能だ」


 なんだろう。とても嫌な予感がしてきたんですけど。


「ん? その街って、地下にあるんですよね? 暗闇なのでは?」


 闇の中で生きる生き物なのか?


「いや、明るかった。天井に埋め込まれた石が光っているようで、昼間、とまではいかないが、手の皺が見えるくらいには明るい」


 なんじゃそりゃ? ゴブリンが地下で進化したのか? 地下に帝国でも創っちゃったのか?


 おい、ダメ女神、どう言うことだよ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る