第350話 RUGER-57
「それなんだが、おれたちの隊だけの拳銃が欲しいと思っていたんだ。なにかいいものはないか?」
完全に飲み会となり、銃のことを話していたらロンダリオさんがそんなことを口にした。
「別に好みなのを選べはいいんじゃないですか? 性能はそう変わりはないんですから」
メーカーからしたら違うと言われそうだが、素人からしたら皆同じ。ただ、デザインが違うだけだ。好みでいいじゃん、だ。
「んー。おれらでも話し合ったんだが、上手く纏まらなくてな、なら、銃に詳しいタカトに訊いてみるかになったんだよ」
いや、オレも銃に詳しくはないんだがな……。
「うーん。つまり、ロンダリオさんたちの隊としてのシンボル──印として拳銃を統一したい、ってことですかね?」
「まぁ、そうだな。統一すれば使い回せるし」
だったらグロックでもいい気がするが、隊としての色も出したいってことなんだろうよ。いや、知らんけどさ。
それなら変わった拳銃にしたほうがいいか?
なんて考えたけど、拳銃なんてサブだ。メインの弾が尽きたときの代用で、止めを刺したり、護身用だったりするもの。グロックは弾数が多いから選んだまでだ。
……弾数、か……。
そういや、P90を選んだとき、5.7㎜弾の拳銃はないかと探したことあったな。
P90を出してるメーカーのFive-seveNとRUGER-57。拳銃だかサブマシンガンだかわからないP50なんてのもあったが、拳銃ならFive-seveNとRUGER-57のどちらかだろう。
ロンダリオさんにその二つの名前を教え、どちらがいいかを選んでもらった。
「その拳銃ならマガジンに二十発入りますし、弾なら支給できますよ」
P90の弾もプライムデーのときに大量に買った。余裕で千発は支給できるよ。
それぞれ請負員カードで確かめ、侃々諤々云々かんぬんと、最後は多数決でRUGER-57に決まった。ちなみにゾラさん一人だけがFive-seveN推しでした。
四割引きながら一丁六万と高額だが、マガジンが二個もついてきた。弾はこちらから支給するからロンダリオさんたち的には美味しい買い物だろうよ。
とりあえずマガジンに弾を込めてもらい、地上に出て試し撃ちをしてみることにした。
ちなみにエルフたちは酒を飲むほうを選んだので、仮ベースに残ってもらいました。アルズライズもな。
外に出ると、雪はしんしんと降り続けており、寒さが一層増していた。これならヒートソード持ってくるんだった。
「やり方はグロックとそう変わりはありません。ここに安全装置があるくらいです」
グロックは全員撃っているので詳しい説明もいらない。好きに撃ってくださいだ。
手頃な距離にある木に向けて撃ち始めた。
「オレはちょっとホームにいってきます。弾はたくさんあるので使い切っても構いませんから」
ただ見てるのもなんだし、オレも在庫管理と足りないものの補充をしておこう。なんだかんだと四割引きはありがたいしな。
ホームに入ると、ミリエルがまたハンドキャリーに段ボールを積んでいた。また奥様方に渡す献上品か?
「奥様連中まだ帰ってないのか?」
「はい。やはり雪が積もって、天候が落ち着くまで館に泊まることになりました」
家のことはいいのか? と思ったが、まあ、奥様たちにしたらいい息抜き。数日くらい泊まるのもいいだろうさ。
「化粧品か?」
「はい。今は皆で勉強中です」
田舎の奥様が化粧してどうするんだ? とか言ったら、オレはアシッカで死より酷い目に合うだろう。そんな未来はノーサンキュー。綺麗になって旦那が喜ぶといいな、とか返しておいた。
中央ルームにいったらミサロはおらず、なぜかテーブルにタコス? みたいな料理が占めていた。なんで?
「タコス、だよな?」
映像でちょこっと見たことはあるだけで、実物は見たことはないのでタコスの定義がなんなのかも知らない。
ここにあるってことは食べていいってことなので、一つ試しに食べてみた。
「まあ、悪くはないかな」
まだ試作なのか、いつものように味が整ってない感じがする。
「また、なにがどうなってタコスになったんだか?」
自分もナンを作ってみようかしら? とか数日前に言ってたと思うのだが、なんでタコスにいきついた? それともナンは止めたのか?
まぁ、いいやと、もう一つ食べたらタブレットを持ってガレージに戻り、在庫確認と補充、また十五日間消えないよう触っていった。
二時間ほどやったらラダリオンが雪まみれで入ってきた。
「タカト。コラウスから人がきたって」
「もうきたのか。早いな」
頼んでいた娼婦たちのことだが、この雪でよくこれたものだ。
「移住する巨人の一家とミシニーが連れてきてくれた」
あーミシニーな。近くにエルフがいたからミシニーのこと忘れていたよ。
「そうか。あとでミリエルに見てきてもらうとするか」
娼館事業は、町の商業ギルドにお任せしている。一応、サイルとカナルにもお願いしてきてたし、オレがいなくても上手くやってくれるだろうさ。
「あと、砦のエルフがスナイパーライフルを貸して欲しいって。あの白熊が出たみたい」
「あの美味い熊か。まあ、スナイパーライフルは高いし、M870でいいだろう。スラッグ弾を使えば白熊でも倒せるだろうからな」
大体の魔物は人を恐れない。どちらかと言えば人は獲物だ。隠れて狙うより近づいてきたところを狙ったほうが手っ取り早い。チームで挑めば難なく狩れるだろうよ。
四割引きなら二、三万円で買える。ほんと、そんな値段で買えるとか、逆に怖いよな。
十丁買い、スラッグ弾も五百発買った。
「これを渡しておいてくれ。あ、白熊が狩れたら一頭わけてくれるように言っておいてくれ」
「わかった」
ラダリオンがM870を抱えて出ていき、オレはタコスをアルミホイルに包んでいき、バスケットに詰めて外に出た。
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