第313話 交代
ロースランを切り裂いたらメロンサイズの魔石が出てきた。
さすが特異種。デカい魔石である。これなら金貨五枚くらいにはなるんじゃなかろうか? てか、こんなデカいの売れるのか? ミリエルに使わせたほうがいいかな?
とりあえず、ホームに持っていき、職員に見せて判断してもらおう。売るか使うかはそれからでいいだろうよ。
「ミリエルにエビル男爵領にきてくれと伝えてくれ。負傷者を治してもらう。人員はミリエルに任せるよ」
安全第一、命大事にしているから怪我人を回復する機会がない。せっかくの機会なのだからこの状況を利用して、ミリエルの腕を上げさせよう。
「そう伝えるわ」
ミサロに任せて外に出た。
「男爵様。ミリエルを呼びます。くるまで負傷者を寝かしておいてください。オレらは周辺を見てきますので」
「他にもいるのか?」
「それはわかりません。念のためにやるだけですよ。あの特異種が仲間を引き連れているかもしれませんからね」
なぜ仲間の下から離れたのかわからない。なら、警戒しておくに越したことはないさ。
その日はオレたちでマンドラゴラ村の周辺を警戒し、夜は村の者に任せて休ませてもらった。
次の日も警戒に立ち、サーチアイを使って周辺を探るが、ロースランの姿どころかゴブリンさえ現れることはなかった。
壊れた門も簡易的に直されたので、一旦エビル男爵領に戻ることにした。
「そう言えば、ここの男爵様はこないのですか?」
男爵に戻ることを伝え、気になってたことも尋ねてみた。
「モルズ男爵はご高齢であり、跡継ぎもまだ若い。領地としても小さいのでマンドラゴラ村はこちらで面倒見ているのだ。モルズ男爵様にはいろいろ世話になったからな」
お隣同士いろいろあるようだ。
「おれはまだ戻れんが、マイスをつける。ローラにも言いつけておく」
ローラとは男爵の奥さんね。男爵がいないときは代理として村を纏めるんだってさ。
「メビ、アリサ、戻るぞ」
皆を連れてエビル男爵領に戻る。
また暖かくなるのか、気温が少しずつ上昇しており、太陽も出てきて道の雪も解けているところがあって二十分もしないで戻れた。いやもう、こんだけ近いならエビル男爵領に組み込めよ!
「タカト!」
男爵の館にきたらビシャが死角から猪突猛進。凄まじい衝撃を受けて吹き飛ばされてしまった。い、痛い……。
「ねーちゃん! タカト死んじゃうよ!」
ほ、本当だよ! 十二歳とは言え、見た目は十五歳くらいあり、体重もそれに合わせてある。しかもビシャの筋力はオレの倍──いや、三倍は確実にある。女の子でこれとか大人の獣人はどんだけなんだよ……。
「ご、ごめんなさい……」
「だ、大丈夫だよ」
厚着をして装備もしっかりして怪我はない。ただ地面に叩きつけられて痛かっただけさ。
「ミリエル。無理言って悪かったな」
「いえ。怪我人の手当てをする機会がありませんからね。いざっというときのために練習したかったので助かります」
どうやらミリエルも危惧していたようだ。
「まさか、アルズライズが送ってくれるとは。ありがとな」
カインゼルさん辺りを連れてくると思ったんだが、アルズライズは予想できなかったよ。
「構わない。ゴブリンが現れなくなったからな」
「現れなくなった?」
どういうことだ?
「逃げ出したのはいるが、洞窟から出てくるゴブリンはいなくなった。東洞窟も同じだ」
「洞窟には入ったのか?」
「入った。だが、ロンダリオたちと相談してタカトが戻ってからにした。さすがに異常だとわかるからな」
さすが金印でありロンダリオさんたちだ。冷静だよ。
「そうか。アリサたちはマイセンズの砦に戻ってくれ。メビもだ。万が一に備えててくれ。ラダリオンたちも到着する頃だろうからな」
たぶん、嵐の前の静けさだろう。なにかあったときのためにメビやアリサたちを帰しておこう。
「あたしも残る!」
メビが駄々をこねてきた。
「あちらを手薄にはできないんだ。もし、ゴブリンが大量に出てきたら銃を使える者がいたほうがいい。銃の扱いはメビが優れている。オレが戻るまで皆を守ってくれ」
小さい子に頭ごなしに言っても反発するだけ。認めて煽ててお願いするほうがいい、とおばさんが言ってました。
「……わかった……」
「うん。頼むな」
メビの頭を撫でて機嫌を取った。
「アリサたちも頼むぞ。ラダリオンが到着したら酒を出すよう伝えておくから」
こいつらも休ませないといかんしな。ここで交代させておこう。
「……わかりました。無理をしないでくださいね」
「ああ。無理はしないよ」
アルズライズがいてミリエルがいてビシャがいる。オレを抜いても最強メンバー。ロースランの群れでもこなけりゃオレの出番もないわ。
「出発は明日にして今日はゆっくり休め。酒も飲んでいいから」
男爵の館から借りてる家に向かい、ホームから酒やロースランの肉で作った煮卵入り角煮(普通に美味そうだ。でも食わないけどな)を持ってきてやった。
「オレは男爵夫人にマンドラゴラ村のことや男爵のことを話してくる。ミリエルたちは先にマンドラゴラ村に向かってくれ。道なりにいけば二十分でつけるから」
日陰のところはヒートソードで溶かしてきた。迷うことはないはずだ。
「わかりました。いってみます」
マンドラゴラ村へ続く道まで案内し、三人の姿が消えたら館に向かった。
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