第290話 大人数で挑め
──パンパカパーン!
電子音じゃなくなったが、ダメ女神の声も癪に障るな……。
──二万二千匹突破! 快進撃でよろしい! 七日後から気温が上昇。十日ほど続いて雪も解けるよ。そのときがマイセンズに向かうチャンス! 大人数で挑め!
ん? 大人数で? どういうことだ? また大軍がいるってことか? 神々の世界には報・連・相がねーのかよ! いや、あったら苦労してないか。ハァー……。
まったく、アシッカのことも解決してないのに、マイセンズのことも考えなくちゃならんのかよ。誰かオレの生存戦略を管理してくんねーかな~!
なんて存在などいるわけでもなし。自分の命は自分でなんとかしろ、だ。
寄り子たちは伯爵と一緒にゴブリンの死体片付けの視察に出ているので、まずは駆除員同士で話し合いをする。
「マイセンズには第一陣としてオレ、アルズライズ、あと、巨人を二人連れていく。拠点を築いたら第二陣としてカインゼルさん、ドワーフたち。到着したら第三陣たるミリエル、ビシャ、メビ、エルフたちがきてくれ」
「女神様は大人数で、と言ってましたが、また大軍と戦うことになるんでしょうか?」
「どうだろうな? まったく、具体的に言えってんだ」
いや、まだ忠告しているだけマシか。大人数ならなんとかなるってことだからな。
「エルフにも銃を持たせるか」
魔法に長けているとは言え、攻撃できる魔法には限界がある。外部タンクたる魔石もないんだから銃で補うしかないだろう。
「あたしもいこうか?」
「いや、ラダリオンとミシニーには万が一のときに動いてもらう。ゴブリン以外が出たときにな」
これまでの経験からゴブリン以外の脅威にも備えなくてはならない。
武装したラダリオンと魔法に長けたミシニーがいたら大抵の魔物には対抗できる。そのときの備えとしてラダリオンとミシニーにはコラウスに残ってもらうのだ。
「ギルドとして出せる限りの数を投入する。それで足りないなら即撤退だ」
五十人もいない弱小ギルドに大人数と言われても出せる数は決まっている。無理と判断したら命を優先させてもらうわ。
「本当はミリエルにはアシッカに残って、伯爵や寄り子たちを見張ってもらいたいが、オレらが優先するべきはゴブリン駆除。アシッカは二の次だ」
「まあ、見張りは職員たちで問題ないでしょう。腕輪を残していけば食料の心配もありませんしね」
「そうだな。飢えないことがわかれば伯爵でも抑えられるか」
寄り子たちが反旗を翻すならお手上げだが、今の状況でやっても未来はない。オレは反旗を翻すようなヤツらと仲良くしたくない。諦めて次の方法を探すさ。
「ミリエルも忙しいだろうが、マイセンズに向かう用意も頼む。オレは出発まで伯爵と話を詰めるから」
マイセンズまでそう遠くない。知っている者の話では朝早く発てば夕方には到着できるそうだ。
「わかりました。任せてください」
「ミサロ。アシッカの雪が解けるならコラウスの雪も解けるはずだ。サイルスさんやダインさんと相談して食料を買い込んでいてくれ」
「了解。あ、一度腕輪を貸してくれる? 巨人用の布やお酒が足りなくなってきたから」
「なにかあったのか?」
十二分に溜め込んだよな? ネズミにでも食われたか?
「街で暮らす巨人が結婚すると言ってたわ」
結婚? 巨人の? 式をやるってことか? 半年以上巨人と付き合ってきたが、まだまだ知らないことあるなー。まったく想像がつかんわ。
「そうか。夜にでも持ってくるよ」
大まかな計画を立てたら支部に。ダメ女神からのアナウンスを話し合おうとしたら請負員には伝わってなかった。え? 駆除員にだけ伝えたのか? なんでまた?
よくわからないが、ダメ女神に「なぜ?」とか言っても無駄。まさに神のみぞ知るだ。気にしないのが吉だ。
職員たちに説明し、マイセンズにいく大まかな計画を話した。
「わたしたちは居残りですか」
「暖かくなったら地中からゴブリンが出てくる。それを駆除しててくれ」
まだ五百匹以上いる。居残り組で仲良く山分けすればそこそこの報酬になるはずだ。
「ないとは思うが、寄り子たちが反旗を翻すようなら速やかにコラウスに逃げろ。後々の面倒事はこちらで対処するから」
まあ、サイルスさんや領主代理にお願いするんだけどね! だって、オレにどうこうできないもん! より強い人にどうにかしてもらうのが手っ取り早いでしょ!
「これでもサイルス様の下で働いてたんですからそんなことさせませんよ」
ゼイス、元鉄印の冒険者だよね? なんでそんなに自信満々なの?
「貴族の三男坊が冒険者になるなんて珍しいことじゃありませんよ」
「ゼイスも貴族だったのか?!」
メッチャ下に扱ってたよ!
「元、ですよ。貴族籍から外れてますから」
外れるとかできるんだ。貴族、よくわかんねー。
「じゃあ、これからゼイスも伯爵との話し合いに参加してくれ。オレでは貴族の悩みとかよくわからんからな」
ミリエルにお願いしたとは言え、伯爵ばかりにかまけてられない。一度、マイセンズの様子も見にいきたいからな。
「三男坊にどこまで理解できるかわかりませんが、マスターの負担が軽くなるよう努力しますよ」
ほんと、できるばかりのヤツで頼もしいよ。
ゼイスを連れて伯爵のところに向かった。
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