第268話 食料危機対策
充電時間五時間。稼働時間三十分のサーチアイさん。
燃費悪すぎだろ、とは思うが、物は使いよう。
オートマップと連動しているから上空に放って周囲をぐるり。謎仕様でマッピングされた。
町からかなり離れているのでそこまではマッピングされないが、十分も飛ばせば町のすべてを網羅してくれた。お前、優秀!
さらに五分ほど周辺をサーチさせたら戻した。
サーチアイをホームに戻して充電。また外に出て、シナモンスティックを入れたホットウイスキーを飲みながら町の様子を見る。
記録映像だからリアルタイムのことじゃないが、数分前のことなんだからそう変わりはない。つーか、人の姿がない。城壁に兵士の姿がちらほらと見えるくらいだ。
「自ら出てなんとかしようとする気はなしか」
応援でもくるんだろうか?
「相手はゴブリン。籠城すればなんとかなると思っているのだろう。食料も足りないそうだしな」
「ここではたまにあることだ」
いつの間にかカインゼルさんとミシニーが横にきていて、オートマップを覗いていた。だから気配を出して近づいてよ!
「厳しい土地ですね」
そんなところで生きていくって、どんな気持ちなんだろうな? オレは心がやさぐれていってるけど!
「わたしら請負員にしたら美味しい地さ。なんの苦労もなくゴブリンを殺せて毎日美味い酒が飲める。もう冒険者稼業には戻れんよ」
「そうだな。やり甲斐のある仕事。充分すぎる報酬。馬より走れる車。もっと早くタカトと出会いたかったよ」
充実した毎日で羨ましい。オレは日々を生きるだけで精一杯なのによ。
「ゴブリンを狩り尽くしたら町に入るのか?」
「んー。そうだな。マイセンズでの駆除もあるし、話を通しておいたほうがいいだろうから町にはいってみるよ」
マイセンズの場所はミシニーから聞いたので案内がなくてもいけるだろう。まあ、方角を聞いただけだけどさ。
「入るときは必ずアルズライズを連れていけよ。タカトではナメられるかもしれんからな」
アルズライズは、アーノルドなシュワちゃんみたいな感じだからな。あの姿を見てナメた態度を取れるヤツがいたら見てみたいものだ。
「そうするよ。オレだと手榴弾ばら撒いて逃げ出しそうだからな」
「それ、冒険者ギルドでやろうとしましたよね? サイルス様が切れたらなにするかわからないヤツと言ってましたよ」
ホットワインをちびちび飲んでいたシエイラもやってきた。
そんな過去もありましたね。手榴弾じゃなくスタングレネードだったけどな。
「手加減できる相手じゃないと感じたからな。手段なんか選んでられないよ」
「そういうところがマスターの怖いところですよね。追い込まれることを前提に用意しているところが」
「力じゃ勝てないんだから頭を使うしかないんだよ」
「フフ。そういう見栄を張らないところがタカトのいいところだ。無駄に虚勢を張っているヤツを見ると痛々しく思うよ」
「まあ、それが男って生き物だ。温かく見守ってやれ」
オレも男だ。虚勢を張る気持ちもわかる。だが、実力もないのに虚勢を張っても命を縮めるだけ。ナメられてもいいからオレは安全を取るぜ。
町のどこを探っても人の姿は見て取れない。ただ、じっと堪えるのみ、って感じである。
「水とかどうしているんですかね?」
井戸らしきものが見て取れない。雨水を溜めて飲むのか?
「地下井戸がいくつかあるんだよ」
「地下井戸?」
「ここは昔、穴があった場所に町ができたところなんだ。行商奴隷団のヤツも言っていたが、ここは川が少ない。なんでも水は地下を流れているそうだ」
京都の地下みたいなものか? よー知らんけど。
「そう言えば、行商奴隷団は、ゴブリンが集まる前に町から去ったんだろうか?」
「町に入ったなら水は補充しているはずだ。ゴブリンを見て去ったんだろう。行商奴隷団としては無理をする必要もないからな」
ってことは食料を運び込めなかったってことか。これは対策しておく必要があるな。
「ラダリオン。ホームから塩と小麦を持ってきて巨大化させてくれ。交渉材料にするから」
チート腕輪を使えば食料問題も片付けられる。それを材料にすればアシッカ伯爵と有利な交渉ができるはずだ。
「ダインに言って豆を集めてもらったほうがいいですよ。今年はゴブリンの被害も少なかったので冬越しのものを安く買えるはずですから」
「豆か。わかった」
ホームに入り、ミサロに伝えた。
「タカト。一キロの塩、いくつ出す?」
「そうだな。四つでいいだろう。巨大化すれば五、六キロにはなるしな」
数百人規模の町。二十キロもあれば次の行商奴隷団がくるまで持つだろうよ。足りなければまた売ればいいさ。塩は安いしな。
「小麦も一キロのを三十個ばかり出せばいいか」
二十キロのを買って巨大化しても運ぶのが大変だ。小さいのを買ったほうがいいはずだ。
買ったものを外に運び巨大化させたらビニールシートを被せ、風で飛ばないようロープで縛っておく。
「──ん? ミリエルたちがきたか」
もうちょっとで太陽が山に隠れる頃、ミリエルたちの気配を感じ取った。
「カインゼルさん。ミリエルたちのところにいってみますんでここをお願いします」
VHS−2装備にして簡易砦を発った。
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