第250話 検証

 休息が終わり、ミロイド砦でのゴブリン大駆除作戦を開始する。


 第一陣は前に決めたようにカインゼルさん、サイルスさん、ラダリオン、留守組だった職員八人だ。


 サイルスさんは昨日、城に戻ったので、十人をマルスの町に運ばなくちゃならない。


 パイオニアは一応、五人乗りなので、一号二号に職員を八人乗せ、運転はミリエルとシエイラに任せる。


 ウルヴァリンにはカインゼルさんとラダリオンに乗ってもらい、トレーラーを牽引して荷物を運んだ。


「カインゼルさん。お願いしますね。ミリエル。ついたらウルヴァリンはホームに入れてくれな」


 そう声をかけて第一陣を見送った。


「ビシャ、メビ、オレたちは簡易砦だ」


 まだ銃の掃除やら弾入れがあるが、大まかな掃除は職員に任せ、弾入れはドワーフたちに任せた。でないと、簡易砦についてきそうな勢いだったのでな。


 KLX230に跨がり、後ろにはメビを乗せた。


 まだ十歳のメビにはビシャほどの脚力はなく、体も小さいから後ろに乗せていくことにしたのだ。


 簡易砦までは巨人が道を均してくれたので林道くらいにはマシになっているので、難なく走れた。


 距離は十五キロちょい。KLXはキロメーターだからわかりやすくていい。マイル表示だといまいち距離がわからないんだよな。速度もなんとなくで感じてたしな。


 三十分とかからず簡易砦に到着。エンジン音を聞きつけた樵の巨人が迎えてくれた。


「誰だと思ったらタカトか」


 樵のマイゼルと言うらしく、コラウスで利用する木は大体がマイゼルが伐っているんだとか。街で買った斧を三本渡したら喜んで簡易砦の留守を引き受けてくれたよ。


「留守を任せて悪いな」


「構わんよ。毎日美味いもんを食えて酔えるほど酒が飲めるんだからな。今も飲みすぎて起きたばかりだ。かーちゃんどもに知られたらどやされるな」


 樵は儲かるようで嫁が二人いて子供は六人いるそうだ。リア充め。


「アハハ! 留守番の特権だ。今のうちに飲んでおけ」


「いや、さすがに飲みすぎたと反省してるよ。かーちゃんどもが怖いからな」


 どうやらどこの家庭もかかあ天下のようだ。


「食料と酒は足りているか?」


「ああ、足りているよ」


 一応、貯蔵庫を作ってもらって食料は詰めてもらっているが、どうなっているかまでは聞いてないんだよな。あれもこれもと頭には入れられないんでな。


「ビシャ、メビ。あちらの方角にゴブリンの群れがいる。少し間引きしてきてくれ。オレは簡易砦周りを見てくるから」


 三十匹くらいの群れがいる。二人の脚なら三十分くらいで終わらせてくるはずだ。


 ホームから二人の装備を持ってくる。


「メビ。あんたは着替えるのが遅い。グズグズしてるとあたしが全部狩っちゃうからね」


「しょうがないじゃない! あたしは銃を使うんだから!」


 まあ、剣と銃では装備が違う。手間がかかるのは銃装備だろうよ。


「先にいくからね──」


 非情な姉は妹を置いて走り出した。


「あ、待ってよ!」


 予備のP90を忘れて姉を追って走り出してしまった。


 まあ、三十匹ていど。予備はなくても問題ないかと、KLXにかけておいた。


「マイゼル。オレは出てくる。格子門は閉めてくれな」


 簡易砦の格子門は巨人でないと開閉できないのだ。一応、縄梯子はかけてあるけどな。


「ああ、わかった。まだ冬眠前の熊がうろついているから気をつけろよ」


 まだ冬眠してない熊がいるんかい。もう十一月くらいの気温だぞ。


「じゃあ、いってくる」


 そう言って走り出した。


 今日、簡易砦にきたのは視察がメインだが、チートタイムの訓練も兼ねている。


 チートタイムは、勇者に匹敵する身体能力と魔力が三分間だけ使える。


 これって、勇者の力を借りたのか? それともオレの体を勇者に匹敵するまで高めたものか? はたまたダメ女神が力を与えたのか? どう言った理屈かでチートタイムの意味が違ってくる。


 理想はオレの体を勇者に匹敵するまで高めたものだな。


 これなら使えば訓練にもなり基礎能力が上がるかもしれないし、魔法を使う勘が鍛えられるはずだからだ。


 まあ、勇者から借りた力でも女神が力を与えたものでも構わない。三分間ならなんのリスクもなしに勇者に匹敵する力が使えるんだからな。


 百匹近い気配が二キロ先にある。


 チートタイムを使えば一分とかからず向かえるが、なにかあるかわからないのだから一分は残しておきたい。なるべく自力で近づき、二分で片付けるようにしたいのだ。


 百メートルくらいまで近づいたら少し休み、チートタイムスタート。一匹に迫ったら腰に差したマチェットを抜いて一刀両断。次へ向かってまた一刀両断した。


 次々と一刀で片付けていき、一分三十六秒で百六匹のゴブリンを駆除ができた。


「ふー。微妙に疲れた感はあるな」


 前のときは高ぶっていてわからなかったが、少し走ったくらいの疲れを感じた。


「三分間のエネルギーはオレから出てるってことか?」


 いや、動かしているのはオレの体なんだから疲れるのは当然か。やはり何度も使わないとわからんな。


 二十四秒でゴブリンの水分を集めて遠くへ放ち、簡易砦へ戻った。

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