第167話 新たな請負員

 ロダンさんの息子さんが帰ってきた。


 ただ、先に帰ってきたのは長男で、二十歳くらいの好青年って感じだった。


「ミシェド・ミレットです。酒場を切り盛りさせてもらってます」


 へー。酒場は息子に任せてるんだ。もっと年配の人にやらせてるんだと思ったよ。


「ミシェドは小さい頃から酒好きで、酒場をやるのが夢だったのです」


 さすが異世界。小さい頃から酒を飲むとか、法が整ってないことがよくわかるぜ。


「タカトです。オレも酒が好きなのでライダンドにいる間に寄らせてもらいます」


 うちで飲んだほうがゆっくり美味い酒が飲めるが、異世界の酒場がどんなものか気になるし、店で飲む酒も美味い。オレ、居酒屋とか好きなんだよね。


「是非、お越しください。ライダンドの羊を使った料理も出しますので」


「それは絶対にいかないとなりませんね。いくときは連絡しますよ。うちには大食いが一人いるので銀貨五枚くらいの食材は用意してください」


 ラダリオンなら小さいままでも羊一匹は食ってしまいそうだしな。銀貨五枚くらいの食材がないと足りないだろうよ。


「ミシェド。タカトさんから買わせていただいた酒だ。試し飲みしたら旦那さんたちを呼んで振る舞え」


 わざわざ買った酒を他に振る舞うのか? いや、酒屋で酒場を営んでるんだからおかしくはないが、オレから買わなくちゃ続かんだろう。


 そのために息子を請負員にしようと考えてるのは読めるが、請負員では酒場を賄えるほどの稼ぎをするのは大変だろう。


 ミシェドさんと従業員らしき者らと酒を運んでいると、別の従業員と三男がやってきたと報告にやってきた。


 部屋にやってきたのは十五、六歳の少年が三人。どれが三男で、なんで三人なんだ?


「息子のバイス、仲間のサルス、ライマーです」


 栗色の髪をしたのがバイス。大柄のがサルス。坊主頭がライマー。この三人がチームを組んで冒険してるんだとさ。


「この三人を請負員とするので?」


「はい。まだ冒険者になってまもないですが、三人とも馬にも乗れますし、弓も使えます。親の贔屓目と言われそうですが、同年代では優秀な三人です」


 確かにコラウスで見た少年たちよりは体格がよく、筋肉のつき方が違う。殴り合いしたらオレが負けそうだ。


「三人はゴブリンを狩ることに納得しているのか?」


 嫌々やるのなら断らせてもらうぞ。


「最初はゴブリンなんてと思ったが、あんたはゴブリンの王と戦って、ロースランを倒したんだろう」


「こら! タカト様に失礼だぞ。お前も冒険者なら銀印の冒険者に敬意を払え」


「構いませんよ。生意気を言えるのは若いときだけですからね。大人になると口の聞き方次第で仕事を失ったり信用を失ったりしますからね」


 いつか失敗する前に学べればいいな。後悔は先にこないんだからな。


「これは先をいく大人からのお節介だ。やるやらないはお前らの自由。大成したいのなら先をいく成功者から学べ。それが大成する一番の近道だぞ」


 失敗から学べることもあるが、この世界で失敗は死だ。危険を冒してまで学ぶにはリスクが多すぎる。なら、成功者から学んだほうが賢いってものだ。


「バイス。ここが分かれ目だ。タカトさんの言葉を聞くか、大人の口うるさい説教と聞き捨てるか。それでお前たちの未来が変わるぞ」


 黙っていたダインさんが口を開いた。この人、こんな熱い人だったの?


「……あ、あの、生意気言ってすみません」


 バイスが謝ると、二人もすみませんと口を開いた。


「いい息子さんをお持ちだ」


 この年齢なら感情を優先して反発しそうなものだが、ちゃんと大人の言葉を受け入れた。それは両親の教育の賜物だろうよ。


「お恥ずかしい限りです」


 恐縮するロダンさん。羨ましい限りだ。オレもこんな家庭を持ちたいものだぜ。ハァー。


「話を戻すが、三人はゴブリン駆除請負員となるか?」


「はい。やりたいです」


「オレもです」


「オレもやりたいです」


 いい仲間を持ったものだ。大事にしろよ。


「わかった。三人をゴブリン駆除請負員とする」


 請負員カードを発行し、三人に名前を登録させて請負員とした。これで請負員が十五人か。順調に増えているな。


 それからダインさんやロダンさんの前で請負員のことを教える。カードはゴブリンを駆除してからでいいだろう。


「三人は馬に乗れると言ったが、馬は所有してるのか?」


「ああ──いえ、はい。持ってます。ライダンドでは馬を持ってないと遠出も狩りもできないんで」


 まあ、街の外は何十キロと平原が広がってる。徒歩移動はキツいだろうよ。


「じゃあ、少しゴブリン駆除をやってみるか。馬ならゴブリンに追いつきそうだしな」


 マーヌの他にも通常(?)のゴブリンはいた。追い込んでいけば弓矢で殺せるだろう。


「ビシャ。ここに残ってるか?」


 交代しながらの睡眠だからか、先ほどから眠そうにしていたよ。


「ううん。いく。あたしもゴブリンを狩りたいから」


 眠そうな目に力が入り、勢いよく椅子から立ち上がった。元気な子だよ。


「準備は?」


「できてます」


 と言うのでビシャと三人を連れてゴブリン駆除へ向かった。

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