第148話 これからの対応

 上司が飲み会の席でよく「無礼講でいこう」とか言う言葉ほど信じてはならないものはない。


 いろいろ解釈はあるし、受け取り方はあるだろう。マナー講座でも無礼を働いてもいいってことじゃないと教えられもした。


 領主代理がフレンドリーに話しかけてくるが、それを受け入れられたと勘違いすることはできない。これは、面接だ。昨日の夕食のようにオレの為人を見ているのだ。オレの背後に立つ二人の雰囲気がそうだと語っている。空気を読むことに長けた日本人を偽れると思うなよ。ボロを出したりはしないからな。


 ウイスキーを飲むのをセーブしながら領主代理に受け答えしてると、ギルドマスターとカインゼルさんがやってきた。ホッ。待ってました。


「タカト。アイスを買いたいんだが、なにかお勧めはあるか?」


 風呂上がりの小学生か!


「パ○コがお勧めです」


 小学生の頃、それが至高でした。


「そうか。お、これか。どう食べるんだ?」


 パ○コを何種類か買ったギルドマスター。この夫婦は加減てものを知らないのか? ほら、ここを切って食べるんですよ。


「タカト。ウイスキー以外にお勧めの酒はあるか? 寝る前に飲めるやつがいい」


「寝る前は飲まないほうがいいですよ。中毒になったり太ったりしますからね」


 たまにオレもやっちゃうが、酒の勢いで寝るのはお勧めしない。ウコンかシジミ汁を飲んで寝ろ、だ。この世界の人に効果あるか知らんけど。


「そうなのか?」


「健康でいたいのならほどほどがいいですよ。あと、運動もよくするといいですね」


 トマトジュース、バナナ、アボカドをミキサーにかけて飲むのもいいと先輩が言ってたが、オレはレモン水をがぶ飲みするな。


「そうだな。よく動いて美味い酒を飲むとしよう」


 まあ、健康管理はオレの仕事ではない。執事や侍女の仕事だ。死なせたくないのならよく管理しろ、だ。


 面接みたいな食事、と言うか飲み会? は一時間くらい続き、執事だか侍従だかのそろそろ就寝の時間ですって言葉で解散することになった。


 部屋へ戻り、用意していた水を飲む。


「カインゼルさん。ちょっとホームにいってきます。二度も襲ってくることはないでしょうが、万が一のときのために持っていてください」


 MP9とグロック19を入れたショルダーバッグを渡した。


「見つかったら咎められるぞ」


 苦笑いしながらもグロックを出して枕の下に入れ、MP9にマガジンを差した。


「先に寝ててください。朝には戻ってきますんで」


 さすがに二度も襲撃はないだろうが、弾薬の補給は最低限やっておきたいのだ。


 ホームに入り、適当に入れたMINIMIを棚に戻して場所を作った。


「掃除が大変だな」


 MINIMIがなんだかんだで四丁になり、416Dは三丁、ベネリM4も三丁、グロックは予備を含めたら八丁、Hスナイパー、SCAR、APC9、P90は……捨てたんだっけな。


「ハァー。もっと銃を用意しておかないとダメだよな」


 ミサロがどう報告するかわからないが、魔王軍にオレのことが伝わるのは確か。このままゴブリン駆除を続けていけばまたぶつかるだろうし、脅威と見なされたら大軍で襲ってくるかもしれない。なんらかの対応をしておくべきだろう。


「人員増加か?」


 とは言え、数を揃えるにも先立つものは必要であり、維持するのにも金がかかる。つーか、オレに集団を率いる能力なんかねーよ。カリスマも皆無だわ。


「報酬金は七百三十万円か」


 三百万円くらいだったから四百万円はプラスされたが、P90やVHS−2、バトルライフル、あと、大型魔物に備えてロケットランチャーを買っておかないといけない。おそらく、それらを揃えたら軽く二百万円はかかるだろう。


「また玄関を広くしないとならないか」


 生活してたら物は増えるものだが、生活品より武器ばかりが増えていくぜ……。


「……どうしたものか……」


 まずは、領主代理からの信頼を得て、コラウス辺境伯にセフティーブレットの本拠地を構築。貧している冒険者を誘って請負員として教育する。って感じかな~。


 とは言え、そこまでもっていくまでどれだけ難題が待ち構えていることやら。今から胃が痛くなる。


「なんにしろ先立つものが必要か」


 あれこれ考えても、最終的にはそこに辿り着く。


「輸送で稼ぐか?」


 こちらにはパイオニアが二台あり、牽引車を買えば輸送はできる。とは言え、オレに商売のセンスなんてない。交渉なんてのも無理だ。ぼったくられる未来しか見えないわ。


「十五日縛りが地味に効くな」


 元の世界の品で荒稼ぎ、なんてできやしない。


 いや、飲食店なら可能か? ダメか。オレ、そんなに料理得意じゃないし、材料を集めて、料理を作り、客を捌く。うん。ゴブリン駆除やってる暇がなくなるな。


 あれこれ考えるが、眠くて頭が働かない。すぐに対応できる武器だけを用意し、外の様子を見て、なにも異常がなければ玄関で横になった。


「……しばらく休むとするか……」


 命の洗濯をしないと次に進めない。リフレッシュしてから次に進むとしよう。


 眠気がいっきに襲ってきて、そのまま眠りへと落ちていった。



                 第3章 終わり

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