第138話 急変に次ぐ急変
外に出たら火が立っており、なにか大きな翼を広げた獣が見えた。
またヤベーのが現れてくれる。オレはゴブリン駆除員なんだから出てくんなよ!
「こちらです!」
パイオニアは最初に停めた場所にあり、銃とかは厩の中に置いてあった。
「これでワズールを牽制してください。あれの強さは知りませんがこの明かりなら怯むはずですから」
案内してくれた……兵士に軍用LEDライトを渡し、使い方を教える。
「ワズールから距離を取り、無理しないように」
「わ、わかりました」
兵士が駆けていき、オレは装備を身につけた。
街へ出かけるからMP9を装備してきたが、パイオニアにはHスナイパーとVHS−2を積んでいた。ワズールにどこまで通じるかわからないが、オレが正面切って戦う必要はない。援護でいいだろう。
VHS−2を背負い、Hスナイパーを抱えて厩を出た。
外から城の二階へ上がれる階段を発見。階段を駆け上がり、ワズールを見下ろせる位置について折り畳まれた脚を伸ばし、Hスナイパーを構えた。
先ほどの兵士が明かりを照らしてくれてるのでワズールなるものの姿が見えた。
「グリフォンだな」
いや、グリフォンの正確な姿など知らんけど、鷹の顔、獣の四肢、大きな翼に鞭のように動く尻尾。適当に創造した感が満載である。が、屈強の兵士を翻弄し、口から火の玉を吐き出している。適当なクセに厄介な存在を創り出すんだから厄介なダメ女神である。
「一発二百五十円の徹甲弾を食らいやがれ」
Hスナイパーの引き金を引いた。
ワズールの前脚の関節部にヒット。ガクッとなったところに一発。倒れたところに連続で三発。それでも死なないとかモクダンより生命力が高そうだ。
だが、まったく効いてないわけではない。連射に切り換えて残りを食らわせてやった。
Hスナイパーはその場に置き、VHS−2を構えてワズールへと駆け出した。
「前には立つな! 後方から突け!」
ギルドマスターが指揮を取っているようで、ワズールの正面に立たせないよう兵士たちに指揮をしていた。
オレは兵士たちの邪魔にならないよう近くの木へと登った。
高い位置からワズールへ向けて引き金を引いた。
やはり安い弾ではワズールの皮膚で防がれている感じがする。が、翼には効果があるようなので、飛んで逃げないように翼を狙って撃ち続けた。
マガジン五つ、百五十発を三分もしないで撃ち尽くすが、ワズールはまだ動いている。どんだけ生命力があるんだよ?
木から降りてマガジンを取り寄せてポーチに収め、ギルドマスターのところへ向かった。
「ギルドマスター!」
「タカト、脚を狙って攻撃を続けてくれ! ワズールは回復力が高いのだ!」
「了解です!」
生命力も高く回復力も高いとか、本当に適当に創ったのか? 人類滅亡のために創ったと思われても仕方がないぞ!
翼をばたつかせてこちらを牽制してるが、火の玉を吐くほどの元気はないようで、踏ん張ってる脚を狙って撃ち続けた。
「ギャアァアァァァッ!」
兵士たちのがんばりで最後の断末魔を上げてワズールが地に倒れた。
一瞬の静寂ののち、歓喜の声が上がった。フー。無事倒せたぜ……。
安堵はしたものの最後まで油断してはいけないと学んだ。マガジンを取り寄せてたらマガジンの一つに紙が貼ってあった。なんだ? なんかの印か?
だが、ミリエルがそんなことしていたことはないし、紙には長文が書かれている。なにか嫌な感じがする。
「ギルドマスター。すみません。これ、なんて書いてあるかわかりますか?」
兵士の指揮から外れたのか、少し離れているギルドマスターに紙になにが書かれてるのかを尋ねた。
「タカトさん。すぐに戻ってきてください。ラダリオンたちが数千のゴブリンに囲まれています。これはいったい──」
ギルドマスターの問いに答える前にホームへと戻った。
「ミリエル! なにがあった?」
「ゴブリンの王が現れたみたいです。今、山の頂上に陣地を築いています」
王だと? そんな簡単に立つものなのか?
「食料や弾薬は持っていったか?」
「はい。ミニミの弾をもっと買って欲しいとのことでした」
棚を確認すると、MINIMIの箱マガジンはすべて持ち出されており、オレの分もなくなっていた。
P90もベネリM4もなく、弾もほとんどない。総力戦とばかりに持ち出されていた。
王が立ったなら数も相当なものになるだろう。箱マガジンをさらに十箱と交換用のバレルを三つ買った。この際だから5.56㎜の弾入りマガジンをパレットで買った。もちろん、七割引きシールを使ってな。
他にもグレネードランチャーの弾と手榴弾、発煙筒、消火器を買っていった。
「ミリエル。暗くなってるがゴルグのところにいって起こしてくれ。ゴルグも連れていく」
本当は先行してもらいたいが、王がいるならバラけるのは悪手だろう。と言うか、切り開いてもらわないとオレ一人だと途中で死ぬ!
「ラダリオンが戻ってきたらオレらもいくから持ち堪えてくれと伝えてくれ。あと、通信機のスイッチは入れておくようにともな」
「わかりました。無理しないでくださいね」
「ああ。無理なんかしないよ」
ミリエルの肩を優しく叩き、マガジンをリュックサックに詰め、VHS−2Dグレネードランチャーつきをつかんで外に出た。
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