第120話 戦闘
「タカトは援護を頼む」
「わかりました。無線機は入れてください」
「了解」
カインゼルさんが櫓から下りたらオレも下り、MINIMIと箱マガジンを櫓に運んだ。
「冒険者は門を守れ! 村の者は周囲に気をつけろ! 女子供は蔵に隠せ!」
カインゼルさんがリーダーとなって叫んだ。てか、冒険者いたんだ。気がつかんかったわ。
篝火の明かりなので冒険者の姿はよく見えないが、なんか若い感じがする。元々はそれほど危険なところじゃなかったのかな?
正面の門が開き、カインゼルさんを先頭に冒険者たちが外に出た。
冒険者は八人か。特異種はカインゼルさんが相手するとしても人間側は劣勢だな。
まったく、ゴブリン駆除だけでも命懸けなのに、モクダンみたいなバケモノまでいるとか、五年も生きたヤツの凄さがよくわかる。あんたはスゲーよ。
オレも負けてはいられないと、MINIMIを構えながらLEDライトを特異種に向ける。
眩しそうに腕で遮り、こちらを威嚇するよう唸っているっぽい。
「タカト。顔を狙えるか?」
カインゼルさんから通信が入る。
「はい。この距離なら問題ありません」
特異種まで五、六十メートル。連射で撃てば大体は当たるだろうよ。
「周りにもモクダンはいるか?」
メガネをかけて確かめる。
「後方、闇の中に隠れてます。数は十以上。他は……バラけてる感じです」
村を囲んでいるようで、おそらく戦いが始まれば一斉に襲いかかってくるんだろうよ。まったく、厄介この上ないぜ。
「わかった。悪いが特異種の顔に当てたら村の援護に回ってくれ」
指示と言うより願いだった。
「今はカインゼルさんがボス。やれ、と命令すればいいんですよ。まあ、それに応えられるかはオレの力量次第、ですけどね」
それは、オレの力量を見抜けない命令を出すカインゼルさんの力量不足ですからね。
「フッ。わかった。特異種の顔を撃て!」
「了解!」
光学サイトはついてないが、五十メートルまで近づいた標的に当てられるくらいには成長した。やれる! と引き金を引いた。
三秒くらい撃つと特異種は仰け反ってしまい当たらなくなったが、血が飛び散るくらいには傷を負わせられた。
「あとはがんばってください!」
「ああ、任せろ」
VHS−2を背負い、マガジンをアポートポーチに入るだけ入れて櫓を下りた。
メガネのお陰で暗闇でも困らないが、村の者との交流がなくて誰に声をかけていいかわからない。仕切ってるの誰よ?
「モクダンが近づいてくるぞ! 警戒しろ! 火を焚け!」
どう指示していいかわからんからそう叫んでおく。
丸太の柵の間から銃口を出し、迫ってくるモクダンに向けて引き金を引いた。
血の熱が飛び散るのがわかった。
また移動して丸太の柵の間から銃口を出して撃っていく。
何度か詰まりはしたものの二百発を撃ち尽くし、MINIMIはそこに置いてVHS−2に持ち替えた。
メガネも外し、ヘッドライトとレールにつけたライトのスイッチを入れる。メガネに慣れてないせいか鼻がむず痒くてしょうがないんだよ。
LEDライトを持ったヤツがいて、モクダンを照らしているので見つけるのは簡単で助かる。
一匹にマガジン一本使い切る勢いでモクダンを撃っていき、二十分もしないで撃ち尽くしてしまった。
「これが終わったらゴブリン駆除に集中しないとな」
たぶん、千発近くは撃っている。少なく計算しても六万円の損である。
金の計算ばかりで嫌になるが、金がオレのマジックポイント(ライフメーターでもよし)みたいなもの。見て見ぬ振りはできないんだよ。
アポートポーチでマガジンを取り寄せ、チェストリグと腰のポーチに収めた。
「あとでマガジン集めないとな」
いつかマガジンを使い捨てにできる日がくることを切に願うよ。
村を一周して正面門までくると特異種は倒されており、配下のモクダンは数匹倒されていた。他は逃げたか?
「怪我はありませんか?」
「……ああ、怪我はないが、久しぶりに激しく動いたから汗だくだ……」
オレの訓練では息一つ乱さなかった人が肩で息をして滝のように汗を流していた。オレだったら確実に死んでたことだろうよ。
アポートポーチからタオルと水を取り寄せ、カインゼルさんに渡した。
ライトで特異種を照らすと、激戦だったことがよくわかる。7.62㎜でも特異種の筋肉に阻まれて皮膚を抉るくらいしか効果がなかった。
今後のことを考えたら対物ライフルも扱えるようにならないとイカンな。
「他のモクダンは?」
「見えるものは撃ちました。あとは止めを刺していきます。カインゼルさんは一度パイオニアでマガジンを補充してください。特異種でなければMINIMIで問題ないです」
「わかった。お前たちもタカトについていって止めを刺せ」
「は、はい、わかりました」
若い冒険者たちはカインゼルさんの命令に従順である。
「オレはタカト。ゴブリン駆除が本業で、ギルドマスターの計らいで準冒険者になっている。よろしくな」
「は、はい! よろしくお願いします!」
なにやらオレにまで従順である。カインゼルさんがなにか言ったのかな?
アポートポーチでLEDライトを三個取り寄せて冒険者たちに貸し出した。
「三人一組で止めを刺していこうか。二人、オレについてきてくれ。残りの組はあまり離れずお互いを確認し合うように。まだモクダンがいるかもしれんからな」
若い冒険者たちがわかりましたと頷き、モクダンの止めを刺しに向かった。
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