第118話 防衛
マガジンを補充したらまたモクダンが現れた。
「熱の反応からして十三以上、十五以下だ」
「ラダリオン。トイレにいきたいならいっておけ」
「大丈夫っ!」
と、ケツに蹴りを入れられてしまった。お前、力あるんだから手加減しなさいよ。
「タカトはもっと女の扱いを覚えたほうがいいぞ」
女の扱いと言われてもラダリオンを女と見れないのだからしょうがないじゃない。オレに女を感じさせたいなら──いや、止めておこう。なんか危険な未来が見えそうだからな。
「くるぞ!」
そうだった。恐怖を誤魔化すためにオチャラケてみたが、命がかかってるんだから目の前の敵に集中しろ、だ。
今度は一方向からの襲撃なので三人並んで攻撃を仕掛けた。
カインゼルさんからの指示がないので目の前のモクダンを仕留めていき、マガジン三本で終わらせれた。
「やはりゴブリンとは違いますね」
ゴブリンなら一発か二発で仕留められるのに、モクダンは五発以上撃ち込まないと仕留められない。一人だったら一匹でも逃げる存在だな。
「何匹か逃げていった。少なくとも百匹くらいの群れらしいな」
最初が十五匹で二回目が……十五匹か。計三十匹。カインゼルさんの読みが正しいならあと七十匹はいるってことか。オレらがこなければ村は完全に壊滅してたな、こりゃ。
「タカト、ラダリオン。わしが村に説明してくる。見張りを頼む」
渡されたメガネを受け取り、かけて周囲を探る。
「わかりました。ラダリオン。今のうちにミリエルに弾込めを伝えてくれ。あと、MINIMIを二丁持ってきてくれ」
「わかった」
ラダリオンが戻ってくるまでにマガジンを補充。パイオニアに積んである水を飲んで一息する。
メガネの性能的に熱反応を感知できる距離はかける者の視力次第、って感じで、遮るものは奇形の木だけ。充分に熱反応だけで見つけられる。
「タカト。村の連中には説明した。モクダンから魔石を取り出すからわしらで周囲を警戒する」
「了解。G3のマガジンを取り寄せておきました」
「助かる。G3はしっくりするが弾がそんなに持てないのが難点だな」
「ポーチをつければ十二本は持てますが、それだと機動力が落ちますからね、六十発で終わらせられないなら逃げることを選ぶべきでしょう」
三人で戦えば交代で戦闘継続できるが、見も知らぬ土地でゴブリンの何倍も強い相手ではそう長い時間戦ってはいられないだろうよ。
「そうだな。銃を使って少し万能感に陥っていたよ。タカトを見習って慎重になろう」
「オレのはタダ臆病なだけですよ」
「長生きするなら臆病なくらいがいいさ」
自分でもそう思う。オレには勇気も蛮勇もいらない。カッコよく死ぬくらいならカッコ悪く生き残ってやるさ。ってまあ、カッコつけたばかりにモクダンの群れと戦うことになったんだけどな!
「タカト。持ってきた」
しばらくしてラダリオンが戻ってきたのでVHS−2からMINIMIに持ち換えた。
「カインゼルさんもMINIMIに持ち換えますか?」
「いや、G3でよい。ミニミの弾ではモクダンには効き目が薄いからな」
すっかりG3を気に入ってるようだな。今度、大量にゴブリンを駆除できたらMG5(7.62㎜弾の機関銃)を買うか。七割引きシールを使えばアサルトライフルくらいの値段で買えるしな。
ラダリオンもMINIMIに持ち換え、モクダンの魔石を取り出すまで警戒をする。
「モクダン、運び込むんですか?」
埋めないの?
「モクダンは食える魔物だからな。食料とする」
この世界の食文化にどうこう言うつもりはないが、人間の女を苗床にしようってのを食う? ちょっとは禁忌を持とうよ。いくら美味くても食っちゃダメでしょう。
「あれは焼くと美味しいと思う」
あれ? ラダリオンも食べる気だ! ここでは当たり前なことなの?! オレは食わないよ!
モクダンを村に運び込む頃には辺りは暗くなり、メガネは外してヘッドライトをつけた。
モクダンを村に運び込んだらパイオニアも村に移動させる。
魔物がよく出るからか、村は丸太の防御柵で囲まれており、三メートルくらいの櫓もいくつか建てられていた。
村はバズ村のように建物がCの文字に並んでおり、真ん中に家畜や近隣住民(今は避難民か?)が荷物を抱えていた。
「街から兵士が助けにくる、なんて希望はありますか?」
「かなり薄い希望ならな。まあ、明日には冒険者がやってくるだろう。リハルの町は冒険者が多いし、モクダンなら魔石も取れるからな」
お前らでなんとかしろか。辺境伯は本当に統治って意味を知らんようだな。
「冒険者がくるなら無駄に狩らないほうがいいですかね?」
せっかくきたのにくたびれ儲けでは次回、駆けつけようと言う気にはならんだろうよ。
「そうだな。明日まで防衛すればよいだろう。村人も活気づいたし、食料も手に入った。わしらは非常事態が起こったときに動けばよい」
「それはなにより。夜の仕事は勘弁して欲しいですからね」
明日もゴブリン駆除をしなくちゃならないんだから疲れを持ち越したくないよ。
「そうだな。まあ、わしがついとるから食事をしてこい。あ、ライトを貸してくれ。篝火では近づかれてしまうからな」
と言うことで、あるだけのLEDライトとポータブル電源、G3のマガジンを二十本、食料をセフティーホームから持ち出し、パイオニアに置いた。
「じゃあ、食事して少し休んだら戻ってきます」
「ああ。ゆっくりでいいからな。無理に戦うつもりはないからな」
「了解です。ラダリオン」
「うん」
先にラダリオンを戻らせ、少し時間を置いてオレもセフティーホームに戻った。
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