第47話 新装備
ラザニア村の外にオレらの土地を貸してもらった。
一応、ここはコラウス辺境伯の領地。村の外でも村のものと言う扱いらしい。
オレらにはセフティーホームがあるが、人と繋がりを持つには居場所は必要。ここに住んでますよって知らしめるためにここを借りたのだ。
セフティーホームがあるとは言え、そこになにもないのはアレなので、ゴルグたちに小屋(巨人から見て、な)を建ててもらい、巨人相手に貸し出し屋的なものを行うことにした。
「いい斧だ」
「こっちの道具もいいぞ。これがあれば細かい作業もできるな」
斧や鉈、ノコギリやノミ、ハンマーなどを壁にかけ、一日銅貨一枚、千円くらいで貸し出すことにした。
一日千円が安いか高いかはわからんが、巨人たちには概ね喜ばれ、借りていく者は多い。もちろん、売ってくれと言う者もいたが、魔法がかかっていると言うと諦めてくれた。
この世界の魔法はそれほど説得力があるのか。どんなのがあるか知っていたほうがいいかも。放たれたときは死んだとき、なんてなったら嫌だからな。
「と言うか、ここだと人がきて危険だな」
セフティーホームから出てきていきなり踏み潰されるとか笑えない死に方だ。貸し出し業はゴルグにやらせるか。わざわざ村の外に出てくるのも面倒だろう。消える前にラダリオンに触ってもらえばいいしな。
ロミーさんとも仲良くなれたようだし、挨拶にいったときに触ればラダリオンも苦にはならないだろう。
ゴルグと話し合って貸し出し業の委託を了承してもらい、小屋には用があるときにだけきてもらうことにした。
と言ってもオレはゴブリンを駆除しなきゃ金は入らない。ここ数日駆除にもいけなかったのでマイナスになるばかり。こちらの金を稼いでも弾一つ買えないのだ。
元の世界の料理を知った今、ラダリオンの舌はこちらの料理を受付けない。オレが小屋のことで気を取られている間にもゴブリン駆除に勤しんでいる。会うのはセフティーホームだけってくらいだ。
村を回って人間の区画に向かうと、門があって門番らしき兵士が立っていた。
「どうも。数日前から村の裏に住み始めたタカトです。中、入れますか?」
「ああ、あんたがゴブリン駆除をしてるってヤツか。村長から聞いてるよ。好きに入ってくれ」
「ありがとうございます」
軽く会釈して村へ入った──と言うか坂を登ってから村へ入る。
「意外と人が暮らしているんだな」
巨人のほうしかいってないし、高台になっていたので人間の区間がどうなってるかわからなかったが、三十以上の家屋が建っており、村と言うより町な感じだった。
「風車とかあるんだ」
思った以上に異世界は発展しているみたいだな。
村の人はオレが住み着いたことを知っており、いろいろと声をかけてくれ、村長の家を教えてくれた。
村長の家は石造りで二階建て。一メートルくらいの石垣に囲まれており、茶と黒の羽を生やした鶏が放し飼いされていた。
「すみませ~ん。村長はいますか?」
呼び鈴がないので玄関から声をかけると、若い男が出てきた。
「これはタカト様。申し訳ありません。父は街にいっておりまして留守にしております。なにかありましたか?」
父と言うことは息子か? 孫じゃなくて?
「いえ、そろそろゴブリンの駆除を始めようと思いまして、そのご報告に。広範囲にいるゴブリンを駆除するとなると二、三日は帰ってこれませんので」
「そうでしたか。ゴブリンには本当に悩まされているから助かりますよ。冒険者に頼もうにも報酬が安くて誰も受けてくれませんから」
「そのようですね。こちらとしては取り分を奪われなくて助かります」
「しかし、ゴブリンを狩って儲けになるので? なんの役にも立ちませんが」
「そこまで儲けは出ませんが、元締めから質のよいものが買えます。この服もそうで大きな街でも売ってません。まあ、大魔法使い様の力で転売することはできませんがね」
そう言うことを常に言っておく。寄越せと言われても困るので。
「もし、ゴブリン駆除員になりたい者がいたら声をかけてください。請負制度があるので小遣い稼ぎくらいにはなると思いますよ」
「皆に声はかけときますが、やろうと思う者はいないでしょうな。ゴブリンを狩るのは手間ですから」
ゴルグも言っていた。ゴブリンを狩るくらいなら猪や鹿を狩ったほうが金になるって。
「まあ、ゴブリン駆除員は成り手がいない商売。元締めも嘆いていますよ」
「ハハ。冒険者ギルドも同じです。誰も受けてくれないと。だからタカト様のような人がきてくれて助かります」
「まあ、ご期待に沿えるようたくさん駆除してきますよ」
そう言ってお暇させてもらい、森に入ってからセフティーホームに戻った。
いちいち手間ではあるが、村ではマチェット装備にして、ゴブリン駆除になったら装備を換えることにしたのだ。面倒事になるまでは。
新しく買ったFN−SCAR−L(サプレッサー+スコープつき)にし、チェストリグにグロック装備のベルトをつけた。
その上からギリースーツを纏い、網つき帽子を被った。
「冒険者に見られたら退治されそうだな」
そうならないよう注意していきましょう。
よし! と気合いを入れて外を確認。外に出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます