第17話 コロニー

 ゴブリン駆除は順調だった。


 もう春と言っていい気候なので、巣に閉じ籠っていたメスや子もエサを探しに出ていて巣ごとの駆除はできなくなったが、ブービートラップはおもしろいほどにかかっていた。


「三日で六十万円か」


 とは言え、こんな順調だからこそ問題は起こるもの。ゴブリンの気配が変わった。


 これは、恐怖、か?


 距離にして一キロか? ゴブリンが逃げ出した。


 一匹二匹とゴブリンの気配が弱まり、次々と消えていく。


 同時くらいに気配が弱まるところからしてゴブリンを襲ってるのは複数体。群れで行動してるヤツだ。


 すぐにセフティーホームに戻り、クーラーボックスに入れた処理肉を取り出し、外に出る。


 近くの木にブービートラップを二つ仕掛け、ゴブリンが密集しているほうへと駆け出した。


「まったく、弱肉強食なところだ」


 ゴブリンは今も襲われているようで、気配が次々と消えていた。


 三十分ほど駆けると、手榴弾が爆発する音が聞こえた。さらにもう一つ。ちゃんと引っかかってくれたようだ。


 またセフティーホームに戻り、シュールストレミングを持ってくる。


 ナイフで刺して、周囲にバラ撒く。そしたら、セフティーホームに戻った。


 窓から外を伺うが、なにもやってくることはない。十分二十分と時間が過ぎても現れるものなし。シュールストレミングの悪臭に逃げたか?


 一時間待って外に出てみる。臭っ!!


 鼻をつまみながらゴブリンの気配を探ると、あちらこちらと恐怖色に染められていた。


 気配が消えないところからして襲撃者たちは立ち去ったようだな。


 ブービートラップを仕掛けたところに戻ると、栗色の狼が三匹、血を流して息も絶え絶えだった。


「普通の狼だな」


 大型犬くらいのサイズで、元の世界の狼との違いを見つけるのが難しかった。


「お前らを殺したところで一円にもならんが、これも弱肉強食。死んでくれ」


 弾がもったいないのでマチェットで狼たちの息の根を止めてやった。


「アイテムボックスがあれば、冒険者ギルドで驚かれたりするんだがな」


 セフティーホームに運び込めないこともないが、死体を入れる趣味はない。ブービートラップとして有効利用するとしよう。


 三匹に仕掛けたらこのコロニーからはおさらば。また山を越えた。


 ゴブリンの気配はあるが、狼がいるところなどゴメンである。安全な場所で安全な駆除を。それがオレのモットーである。


 三日ほど山を踏破したら道に出た。


「道だ!! とうとう道に出たよ!」


 苦節二ヶ月。やっと人の痕跡があるところに出たー!


「なんだ? 盗賊に襲われるお貴族様の馬車がきちゃったりするのか?」


 なんてお約束などまるでなし。それどころかこの五日、人一人も出会ってねーよ! 廃道なのか、ここ?


「畑とかもないし、逆だったか?」


 ついゴブリンがいる方向に歩き出してしまったが、よくよく考えればいないほうに住んでるよな? 選択ミスったよ!


 それでもゴブリン駆除しないと金は入らない。人には会いたいが、金が入らないと詰むのだから駆除を第一にしろ、だ。


「ん? ゴブリンの群れ?」


 これまで多くても十二匹だったのに、今、探知に入った群れの数は四、五十匹はいる。コロニーとは違う反応だ。どうなってるんだ?


 警戒しながら進むと、出歩き隊もちらほらといるのを感じた。


「新手のコロニーか?」


 なら、このまま進むのは得策じゃないな。周囲にブービートラップを仕掛けるとしよう。


 出歩き隊を回避しながらブービートラップを仕掛けていくと、最初のが発動した音がした。


「今ので四匹か」


 さらにさらにで十二匹を駆除できた。


 四つで止めておき、ブービートラップで怪我をしただろうゴブリンに止めを刺しに戻った。


「計二十三匹か。出歩き隊、結構いるな」


 察知範囲内にはまだ十数の出歩き隊がいる。それらを慌てずがっつかず駆除していき、出歩き隊を確実に駆除していく。


 まあ、そんなことやっていけばゴブリンも学ぶと言うもの。ブービートラップにはかからなくなり、警戒や恐怖でコロニーに固まるようになった。


 大体、四十匹だろうか? これまで八十匹近く駆除したので百匹以上の群れだったんだろうな。


「巣の駆除よりは手間はかかるが、いい練習にはなるか」


 あれはボーナスタイム。これからはこれが当たり前になってくるんだろうよ。


「他もコロニーがあるっぽいし、しばらくここで練習に励むのもいいかもしれんな」


 ここにきたときよりは体力は上がったが、それでもまだまだ軟弱。軍隊に入ってもひーこら言うていどだ。一日五匹も駆除したらマイナスな生活にはならんだろう。貯金も八十万はあるしな。


 そして、コロニーに制圧に向かったら、そこは村だった。


 いや、廃村になったところにゴブリンが住み着いた、って感じか。


 廃れた感じからして数十年は経っているか? 崩れている家がいくつかあるが、何軒か石造りの家もある。そこを住処としているんだろうよ。


 ゴブリンの気配は二ヶ所に分かれている。一つは三十匹くらいで、もう一つは十二匹。なんで分かれているんだ?


 一時間くらい隠れて見てるが、ゴブリンは外に出てこない。籠城か?


 まあ、なんにせよ。閉じ籠っているならありがたい。スタングレネードを使ってみたかったのだ。


 試しにと千五百円のを二つ買い、村へと突入した。

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