第11話 ブービートラップ

「なんだ? ゴブリンのコロニーにいきついたのか?」


 出歩くゴブリンの気配を探ることに集中してたから流していたが、気配の固まりに切り替えたらあちらこちらに巣があった。


 まあ、あちらこちらと言っても巣と巣の間は数百メートル離れており、山の斜面にあるのが多かった。


 手榴弾攻撃を始めてから五日。二十以上の巣を爆破し、五十万円くらい稼いでしまった。もちろん、手榴弾費と食費、日用雑貨、衣服とで実質三十万円くらいだが、二、三万円を必死で稼いでいたあの頃がなんだったんだと思うぜ。


「この山だけで三十はあるぞ」


 ゴブリンの気配を一つ一つ潰していったら巣が密集しているところに辿り着いてしまったのだ。


 移動が楽になって助かるが、エサを探しに出ているゴブリンも多かった。 


 今なら十匹くらい現れても冷静に撃ち殺せる自信はある。だが、十一匹以上は戦略的撤退を余儀なくなる。


「……これは、作戦を考える必要があるな……」


 まずは出歩いているゴブリンを駆除するために、少し離れた場所に二キロの処理肉を広範囲にバラ撒き、脚立を使って木に登る。脚立はロープを使って引き上げます。


 しばらくして処理肉の臭いを嗅ぎつけたゴブリンがわらわらと集まってきた。その数三十匹以上。多すぎだぜ。


 ここのゴブリンも飢えているようで、オレに気がつくことなくバラ撒いた処理肉を必死に貪り、いくつかを抱えて去っていった。おそらく、自分の巣にいるメスに運ぶのだろう。


「そう言う習性があるんだな」


 まあ、メスがいて子を宿し、オスがエサ探しをしていたら至極当然辿り着く答えだろう。


 気配に集中すると、オスのゴブリンは固まっている気配に混ざった。


「もう二、三回やればゴブリンも油断するな」


 今日はこれで終わり、次の日は五十メートルくらい離れて処理肉をバラ撒き、また木に登って様子を見る。


 十五分くらいしてゴブリンが集まってきた。


 今回は軽く見ても五十匹くらいだろうか? 周りに誘発されて集まったのだろうか?


 処理肉は二キロだけなので、ゴブリンによる奪い合いが開始され、弱いゴブリンは伸されたり噛みつかれたりと戦線離脱させられた。


 二分もしないでゴブリンはいなくなり、伸されたゴブリンが三匹だけ残された。


 木を下り、伸されたゴブリンをマチェットで始末した。


「共食いはしないんだな」


 まあ、処理肉に夢中で共食いをしなかっただけかもしれんが、ゴブリンが共食いしようがどうでもいい。勝手に食われろだ。


 ラッキーにも一万五千円を稼げたので、今日はカツ丼大盛りに担々麺をつけようっと。


 そんでもって次の日。外に出たらゴブリンの気配が大量に固まっていた。


「どんだけ集まってんだよ!?」


 すぐにセフティーホームに戻り、作戦変更をした。


 処理肉を追加で買い、買い置きしていた土嚢袋に詰め込んだ。


 五つの土嚢袋の縛り口に手榴弾をビニールテープでしっかりと縛りつけ、ピン同士を釣り糸で繋げた。


「よし! やるぞ!」


 土嚢袋を一纏めにつかみ、外へと出る。


「結構集まってるな」


 昨日の場所から三百メートルくらい離れててよかった。


 その場所に土嚢袋を丸くなるよう配置し、焚き火を起こし、処理肉を少し放り込み、残りは適当にバラ撒いた。


「ん? もう嗅ぎつかれたのか?」


 風で臭いが流れたのか、ゴブリンの気配が団体で移動してきている。


 すぐにその場から逃げ出し、百メートルくらい離れて大きいな木の陰に隠れた。


 相棒を握りながら待つと、手榴弾の爆発が聞こえた。


 五つ聞こえたかまではわからないが、二発は聞き取れた、気がする。


「……六万五千円が入ったか……」


 ってことは十三匹か。思いの外倒せなかったな。だが、何十もの気配がその場から動いてない。二十匹以上は逃げられたけど。


 相棒を構え警戒しながら戻った。


「グロ耐性があってよかったな」


 でなかったらリバース祭りになっていたことだろう。R18な惨状である。


「手榴弾、エゲつないな」


 死ななかったゴブリンたちの無惨なことよ。痛みで涙や涎を流し、ギーギー喚いている。


「まあ、なんとも思わないから無慈悲に殺すんだけどな」


 ゴブリンの頭に弾丸を撃ち込んでいき、浅い傷だったのか、フラフラと逃げていくゴブリンのあとを追って背中に弾丸をぶち込んでやった。


 新しいマガジンに交換してさらに追うと、先で爆発が起こった。


「爆発しなかったのがあったか」


 まっ、早々上手くいくわけもなし。離れたところで爆発してくれてよかったと思い、次に活かしましょう、だ。


 今ので一匹だけ。強いヤツか小狡いのが死んだのだろう。


 手榴弾で死んだのが十三匹。怪我したのを撃ち殺したのが十六匹。で、最後に一匹。ぴったり三十匹。締めて十五万円也。三日の稼ぎとしては上等だろう。


「明日は休みにするか」


 鈍らないために少しは体を動かすが、ゴブリン駆除は休みにする。まだ週一で休めるほど稼げてないが、いずれは週休二日、夏季冬季に長期休暇できるようにしたい。オレのゴブリン駆除ライフはブラックにはしないのだ。


 安全のために一キロほど離れてからセフティーホームへ帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る