第6話 落とし穴作戦
さあ、やるぞ!
と、意気込んだものの、三日もゴブリンを狩れませんでした~。
「クソ! 単独で動けよ! 群れんじゃねーよ!」
体力と気配察知を強化が主な目的だから狩れないことも想定したが、どこかで甘いことを考えていた。一日一匹はイケるんじゃね? って思っていた。オレはどこまでも愚かだぜ。
「ゴブリン、仲いいな」
あのときのゴブリンは
「ダメだ。このままでは詰むぞ」
これは早々に戦術を変える必要があるな。
「うーん。ここは古典的な落とし穴か?」
この三日、ただゴブリンのケツを追っていたわけじゃない。ゴブリンの習性や生態も探っていた。
まあ、大したことはわからんが、あいつらは常に集団で行動し、一日の大半を食料探しに費やし、木の根、虫などを食っていた。
死肉はラッキーなものだったのだろう。この三日、ゴブリン以外の魔物は見ていない。唯一見たのはカラスっぽい鳥だけだった。
「やっぱり、これはチュートリアル的な状況なんだろうな」
弱いところとダメ女神も言っていた。だから間違いはないだろう。そうなれば今のうちにレベル(技術的にな)を上げておかないとダメだろう。
「よし。落とし穴作戦発動だ!」
スコップ千円と脚立千二百円はキツいが、スコップはいずれ役に立つもの。持っていても損はないと、土の柔らかそうな場所を探した。
いい場所があったらそこに決め、穴を掘ること二日。手には豆ができて筋肉痛にもなって、三日目は寝て過ごした。
「準備金が四万円を切ってしまった」
ポジティブにならないとわかっていても不安がつのってネガティブ沼に嵌まっていくぜ。
痛む体に鞭打って四日目には枝を削って穴の底に刺す。あと、壁にも斜め下に向けて刺しておく。
「二メートルの深さもあれば四匹の群れなら問題なかろう」
これだけ苦労して四匹は割に合わないが、今のオレにはこんなことしか思いつかないのだからしょうがない。
「クソ。無能な自分が憎い!」
涙を流しながら串を刺し、枝葉で穴を塞いだ。そこに一キロ五十円の処理肉をバラ撒いた。
さらに一キロの処理肉を袋に入れて担ぎ、ゴブリンを釣るために気配の多い場所へと向かった。
ゴブリンの嗅覚はそれほどよくないみたいだが、これだけの肉なら嗅ぎつけるだろう、と言う希望的観測を胸にがんばった。
あのダメ女神でない神様がそんなオレのかんばりを認めてくれたのだろう。ゴブリンの気配がこちらに向かってくるのを感じた。
「いや、釣れすぎ!」
八匹、いや、十匹以上はいるな! 物凄い速さで追ってくるよ!
「クソ! 上手くいかんな!」
まだ痛む筋肉に鞭を打って走り、落とし穴の前に処理肉を投げ、ゴブリンの姿が視界に入ったらセフティーホームに入った。
セフティーホームにいるとゴブリンを殺したかどうかわからない。なので五分くらい過ぎてからマチェットを抜いたまま外に出た。
落とし穴から十メートルは離れたので出たところは見られてないと思うが、すぐに木の陰に隠れた。
「……四万円が入ったか。苦労した甲斐があると納得しておこう……」
金はとりあえず置いておき、耳を澄ますとギーギーと鳴き声が聞こえた。必死な叫びである。
気配は四つ。どれも気配が薄くなりつつある。
木の陰から出て近づくと、穴の中からだった。
「二匹は逃したか」
一目散に逃げていく気配があった。
恐る恐る穴を除くと、串刺しになった血まみれのゴブリンがいた。
当たり前と言えば当たり前だが、落とし穴作戦は成功だった。
「いや、大成功だな」
落とし穴が未だに使われる意味がよくわかったよ。
「埋めておくか」
生き埋めすることになんら罪悪感もなし。こいつらの腐臭で強力なのがよってくるほうが怖いわ。
えっせらほっせらと掘ったときの土を集めてゴブリンを生き埋めにしてやった。
「おっ、二万円が入った。計六万五千円ゲットだぜ!」
リアルポ○モン世代でごめんなさい。
「しかし、四日で六万五千円か。日割りにすると一万六千円くらいだな」
無収入の三日を足して割っても九千円ちょっと。食費や経費引いても七千円。まずまずの成果と言っていいだろうよ。
「場所を変えてやればもう一回イケるな」
ゴブリンの気配はまだ感じるし、数十匹固まった気配もある。飢えている様子でもあるからあと一回は確実だろう。
今日はこれにて終了。脚立とスコップを持ってセフティーホームに戻った。
「玄関、もうちょっと広くしないとな」
元の世界のものを買うにはセフティーホームでしかできない。これからも必要なものは増えていくだろうし、ガレージ的な玄関にしたいな。
ここのゴブリンを駆除し終えたら次の場所に移動しなくちゃならない。砂漠とか平原とかあったらバイク(中型免許持ってます。乗ってたのはスクーターだけど)とか欲しくなる。広くする必要はあるだろうな。
「まっ。とりあえず、今日は美味いもん食ってビールを飲もうっと」
明日のために鋭気と体力を回復させましょう。
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