ダメ女神からゴブリンを駆除しろと命令されて異世界に転移させられたアラサーなオレ、がんばって生きていく! 1
タカハシあん
第1章
第1話 *異世界へ転移*
「パンパカパーン! 一ノ
明日も仕事だと万年床に入ったはずなのに、なぜか目の前に女神然とした女がいて、そんなことを言いやがった。
「……え? はあ? ゴ、ゴブリン駆除員……?」
「なんならゴブリンスレイヤーでも構いませんよ」
「いや、それはいろんな意味でアウトだと思うんだが」
名称もそうだが、あんな壮絶な人生になるなど御免である。こちとら普通の工場作業員。高校を卒業して十二年勤めたアラサーである。中型犬とガチバトルしても勝てない自信があるわ!
「そうですか? カッコイイと思うのに」
カッコイイだけで職業選択したくない。給料が安くても安全安心な暮らしをしたいよ。
「うんうん。普通でなにより。ゴブリン駆除員にはちょうどいいわ」
「いやいやなにがちょうどいいんだよ! やらせるなら格闘技経験者とか自衛隊員にやらせたらいいじゃん! ゴブリンがどんなもんか知らんが、一匹でも殺される自信があるわ!」
「いや、強い人は魔王軍を倒してもらって、あなたのような普通の人に増えすぎちゃったゴブリンを駆除してもらいたいのよ」
「なぜ普通にやらせるんだよ? すぐ死ぬぞ」
「その辺は大丈夫。すぐに死なれても困るからそれなりのサポートはするから。身体能力もちょびっと向上させるし、ゴブリンに限り罪悪感をなくしてグロ耐性をつけてあげるわ」
罪悪感とグロ耐性はありがたいが、身体能力をちょびっとってのがこの女神然とした女の存在を示しているかのようだった。
「やらせるなら現地のヤツに任せたらいいじゃないか」
「うーん。何度かやらせてみたんだけど、ゴブリンって食べられないし、有益な材料にもならないし、奴隷にもできないから避けちゃうのよね。ゴブリンも強いヤツがいるとすぐ逃げちゃうし」
まさに害獣だな。
「そうそう。繁殖力も強いし、雑食だし、群れるしで本当に参っちゃうわ。テキトーに創造したのになんであんなに厄介になったのやら」
お前が原因かい! ならお前がなんとかしろよ!
「いやー、そう思ってゴブリンでも食べちゃう狼を創造したらそれも増えちゃって、さらにさらにで生態系メチャクチャ。異世界の知識を参考に冒険者制度を創ってみたけど、ゴブリンだけは駆除できなかったのよ」
下手くそか! もうそんな世界壊せよ!
「うーん。実は三回はやり直してるんだけど、どうにも上手くいかないのよね。なんでかしら?」
向いてないからだよ! 一回目で気づけよ! 命がもったいないよ!
「わたしもそうかな~っては思うけど、天地創造は神としての必須過程。知的生命体が一万年生存できたら合格なのよ」
スケールがデカいのか神がアホすぎるのがよくわからんな……。
「四回目でやっと五千年の壁を突破できたのよ。だからゴブリンごときで失敗したくないの。だからちょびっと反則だけど、人口の多い世界から可もなく不可もない存在を投入するの。いい考えでしょう?」
オレでなく、創作物としての話ならいいと思うが、やらされる者としては頷けんわ。
「もちろん、ゴブリンを駆除してくれるならご褒美は出すよ。一匹に対してあなたの世界のお金にして五千円の報酬を与える。そして、稼いだお金であなたの世界のものを買えるようにしてあげるわ」
まさに駆除員だな。いや、駆除作業料がいくらか知らんけどよ。
「なにか魔法的な武器とかもらえるのか?」
「魔法を使える世界ではあるけど、まだ魔法の道具は発明されてないから無理。自らの力で発展させないとダメだからね」
反則するならそこにやれよ。もしくは火薬の製法を教えてやれよ。
「それ、二回目でやって失敗しちゃったのよ。まさか千年で核を作り出すなんて思わなかったわ。あれには驚いたっけ」
神って全知全能じゃないのかよ?
「あなたから見れば神の力はそう思えるでしょうけど、いろんな力が干渉すると神ですら予測できないことが起こるのよ。あなたの世界だって数十回と文明が滅んでいるんだから」
その真実、ネットに拡散したい! いや、文明が滅んでいるのは知られてることか。
「だからゴブリン駆除、よろしくね」
「だが、断る!」
「あ、あなたに選択肢はないから。可もなく不可もない存在を選んだと言ったでしょう。あなたの存在が消えても世界システムが調整してくれるから問題ナッシング。やることは決定です」
「お、横暴だ!」
「神とはそう言うものです。諦めてわたしの話を聞きなさい」
ク、クソ! オレはなんてちっぽけな存在なんだ!
「細かい情報やあちらの言語は頭に入れておいてあげる。あと、最初は弱いゴブリンがいるところにするから。がんばって三年くらいは生きて、たくさんゴブリンを駆除してちょうだいな」
はぁ? 三年? もしかしてオレ、使い捨て?
「大丈夫大丈夫。前の人は五年は生き抜けたから」
「さ、最低では?」
「半年かな? まったく、五十匹も駆除できないんだからハズレだったわ」
ダメだ。なに一つモチベーションが上がらない。
「では、一ノ瀬孝人さん。もし、あなたが五年生きられて三千匹駆除できたら一億円に匹敵するボーナスを与えましょう。がんばって~」
意識がパンと消え、オレはなにもない空間で目をさました。
「……ク、クソがっ! ふざけんなぁぁぁぁっ!!」
2021.11.21(金)
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