第80話 漁船の手伝い
今日は漁師のお手伝いをすることになった。もちろん、泳げる奴だけでだ。ノンナとサザナミは別の依頼へ向かう。
やることは、荷下ろしと漁船の操作、網引き等を手伝う事になった。今日の予定は午前は漁船に乗って漁の手伝いをし、昼食をはさんで午後には港の手伝いと漁船の雑用を行うことになる。
という訳で、船に乗っていざ沖合の漁場へ。
「おい、新入りお前もオールの方を手伝え」
「はいっス」
漁師よりも冒険者の方がパワーはあるのでこういう時は力仕事を任される。
俺達は漁師の指示に従って右と左でオールを漕ぐ。曲がるときは右と左で強弱付けて漕がないとだよな。
「1・2、1・2」
「1・2、1・2」
「1・2、1・2」
「面舵」
「1・2、1・2」
「1・2、1・2」
「1・2、1・2」
「取舵」
「1・2、1・2」
十数分して沖の方の漁場に辿り着いた。何が獲れるかな。
「籠を入れるぞ。手伝ってくれ」
「あいあいさ~」
おもりの方を下にして籠を投げる。全体で20個ほど網を投げ入れたら。群れを探して、地引網の様に網を引っ張っていく。この漁は月一で違う漁師がやる大きな漁だという。さらに運が悪いと大物が網を突き破る事もあるとか。今日はそんな事もなく順調に網の引き上げは終わった。そうしてお昼から少しした後にようやく帰投することになる。行きと同じ様にオールを漕ぐことになる。別にはつかれてはいないが、生きてる奴等は疲労が溜まってんのか疲れた表情で漕いでいる。
疲労もあってか皆、漕ぐのが遅い。あんまり早すぎても、迷惑をかけるので程々に合わせる。それを見越してか、行きは漁の準備で忙しかった漁師も帰りの速度を維持する為にこっちに合流してくれた。
『おい、魔物が出た! スピードを上げろぉ!』
伝声管から声が響いた見張り役の人間らしい。俺は両側のオールを掴んで全力で漕ぐ。ここで船底にでも穴をあけられたら水死体になっちまう。水中戦なんてした事ねぇし。
ドオオォォン――!!!
衝撃が響いた。追いつかれたか。それとも対して進んでねぇのか。
「オールを引っ込めて甲板に来い! 交戦するぞ!」
甲板にいた魔導師たちのまとめ役が声をかけてきた。乗り込まれたか、かなり近くに接近されたのか。どっちにしろ、近接ができる奴を持ってこざるを得ないのか。取りあえず、俺達は指示通りにオールを引っ込めて、武器を持って甲板へ向かう。
そこにはハリセンボンの様な棘の生えたマグロが薄い膜に弾かれている光景があった。魔導師たちが止めてるうちに突っ込んでいく奴を切り倒せばいいのか?
手慣れた様に漁師が鉤フックを操って甲板に棘マグロを叩きつける。成程獲れる奴は取って来いってか。襲撃犯はニ十匹、他には居なさそうなので俺も鉤縄を自分の肉体で作る。
「ウリャ!」
狙いが必要だけど案外簡単だなポコポコとれる。十匹とると棘マグロも作戦を変えてきた。船底に向かって突撃していた奴等が船の周りを回り始める。数秒意味を考えていると船底から甲板を貫かれた。竜骨は無事そうだけど、マジか。
「魔導師たち、帆に風を与えて速度出すぞ!」
纏め役が号令をかけると全員が魔力を集中させて風魔法を帆にたたきつける。風を受けて船は再度速力を上げて突き進む。
「異常事態だ。逃げるぞ!」
船長が声をかける前に撤退していく。数人は船底の穴を塞ぎに行った。残った俺達はまだ追ってくる棘マグロに積んであった石を投げつける。
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