第78話 港町の噂

 用事が済んだら、サザナミと宿に戻った。他の奴等には多めに金を渡したのでまだ遊んでいるのかもしれない。


「それ、どうするんです?」

「俺の中に入れて置く」

「大丈夫なんです?」

「呪いは意味ねぇしな。それよりもお前らがうっかり掴んだりしても困る」

「それもそうか」


 解呪とか出来るかな? 


“サポートさん。こいつを安全にする方法ってある?”

“検索完了。ご主人様の中に入れて置けば呪いがご主人様の方へ溶けだしていきます。加えて、呪いを受け止めればご主人様は進化することが可能です”

“屍兵士から進化できるのか。しかも、この呪剣の解呪もできる。一石二鳥だな”


 いい買い物だった。仕入れ値は十万エルだったらしいが、それを三万で手に入れられるとはいい買い物だった。


「ただいまー」

「ただいま」

「ただいまです」


 三人帰ってきた。この剣の事はしっかり伝えて事故は防がないとな。

 それと、今度の進化で味が感じられる様になると良いな。


❖  ❖  ❖


 宿の食堂で食事をしていると迷宮の話について聞こえてきた。


「話題の迷宮について知ってるか?」

「ああ、知ってる。三番目の友好的なダンジョンになる予定だっていう」

「今んとこは死者は確認できなかったんだけどよ。そこで負けた奴の末路が悲惨だって話だぜ」

「聞かせろよ」

「何でも三十階は降りてった奴等は馬鹿みたいに強い擬態系の魔物に襲われたらしい」

「死んでねぇんだろ儲けもんじゃねぇか?」

「ここからが面白いんだよ。負けた奴等は武器と防具が壊されたらしいんだが、気が付いたら防具は修理されてたけどそれがまぁ面白くてな。これは実際に見てもらった方が面白いんだけど、修理された防具が面白いんだよ。犬みてぇな鎧だったり、娼婦みてぇだったり、普段着みたいだったり面白れぇんだよ」

「ふーん、お前は見たのか?」

「ああ、此処とは正反対の街の迷宮で起こった事だが、一見の価値ありだぜ」

「お前がそう言うんだったら見て見てぇな」

「しかも、暫くその防具を着ていないと他の服は弾け飛んじまうらしい。あいつ等そこそこ偉い冒険者だったらしいからなプライドなんてボロボロだぜ」

「というか、そんなことができる迷宮の方が怖いな。その迷宮は友好的なのか?」

「ああ、一応、ギルドの職員を呼び出して取引しているみたいだぜ」

「……うちの国は大国の中でも友好的な迷宮が無かったしな。これで外交とやらも有利に進められていくんじゃね?」

「ま、そこが俺らにとっていい物になる事を祈るだけだな」


 どうやら俺達の迷宮が噂になっているらしい。今後も変態装備を量産しておかなくては。

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