第1話 冒険の始まり
僕は、村の皆の見送りをうけ早朝に出発した。
今日出発すれば丸一日かけて王都にたど着く。
その後王都で一泊すれば王からの招集の日だ。
村の反応は様々だった。期待するものや絶望するもの。
でも、気にはならなかった。
それよりもグラント王に呼ばれた理由を早く知りたい気持ちが勝っていた。
お父様は別れの際に少しのお金と、
「お前ならどんなことが起きても大丈夫。ワシの息子だからな」という嬉しい言葉と
お母様からの熱い抱擁と
「気を付けて行っておいで。必ず無事に帰ってくるのよ」という心が落ち着く言葉をもらった。二人の言葉が僕の不安を消してくれた。
この二人の子供に生まれてよかった。
「お父様、お母様ありがとうございます!村の皆も良い報告待っててね!それじゃ、行ってきます!」
こうして僕の王都への旅が始まった。
旅といっても、王都への道のりは一日あればついてしまうし、お父様と何度か行ったことがあるのでなんの不安もなかった。
初めての一人旅の道中を楽しんでいたが、途中の森に入った時に事件は起きた。
「誰か助けて!」
誰かの助けを求める声が聞こえた。
お父様から「困っている人がいたら人間だろうと魔族だろうと助けなさい」と教わっているのですぐさま声の方に駆け付けた。
そこにはオークに迫られている一人の人間の少女の姿が見えた。
「どうしたの!大丈夫?」
「お願い!助けて!」
僕はすぐさま少女の前に飛び出した。
「やめてください!彼女に何する気ですか!」
「ソノコ ヒトリ アブナイ オデ マモロウトシタダケ」
どうやらオークは森の中で見つけたこの少女が一人で歩いているのを見つけ、
無事森を抜けられるよう保護しようとしただけのようだ。
僕は少女の方を向き、
「大丈夫、このオークは君を守ろうとしてたみたいだから何もしてこないよ」
「嘘よ!だって襲われそうに・・・。えっ、あなたこのオークと話せるの?」
まあ、僕の村は魔物と共存する唯一の村なわけだから当然オークと話すこともできる。村にはオークだって、ダークウルフだっているんだからなんてことない。
むしろ、普通の子は魔物と話せないのか。と僕は初めて知った。
村の事を話そうかと思ったが、彼女がより混乱しそうなのでやめておこう。
「たまたま勉強してたんだよ。ところで君はこんなところで何をしてるの?」
「私は今から王都に向かっていたの。あなたもここで何をしているの」
「僕も王都に向かっていた途中です。僕はスピカ。せっかくなので一緒に行きませんか」
「そうね、あなたは魔物と話せるみたいだし一緒にいた方が安全ね。私はサクラ。よろしくね」
そう言って彼女が握手を求めてきたので僕は彼女の手を取り一緒に王都まで向かうことにした。
森の出口までオークは見守ってくれていた。サクラは最初はビクビクしていたが、オークが何もしてこないことがわかると彼女も次第に慣れていたようで、最後には恐る恐る手を振っていた。
それにしても、村の外の人と話したことはなかったけれどまさか魔物と話せないとは思わなかった。
しばらく二人で歩いていると、ようやく王都が見えてきた。
道中、サクラと話していると彼女も僕と同じようにグラント王に呼ばれていることが分かった。
「それにしてもなんの用で呼ばれたんだろう」
「サクラも何も聞いてないんだ。僕も何も聞かされていないんだ」
もしかすると、他にも僕らのように呼ばれている人がいるかもしれない。
王都の門に着くと僕らと同じくらいの年齢に見える子が何人か見えた。
やっぱり、村に関することではないのかもしれない。
サクラと二人で王からの勅命書を見せると、門番は
「君たちもか。しっかり頑張るんだぞ」と言われた。
いったい何のことかわからなかったけど、やっぱり僕らのように呼ばれた人が何人かいるんだ。
もしかすると、これから戦場に連れていかれるのでは・・・。
そんな考えがよぎり、明日を迎えるのが怖くなった。
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